おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】第百三十七回 黒ひげ探偵長/ジョージ秋山

【うちの本棚】第百三十七回 黒ひげ探偵長/ジョージ秋山「うちの本棚」、今回ご紹介するのはジョージ秋山の『黒ひげ探偵長』です。作者本人をモデルにしたと思われる、漫画家兼探偵の「黒ひげ」が活躍するギャグ作品です。


  • 【関連:第百三十六回 コンピューたん/ジョージ秋山】

     

    初期のジョージ秋山の単行本の中でレアな部類に入る一冊。ジャンプ関連の作品は本書のほかも入手の難しいものがあり、ファンやコレクター泣かせともいえるだろう。

    本作の主人公「黒ひげ」氏は、探偵と漫画家を掛け持ちしているという設定で、漫画家としても人気作家で、締め切りに追われながら探偵として事件を解決する(というか、いつのまにか解決してるという雰囲気でもあるのだけれど)。タイトルにも「探偵長」と付いてしまっているので、ハードボイルドな雰囲気のカットが各話に必ず挿入されたりもするのだけれど、全体としては「漫画家」黒ひげがメインになっているといっていい。

    ビジュアル的に見ても、主人公の黒ひげは、ジョージ秋山本人をモデルにしていると思われるし、単行本の著者近影でお馴染みのサングラス姿も共通していたりする(もっとも、本書のカバー袖に掲載されている著者近影ではサングラスをかけていない、満面の笑みをたたえた珍しい写真を見ることができる。この写真だけでもジョージ秋山マニアは本書を入手するべきかもしれない)。

    基本的にはギャグ作品であり、探偵としてのシリアスなハードボイルドシーンも、ギャグを活かすためのスパイスとなっている。が、後半になるとしだいにペーソスが含まれだし、最終話では、人気漫画家もいずれ飽きられるという自戒のようなエピソードが描かれている。『パットマンX』や『ほらふきドンドン』といった長期連載作品があった一方で、単行本全一巻程度のギャグ作品が多かったジョージ秋山は、案外ギャグだけを描き続けることができなかったのかもしれない。その方向性が『デロリンマン』となり、『よたろう』になっていったのではないだろうか。

    ジャンプコミックスは巻末にタレントや著名人の推薦文が掲載されていたが、本書のそれは「コント55号」の萩本欽一であった。

    書 名/黒ひげ探偵長
    著者名/ジョージ秋山
    出版元/集英社
    判 型/新書判
    定 価/240円
    シリーズ名/ジャンプコミックス
    初版発行日/1970年4月30日
    収録作品/黒ひげ探偵長 全14話

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • 【うちの本棚】第百四十回 ねこまんまのジョージ/ジョージ秋山
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百四十回 ねこまんまのジョージ/ジョージ秋山

  • 【うちの本棚】第百三十九回 電撃ハリキリ娘ピンチー/ジョージ秋山
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百三十九回 電撃ハリキリ娘ピンチー/ジョージ秋山

  • 【うちの本棚】第百三十八回 ざんこくベビー/ジョージ秋山
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百三十八回 ざんこくベビー/ジョージ秋山

  • 【うちの本棚】第百三十六回 コンピューたん/ジョージ秋山
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百三十六回 コンピューたん/ジョージ秋山

  • 【うちの本棚】第百三十五回 灰になる少年/ジョージ秋山
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百三十五回 灰になる少年/ジョージ秋山

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第十九回 ザ・ムーン/ジョージ秋山

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 隣家からの怒号を音痴で撃退!母と娘が歌声響かせた、1週間の脱力戦記

      隣家からの怒号を音痴で撃退!母と娘が歌声響かせた、1週間の脱力戦記

      隣家から毎晩のように聞こえてくる喧嘩の怒鳴り声。文句の1つでも言ってやりたくなりますが、平穏なご近所…
    2. コレコレチャンネルより

      コレコレさん「LINEで謝罪」も…稲田直樹さんは声明で“間接否定”

      暴露系YouTuberのコレコレさんは、9月6日の配信でお笑いコンビ・アインシュタイン稲田直樹さんを…
    3. 脂肪と好奇心は人一倍!体重110キロ記者、ゆで太郎「倍盛り鍋かつ丼セット」に挑戦

      脂肪と好奇心は人一倍!体重110キロ記者、ゆで太郎「倍盛り鍋かつ丼セット」に挑戦

      ゆで太郎で期間限定提供されている「倍盛りかつ丼セット」。そばにセットでついてくるかつ丼は、丼ではなく…

    編集部おすすめ

    1. 当時、イベント関係企業のSNSに投稿された告知画像

      “マジックミラー号”展示などで波紋 中野駅前大盆踊り大会が謝罪声明

      中野駅前大盆踊り大会の実行委員会は9月9日までに公式サイトを更新し、前夜祭での演出をめぐり区民や行政から批判を受けた件について声明を発表した…
    2. ポケモン公式Xで「逆転」現象 「メガカラマネロ」登場の匂わせ?

      ポケモン公式Xで「逆転」現象 「メガカラマネロ」登場の匂わせ?

      ポケモンシリーズの最新情報を伝える公式Xアカウント「ポケモン情報局」に何やら不穏な動きが。プロフィールや投稿がすべて逆さまに「逆転」する現象…
    3. 鬼滅の刃マンチョコ<無限城編>

      ロッテ、「鬼滅の刃マンチョコ<無限城編>」を10月21日発売 シリーズ第5弾

      アニメ「鬼滅の刃」とロッテの人気菓子「ビックリマン」が再びタッグを組む。株式会社ロッテは、絶賛公開中の「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 …
    4. タカラトミー「グランドモールトミカビル」を自主回収 子どもの指挟み事故発生で

      タカラトミー「グランドモールトミカビル」を自主回収 子どもの指挟み事故発生で

      株式会社タカラトミーは9月8日、7月19日に発売した玩具「グランドモールトミカビル(トミカ55周年記念特別仕様)」について、子どもの指を挟む…
    5. 松浦勝人会長「月1時間で100万円」“松浦顧問制度”始動 応募殺到で定員の5倍超え

      松浦勝人会長「月1時間で100万円」“松浦顧問制度”始動 応募殺到で定員の5倍超え

      エイベックスの松浦勝人会長は9月4日、自身のX(旧Twitter)で新たに「松浦顧問制度 シーズン1」を立ち上げたことを報告した。内容は「月…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト