おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】第百三十八回 ざんこくベビー/ジョージ秋山

【うちの本棚】第百三十八回 ざんこくベビー/ジョージ秋山「うちの本棚」、今回ご紹介するのはジョージ秋山、初期の代表作のひとつ『ざんこくベビー』です。タイトルのインパクトも素晴らしい本作ではありますが、全エピソードを収録した完全版の単行本は未刊行であります。


  • 【関連:第百三十七回 黒ひげ探偵長/ジョージ秋山】

     

    初期のジョージ秋山の代表的なギャグ作品のひとつではあるのだが、少年チャンピオンコミックスからは1巻のみが刊行されただけで、その後他のシリーズ、他社からの再刊行もなく、単行本未収録のエピソードがかなりあるものと思われる。

    基本的なストーリーは、やんちゃ(?)な主人公の赤ん坊が巻き起こすドタバタで、それが大人顔負けのエグい行動であることから「ざんこく」というタイトルがつけられたものと推測される。
    「ギギギ」というベビーの不気味な笑い方と「いつか殺してやる」というほとんどの登場人物たちに共通なセリフが、印象に残るが、70年代の世相を反映しているといったら言い過ぎだろうか。同時期には谷岡ヤスジなども活躍していて、極端な暴力や流血というのはギャグ作品ではありふれたものになっていた感がないわけではない。そのうえで「ざんこく」という言葉をタイトルに入れたことで、より過激な描写を要求されることになったのは事実だったのではないだろうか。

    とはいえ、本書カバーの折り返し部分のコメントに「ベビーちゃん一家は、抑圧された現代社会の縮図ではないでしょうか…」とあるように、本作でもジョージ秋山はギャグにペーソスを混ぜて、単に極端な描写による笑いだけを追求しない。

    ジョージ秋山の単行本は刊行作品がシリーズとしてまとめて刊行された際にも本作はラインナップには入っていなかった。初期の代表作のひとつとして、完全版での刊行が望まれる。

    書 名/ざんこくベビー①
    著者名/ジョージ秋山
    出版元/秋田書店
    判 型/新書判
    定 価/250円
    シリーズ名/少年チャンピオンコミックス
    初版発行日/昭和46年1月5日
    収録作品/ざんこくベビー1~12話

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

    あわせて読みたい関連記事
  • 【うちの本棚】第百四十回 ねこまんまのジョージ/ジョージ秋山
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百四十回 ねこまんまのジョージ/ジョージ秋山

  • 【うちの本棚】第百三十九回 電撃ハリキリ娘ピンチー/ジョージ秋山
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百三十九回 電撃ハリキリ娘ピンチー/ジョージ秋山

  • 【うちの本棚】第百三十七回 黒ひげ探偵長/ジョージ秋山
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百三十七回 黒ひげ探偵長/ジョージ秋山

  • 【うちの本棚】第百三十六回 コンピューたん/ジョージ秋山
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百三十六回 コンピューたん/ジョージ秋山

  • 【うちの本棚】第百三十五回 灰になる少年/ジョージ秋山
    コラム・レビュー

    【うちの本棚】第百三十五回 灰になる少年/ジョージ秋山

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第十九回 ザ・ムーン/ジョージ秋山

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 味ぽん公式紹介の「味ぽんチーズ肉巻き」が背徳のうまさ! 実際に作ってみた

      味ぽん公式紹介の「味ぽんチーズ肉巻き」が背徳のうまさ!? 実際に作ってみた

      ミツカンの人気商品「味ぽん」の公式アカウントがXで紹介したレシピ「味ぽんチーズ肉巻き」に6万件を超え…
    2. 「私はロボットではありません」に偽装しウイルス感染 警視庁が注意呼びかけ

      「私はロボットではありません」に偽装しウイルス感染 警視庁が注意呼びかけ

      よく目にする「私はロボットではありません」という確認画面は、Googleの「reCAPTCHA」によ…
    3. 隣家からの怒号を音痴で撃退!母と娘が歌声響かせた、1週間の脱力戦記

      隣家からの怒号を音痴で撃退!母と娘が歌声響かせた、1週間の脱力戦記

      隣家から毎晩のように聞こえてくる喧嘩の怒鳴り声。文句の1つでも言ってやりたくなりますが、平穏なご近所…

    編集部おすすめ

    1. ゲームのバグ?すり抜け?壁に「埋まっている」ように見えるワンちゃん

      ゲームのバグ?すり抜け?壁に「埋まっている」ように見えるワンちゃん

      「ココちゃんは壁をすり抜けます」という一言と共にXに投稿された一枚の写真。写っているのは、まるでゲームのバグで壁に埋まってしまったかのような…
    2. 当時、イベント関係企業のSNSに投稿された告知画像

      “マジックミラー号”展示などで波紋 中野駅前大盆踊り大会が謝罪声明

      中野駅前大盆踊り大会の実行委員会は9月9日までに公式サイトを更新し、前夜祭での演出をめぐり区民や行政から批判を受けた件について声明を発表した…
    3. ポケモン公式Xで「逆転」現象 「メガカラマネロ」登場の匂わせ?

      ポケモン公式Xで「逆転」現象 「メガカラマネロ」登場の匂わせ?

      ポケモンシリーズの最新情報を伝える公式Xアカウント「ポケモン情報局」に何やら不穏な動きが。プロフィールや投稿がすべて逆さまに「逆転」する現象…
    4. 鬼滅の刃マンチョコ<無限城編>

      ロッテ、「鬼滅の刃マンチョコ<無限城編>」を10月21日発売 シリーズ第5弾

      アニメ「鬼滅の刃」とロッテの人気菓子「ビックリマン」が再びタッグを組む。株式会社ロッテは、絶賛公開中の「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 …
    5. タカラトミー「グランドモールトミカビル」を自主回収 子どもの指挟み事故発生で

      タカラトミー「グランドモールトミカビル」を自主回収 子どもの指挟み事故発生で

      株式会社タカラトミーは9月8日、7月19日に発売した玩具「グランドモールトミカビル(トミカ55周年記念特別仕様)」について、子どもの指を挟む…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト