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【うちの本棚】第百三十九回 電撃ハリキリ娘ピンチー/ジョージ秋山

【うちの本棚】第百三十九回 電撃ハリキリ娘ピンチー/ジョージ秋山「うちの本棚」、今回ご紹介するのはジョージ秋山の『電撃ハリキリ娘ピンチー』です。個人的に大好きなジョージ秋山作品であるとともに、ジョージ秋山作品の中でもちょっと異色な印象のある作品といえるでしょう。ジョージ秋山の陽の部分が前面に出た作品だと思います。


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    「週刊少年マガジン」に連載された作品で、まだギャグ漫画家としてのイメージが強いころの一作。初期の作品に比べるとコマ運びやセリフのテンポがよく、勢いも感じる。またそれまでの作品やこのあと描かれる『よたろう』と違って、深刻な話題に踏み込まないところも本作の特徴といえるかもしれない。

    主人公はピンチーという少女で、空手が得意な中学生(たぶん)。本名は中村金魚ということになっているが、名前を呼ばれるシーンのほとんどで「ピンチー」と呼ばれるので本名は忘れてしまっても問題ない。

    連載4話目で両親が海外に転勤し、叔父の家にあずけられることになるのだが、その叔父が住職で、お転婆なピンチーをおとなしくさせようと尼にしようと髪を剃ってしまったり、叔父の家に引っ越したことで転校することになり、新しい学校でドタバタがあったりと、「ハリキリ娘」と呼ばれバイタリティー溢れるピンチーを中心にストーリーは展開していく。
    『ザ・ムーン』『灰になる少年』さらには『アシュラ』『銭ゲバ』と代表的な作品がことごとくトラウマ作品といってしまっていいジョージ秋山の陽の部分が本作『電撃ハリキリ娘ピンチー』には表れているような気がする。たぶんこの心地よさは『浮浪雲』につながるものなのではないかと思う。個人的にジョージ秋山のぎゃく作品の中でも、本作が気に入っているのはそういう理由なのだと改めて感じる。

    しかしながら本作も現在気軽に入手できる環境になく、またKCコミックスには未収録エピソードもあるようなので、完全版の刊行を願うばかりだ。

    書 名/電撃ハリキリ娘ピンチー
    著者名/ジョージ秋山
    出版元/講談社
    判 型/新書判
    定 価/350円
    シリーズ名/KCコミックス
    初版発行日/昭和51年9月30日
    収録作品/電撃ハリキリ娘ピンチー

    (文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/

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    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
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    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
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