おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【宙にあこがれて】第43回 さらばスカイホーネット 陸上自衛隊北宇都宮駐屯地開設41周年記念行事

ラストフライト記念パッチ2014年5月25日、ひとつの歴史が幕を下ろしました。陸上自衛隊北宇都宮駐屯地に所在する、航空学校宇都宮校の教官パイロットで編成されるヘリコプター展示飛行チーム「スカイホーネット」が、1974(昭和49)年より続けてきた活動を終えたのです。最後のショウとなった、北宇都宮駐屯地開設41周年記念行事の様子をご紹介します。

スカイホーネットは、航空学校宇都宮校で使用する練習機OH-6Dによる展示飛行チーム。今年度から練習機が新型のTH-480Bに更新され、それに伴ってOH-6Dが運用から外れる為、活動を終えることになったもの。駐屯地内にはTH-480Bに対応した真新しい教場が作られ、新型機での教育も始まっています。

  • 【関連:自衛隊観閲式2013】

    TH-480Bの教場 TH-480B

    パイロット達の話では、TH-480Bは同種のエンジンを使用しているものの、エンジン出力をローターに伝えるトランスミッションで制限がかかっている為、OH-6Dに較べて機動性が劣り、スカイホーネットで行うような飛行は無理とのこと。練習機としては素直で良い機体だそうです。

    駐屯地開設記念行事では、そのTH-480Bを先頭に祝賀飛行編隊が組まれました。

    祝賀飛行編隊

    続いてヘリコプターの飛行展示。茨城県の航空学校霞ヶ浦校から参加したAH-64Dは、前週に行われた霞ヶ浦駐屯地開設記念行事でも飛行を行った74504号機。機長も同じ方でした。

    AH-64Dの飛行展示

    北宇都宮駐屯地の第12ヘリコプター隊・UH-60JAは、隊員のリペリング降下とホイストによる吊り下げ回収の実演。同じ飛行場(宇都宮飛行場)を共用する栃木県警のヘリコプターも、ホイストによる救助活動の実演を行いました。今年の栃木県警は、いつもより派手な飛行を見せて観衆を沸かせていたのが印象的。

    隊員をホイストするUH-60JA 栃木県警BK117の救助実演

    スカイホーネットの飛行展示は今年で最後ということで、昨年に続いて午前と午後の2回、飛行を行いました。午前は5機のOH-6Dと1機のUH-60JAによるもの。OH-6Dの機体には、カラーボードにラストフライトを示すマーキングが。

    スカイホーネットの展示飛行

    例年趣向を凝らしたスペシャルマーキングで知られる展示機達ですが、今年のデザインは少々おとなしめ。訊くと「やはりスカイホーネットが最後なので、今年はOH(-6D)が主役ですから」ということのようです。その言葉を裏付けるように、OH-6Dの展示機はラストを意識したデザイン。マーキングに記された「OSCAR」はOH-6Dに割り振られたコールサイン(無線呼び出し時の符号)です。よく見るとハチは「Sky hornet」の文字で構成されているという凝りよう。1974年から、長きにわたって使われてきたOH-6Dに対する感慨に満ちあふれてますね。

    地上展示のOH-6D Skyhonetのスペシャルマーキング

    心なしか、記念撮影をする人も多かったような気がします。

    スペシャルマーキングを撮影する人々

    祝賀飛行に参加した後展示された連絡偵察機LR-2は、現在航空学校宇都宮校の機材が仙台で点検整備中だった為、沖縄の第15ヘリコプター隊からの借用機材。垂直尾翼には「WING of OKINAWA」のマーキングが施され、離島での急患搬送にも活躍する機体です。

    LR-2 LR-2の尾翼マーキング

    その他の展示機では、航空自衛隊の飛行点検隊(埼玉県・入間基地)から飛行点検機U-125が参加。当日は入間基地で航空自衛隊創設60周年記念式典が行われ、あちらが外来機でごった返すので帰投が夕方にずれ込むことに。また、キャンプ座間のアメリカ陸軍UH-60Aは当日朝に参加がキャンセルされるなど、受け入れる駐屯地側ではバタバタした面もあったようです。

    飛行点検隊のU-125

    ゼネラルアビエーションとの良好な関係から、いわゆる自家用機の参加も多いのが北宇都宮駐屯地の特徴。今回はセスナ172とビーチクラフト・ボナンザがコクピットを公開し、子供たちに大人気でした。

    セスナC172 セスナC172

    敷地に隣接し、飛行場(もともと前身の中島飛行機が設置した)を共用する富士重工は、ベル412とFA200エアロスバルを展示。栃木県航空協会のFA200アクロバットチーム「レッドスバル」も機体を展示していました。LR-2を操縦する陸上自衛隊のパイロットも興味津々で、FA200の機体について専門的な説明を求めるなど、飛行機乗り同士の交流も。

    富士重工の展示機 飛行機談義をする自衛官と民間のパイロット

    駐屯地の航空資料館には、新たな展示物が増えました。2012年に引退したLR-1の乗員養成に使用していた初歩的なシミュレータ、リンクトレーナー(1970年2月・東京航空計器製)です。オルガンを作っていた技術を応用して作られている為、姿勢変更を制御するのはフイゴによる空気圧(開発当時、信頼できる油圧装置がなかったことも影響している)、本体は木製という手作り感あふれるもの。海外ではポピュラーなのですが、日本には殆ど現存していないという貴重な品です。

    飛行機談義をする自衛官と民間のパイロット

    午後になり、スカイホーネットが最後の展示飛行に飛び立ちます。最後の飛行を行うのは、6機のOH-6D。

    最後のショウへ離陸するスカイホーネット

    「スカイホーネット」の由来となった、ハチのような特徴的な飛行音を響かせながら、卵形の愛らしい姿で空を縦横に駆け巡るOH-6D。これで見納めです。

    ■動画:

    飛行終了後、パイロット達は機体の前で記念撮影。1974(昭和49)年からの歴史に終止符を打ちました。

    機体の前で記念撮影

    スカイホーネットのOH-6Dは姿を消しますが、偵察・観測ヘリコプターとしてのOH-6Dは、後継機となる純国産ヘリコプターOH-1の調達が早期に終了し、全てを置き換えることができなかったので、まだしばらくは各地で飛び続ける予定です。

    スカイホーネットがいなくなって、来年はどうなるのか。毎年色々な趣向を凝らしてきた北宇都宮駐屯地ですが、ちょっと気になりますね。

    (取材:咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • 戦車だと思っていた車両は実は戦車じゃないかも?見分け方を自衛官が伝授(画像提供:自衛隊鹿児島地方協力本部)
    インターネット, 雑学・コラム

    戦車だと思っていた車両は実は戦車じゃないかも?見分け方を自衛官が伝授

  • ニコ生で「令和5年度 富士総合火力演習」の配信が決定
    宇宙・航空

    ニコ生で「令和5年度 富士総合火力演習」の配信が決定

  • 紅白の信号旗を掲揚して接岸作業中の護衛艦あぶくま
    宇宙・航空

    実はこっちが元祖! 港を知り尽くした海の「パイロット(水先人)」とは

  • まるで第1空挺団が占領下の街を奪還しじきたように見える光景(Houndさん提供)
    インターネット, びっくり・驚き

    占領下の街を救いに来たみたい!第1空挺団の降下を離れたところから目撃

  • 「ヤマサクラ-81」文化交流プログラムで親睦を深める日米の参加者(画像:USMC)
    宇宙・航空

    恒例の日米指揮所演習ヤマサクラ アメリカ兵が日本文化を学ぶプログラムも

  • 宇宙・航空

    恒例の日米共同訓練「キーンソード」始まる 11月5日まで

  • 宇宙・航空

    リモート会議慣れした自衛官? いえいえ陸自独自のファッション文化「ジャー戦」なん…

  • 宇宙・航空

    中部国際空港でチャイナエアライン台北線の運航再開 国内線ハッシュタグキャンペーン…

  • 宇宙・航空

    陸上自衛隊も採用するティルトローター機V-22オスプレイ生産400機を達成

  • 商品・物販, 経済

    パラシュートメーカーとコラボした廃タイヤ再利用のボディバッグ登場

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 介護未経験者全体の72.9%が将来に向けて「特に何も準備していない」
    社会, 経済

    仕事と介護の両立に不安85% ダスキンが「介護白書2025」で実態調査

  • プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

  • 美食祭 in 日本橋三越
    TV・ドラマ, エンタメ

    高見沢俊彦の“美しいメシ”100回記念 日本橋三越で初の美食祭

  • なか卯が“ウニの二大メニュー” 雲丹おろしうどんとウニ丼を9月17日から販売
    商品・物販, 経済

    なか卯が“ウニの二大メニュー” 雲丹おろしうどんとウニ丼を9月17日から販売

  • 掃除機「自動お手入れ機能」篇(15秒)
    商品・物販, 経済

    反町隆史、東芝新CMで料理や掃除に挑戦 家庭的な素顔ものぞかせる

  • 音楽劇「謎解きはディナーのあとで」(撮影:阿部章仁)
    エンタメ, 舞台

    上田竜也が毒舌執事に挑む 玉井詩織&橋本良亮と共演「謎解きはディナーのあとで」開…

  • トピックス

    1. 偽ファッション広告

      偽ファッション広告がGoogle広告に大量出現 サポート詐欺被害に注意

      2025年9月上旬からGoogle広告に偽ファッションサイトが急増。数秒で「Windows Defe…
    2. 邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くなった

      邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くなった

      Webコンテンツ「絶対にバズるSNS」が9月15日公開。9月26日公開映画「俺ではない炎上」と連動し…
    3. 26年前のMMORPG「Dark Ages」、YouTuberの挑戦で限界集落から奇跡の再生

      26年前のMMORPG「Dark Ages」、YouTuberの挑戦で限界集落から奇跡の再生

      26年前にリリースされたMMORPG「Dark Ages」をご存じでしょうか。年月とともに人口は減少…

    編集部おすすめ

    1. 虎ノ門ヒルズの「どこか奇妙な職業体験」が話題 ゴミを拾いながら物語の世界へ没入

      虎ノ門ヒルズの「どこか奇妙な職業体験」が話題 ゴミを拾いながら物語の世界へ没入

      虎ノ門ヒルズで清掃員の仕事を疑似体験しながら、非日常な体験に巻き込まれていく……そんな不思議な没入型体験イベント「どこか奇妙な職業体験 虎ノ…
    2. あれー?どこかなー?伸びしろしかない3歳児の“全力”かくれんぼが手強すぎる!

      あれー?どこかなー?伸びしろしかない3歳児の“全力”かくれんぼが手強すぎる!

      子どもにとってかくれんぼは、ハラハラドキドキのスリリングな遊び。自分だけにしか分からないであろう隠れ場所を見つけて「ここなら大丈夫」「絶対見…
    3. プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

      プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

      アニメ映画「映画キミとアイドルプリキュア♪ お待たせ!キミに届けるキラッキライブ!」公式は9月12日、「キミプリ♪ぬりえコンテスト」において…
    4. 短編ホラーゲーム「夜勤事件」、実写映画化決定 2026年全国公開へ

      短編ホラーゲーム「夜勤事件」、実写映画化決定 2026年全国公開へ

      コンビニを舞台にした短編ホラーゲーム「夜勤事件(The Convenience Store)」が、実写映画としてスクリーンに登場へ。開発元の…
    5. まさか髪が消えるとは思わず

      コスプレと背景が完全同化!プリクラ撮影で起きた“悲劇”に「膝から崩れ落ちました」

      コスプレ仲間とプリクラで記念撮影!しかしモニターで出来を確認してみると……。Xユーザーの「Zetsu96」さんが投稿したプリクラ写真に「めっ…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト