おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

【うちの本棚】第七十三回 本棚の旅 ウルトラQ/藤原カムイ

「うちの本棚」、今回は2000年代に描かれた『ウルトラQ』のコミカライズ。藤原カムイが描くリアルな「ウルトラQ」世界をご堪能ください。

放映から35年以上が経ってからのコミカライズ作品。この時期、初代『ウルトラマン』の新たなコミカライズ作品もいくつか描かれるなど、リバイバルブームとも言うべき現象があったことも事実であり、本書第2巻が刊行されたころには『ウルトラQ dark fantasy』という新テレビシリーズの放映もされている。


  • 藤原カムイは原作であるテレビシリーズのイメージを再現すると共に、現在(本作が描かれた時点の)で辻褄の合う設定や構成を取り入れ、テレビシリーズよりリアルな印象のコミカライズ作品に仕上げた。またテレビシリーズに登場していた俳優陣に似せたキャラクターの絵柄も好印象である。

    原作テレビシリーズ28本から6本(実際は「ガラダマ」と「ガラモンの逆襲」をミックスしているので7本)をコミカライズしているわけだが、作者があとがきで述べているように、構想としてはほかにも描きたいエピソードはあったようだ。いつか可能であれば全エピソードのコミカライズも見てみたいという気がする。

    今回最もうまくまとめ上げていたと感じたのは、やはり「ガラダマ」と「ガラモンの逆襲」をミックスした1本だろう。ガラダマと呼ばれる隕石が、実はロボット怪獣の操縦装置であったというエピソードが、そのままセミ人間と称される宇宙人の侵略へと発展していく展開は違和感がない。「悪魔っ子」でもカムイ版独自のエピソードを付け足しているが、より分かりやすい話しになっているのではないだろうか。

    それでも「バルンガ」などは原作テレビシリーズに及ばなかったような気がしてしまう。これはフィルム作品のシナリオや映像の迫力というものが勝っていたということかもしれない。

    本作では「ご存じの『ウルトラQ』のコミカライズ」という前提もあるのか、特に登場人物に関する説明がないのも、始めてこの作品で『ウルトラQ』に触れる読者にはちょっと不親切かもしれない。もちろん万丈目がパイロットで後輩に一平がいて、新聞記者の由利子がいるというくらいの設定はわかるだろうが、こちらは原作のテレビシリーズも散々見ているので、未見の新しい読者はどうなんだろうかと心配になってしまうのである。

    書 名/ウルトラQ
    著者名/藤原カムイ
    収録作品/第1巻・ペギラが来た!、2020年の挑戦、地底超特急西へ
         第2巻・バルンガ、悪魔っ子、ガラダマ
    発行所/角川書店
    初版発行日/第1巻・2003年11月1日、第2巻・2004年5月1日
    シリーズ名/Kadokawa Comics A Extra


    【文:猫目ユウ】
    フリーライター。ライターズ集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。 

    あわせて読みたい関連記事
  • アニメ/マンガ, 放送・配信

    フルカラー『ウルトラQ』がゴールデンウィークに全28話一挙放送

  • 森永理科 初主演舞台『聖ミカエラ学園漂流記』
    エンタメ, 舞台

    森永理科 初主演舞台『聖ミカエラ学園漂流記』、藤原カムイが手がけたメインビジュア…

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】第七十二回 ウルトラQ/中城 健

  • 猫目 ユウWriter

    記事一覧

    フリーライター。ライター集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
    『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
    女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。
    本コラム「うちの本棚」は作者・テーマ別にして「ブクログのパブー」から電子書籍として刊行しています。
    また最近は小説の執筆に力を入れています。
    仮想空間「Second Life」やってます^^

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • コラム・レビュー

    複数社から発売された『墓場鬼太郎(ゲゲゲの鬼太郎)』を振り返る

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】262回 こいきな奴ら/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】260回 5(ファイブ)愛のルール/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】259回 デザイナー/一条ゆかり

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】258回 わらってクイーンベル/一条ゆかり

  • トピックス

    1. 隣家からの怒号を音痴で撃退!母と娘が歌声響かせた、1週間の脱力戦記

      隣家からの怒号を音痴で撃退!母と娘が歌声響かせた、1週間の脱力戦記

      隣家から毎晩のように聞こえてくる喧嘩の怒鳴り声。文句の1つでも言ってやりたくなりますが、平穏なご近所…
    2. コレコレチャンネルより

      コレコレさん「LINEで謝罪」も…稲田直樹さんは声明で“間接否定”

      暴露系YouTuberのコレコレさんは、9月6日の配信でお笑いコンビ・アインシュタイン稲田直樹さんを…
    3. 脂肪と好奇心は人一倍!体重110キロ記者、ゆで太郎「倍盛り鍋かつ丼セット」に挑戦

      脂肪と好奇心は人一倍!体重110キロ記者、ゆで太郎「倍盛り鍋かつ丼セット」に挑戦

      ゆで太郎で期間限定提供されている「倍盛りかつ丼セット」。そばにセットでついてくるかつ丼は、丼ではなく…

    編集部おすすめ

    1. 当時、イベント関係企業のSNSに投稿された告知画像

      “マジックミラー号”展示などで波紋 中野駅前大盆踊り大会が謝罪声明

      中野駅前大盆踊り大会の実行委員会は9月9日までに公式サイトを更新し、前夜祭での演出をめぐり区民や行政から批判を受けた件について声明を発表した…
    2. ポケモン公式Xで「逆転」現象 「メガカラマネロ」登場の匂わせ?

      ポケモン公式Xで「逆転」現象 「メガカラマネロ」登場の匂わせ?

      ポケモンシリーズの最新情報を伝える公式Xアカウント「ポケモン情報局」に何やら不穏な動きが。プロフィールや投稿がすべて逆さまに「逆転」する現象…
    3. 鬼滅の刃マンチョコ<無限城編>

      ロッテ、「鬼滅の刃マンチョコ<無限城編>」を10月21日発売 シリーズ第5弾

      アニメ「鬼滅の刃」とロッテの人気菓子「ビックリマン」が再びタッグを組む。株式会社ロッテは、絶賛公開中の「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 …
    4. タカラトミー「グランドモールトミカビル」を自主回収 子どもの指挟み事故発生で

      タカラトミー「グランドモールトミカビル」を自主回収 子どもの指挟み事故発生で

      株式会社タカラトミーは9月8日、7月19日に発売した玩具「グランドモールトミカビル(トミカ55周年記念特別仕様)」について、子どもの指を挟む…
    5. 松浦勝人会長「月1時間で100万円」“松浦顧問制度”始動 応募殺到で定員の5倍超え

      松浦勝人会長「月1時間で100万円」“松浦顧問制度”始動 応募殺到で定員の5倍超え

      エイベックスの松浦勝人会長は9月4日、自身のX(旧Twitter)で新たに「松浦顧問制度 シーズン1」を立ち上げたことを報告した。内容は「月…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト