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種子が植食者の糞を感知して食害を回避 ―糞中成分が安全なタイミングでの発芽を可能にする―

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国立大学法人熊本大学


[画像: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/124365/312/124365-312-756ce3d5aa8811d35791d79d89a27c24-540x304.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


【概要】
 京都大学生態学研究センター、熊本大学大学院先端科学研究部附属生物環境農学国際研究センター、千葉大学大学院薬学研究院、名城大学農学部、森林総合研究所、理化学研究所環境資源科学研究センター、琉球大学熱帯生物圏研究センター、静岡大学農学部からなる研究チームは、多年生植物のオオバコの種子がダンゴムシの糞に含まれる化学物質を感知して発芽を一時的に止め、ダンゴムシによる食害を回避する仕組みを発見しました。ダンゴムシの糞中に含まれる「トレハロース」と「アブシジン酸(ABA)」が発芽を一時的に抑制すること、そしてそれらの成分が水で洗い流されると発芽が再開することが明らかになりました。さらに野外調査では、ダンゴムシの糞が存在する環境では、雨天時にオオバコ種子の発芽が集中し、ダンゴムシによる食害が起こりにくいことも確認されました。これらの結果は、オオバコの種子がダンゴムシの活動が活発な晴天時には発芽を抑え、活動が低下する雨天時に発芽を促すことで、食害を免れやすくなることを示唆しています。植物の種子はこれまで、光や温度などの環境刺激に応じて発芽時期を調整することが知られていましたが、本研究は、種子が植食者由来の刺激にも反応し、食害を回避できることを初めて明らかにしました。
 本研究の成果は、2025年12月9日に「New Phytologist」誌にオンライン掲載されます。

【波及効果、今後の予定】
 本研究により、植物の種子が動物の排泄物に含まれる化学物質を情報源として利用するという、新たな生態的相互作用の存在が明らかになりました。自然界では多種多様な動物の糞が豊富に存在していることから、糞中の化学物質を利用した発芽制御の仕組みは、オオバコに限らず、他の多くの植物にも見られる可能性があります。
 一方で、今回対象としたダンゴムシ類(Armadillidium vulgare, Porcellio scaber)は外来種であることから、今回明らかになったオオバコとの関係性がどのように形成されたのかという新たな疑問も生じます。日本には在来のダンゴムシも生息しており、もともとはオオバコが在来種ダンゴムシに対して進化させた防御機構が、結果的に外来種に対しても有効に働いた可能性が考えられます。今回発見された植食者の糞に対する発芽応答が、真に自然選択の結果として生じたのかどうかは未解明のままです。今後は、在来種と外来種のダンゴムシ間での相互作用の違いや、この現象が他の植物種にも普遍的に見られるかどうかを検証することで、種子と動物の新たな関係性が見えてくるものと考えられます。

【研究プロジェクト】
本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金(18H05487, 20H00422, 18K19353, 19H03295)の支援を受けて実施されました。

【論文タイトルと著者】
タイトル:Isopod-feces-mediated shifts in germination timing enhance seedling establishment
ダンゴムシの糞が植物の発芽タイミングを変化させ、実生の定着を促す
著者:山尾僚*¹, 石川勇人*², 武川正嗣, 中嶋なな子, 大崎晴菜*³, 向井裕美*⁴, 菅野 裕理, 瀬尾 光範*⁵, 轟 泰司, 竹内純*⁶, 澤 進一郎*⁷
掲載誌:New Phytologist  DOI:10.1111/nph.70750
URL:https://nph.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/nph.70750

*1京都大学生態学研究センター教授
*2千葉大学大学院薬学研究院教授
*3名城大学農学部助教
*4森林総合研究所主任研究員
*5琉球大学熱帯生物圏研究センター教授(兼)理化学研究所環境資源科学研究センター客員主管研究員
*6静岡大学農学部教授
*7熊本大学大学院先端科学研究部附属生物環境農学国際研究センター教授

【お問い合わせ先】
熊本大学総務部総務課広報戦略室
TEL:096-342-32 1 FAX:096-342-3110
E-mail:sos-koho@jimu.kumamoto-u.ac.jp

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