京都大学大学院情報学研究科物理統計学分野は、地震発生前に観測される異常現象を基に震央を推定する新たな手法を開発しました。この成果は、2025年12月に開催されるAGU25において、世界初の震央推定として発表されました。本研究により、地震予知の実現に向けた大きな一歩が踏み出されることが期待されています。
学会発表: 世界初の震央推定としてAGU25(American Geophsyical Union 2025, New Orleans, USA)で、2025年12月16日に口頭発表(S. Ikeda-K. Umeno)するとともに、その直後の12月20日には東京で開催された日本地震予知学会で招待講演(梅野健)にて紹介しました。
対象地震:2011年3月11日東北地方太平洋沖地震(M9.1)
震央推定精度: 約50km (地震発生直前一時間前から精度50km以内で、5分間隔地殻変動データの相関解析による異常を検出するとともに震央を推定)
方法: 電離圏異常を大地震発生直前の推定していた相関解析法(CRA:CoRrelation Analysis)を高頻度(5分)地殻変動データに適用。
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/168434/3/168434-3-f1ee6941b00f39f7378698a045cd3c26-720x405.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
AGU25での発表資料(S. Ikeda-K. Umeno, 2025)より。地震発生約80分前から異常値が大きくなった。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/168434/3/168434-3-8550680e1328d91fa3dae4f596b69581-720x405.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
約1時間前から地震発生直前までは、地殻変動の異常値をとるとともに、震央50km以内を震央と推定。この地殻変動の異常はノイズではなく、プレスリップ(前兆滑り)であることを証明するとともに、震央推定が事前の地殻変動データのみで可能であることを世界で初めて示しました。データはNevada大学の公開データを利用。
社会的なインパクト:日本政府は現時点で地震予知が可能であることを科学的に認めておらず、予知を前提としない事前防災の実現を目指している中、本研究成果は短期の地震予知(震央推定とマグニチュード推定)ができる可能性を、誰もが検証可能なデータで科学的に示したことにあります。国際会議会場においても、震央推定が世界で初めて成功したことについて、"Super interesting"という反響を得、12月の八戸の地震についての適用可能性を聞かれたものの(検証中)、その場にいた研究者から誰も否定的なコメントの発言はありませんでした。短期予知の実現に関しては、本発表が明らかにした震央推定だけでなくマグニチュード推定も必要ですが、梅野健教授の25年以上にわたるカオスCDMA通信技術の相関検波を利用するノイズ除去信号処理に基づくシグナル検出により、この京都大学が開発した震央推定アルゴリズムが短期地震予知実現につながる可能性を示しました(世界中、誰もこの方法で震央推定をしてこなかったのが今まで震央推定ができなかった理由。)。南海トラフ地震で30万人近い犠牲者が出ると予想される中、命を救うことができる事前防災を実現するためには、この様に技術的可能性があるものを、Alternative Optionとして素早く社会実装をする必要があります。
技術的限界:
プレート境界型地震の震央を100km以上離れた内陸部のGNSS受信機データを用いて推定する場合、現在の国土地理院GEONETの受信機密度が約20km×20kmに1つの受信機であるため、震央からの距離Rが大きいほど地殻変動の大きさがR^(-2)の法則に従って減少します。そのため、東北地方太平洋沖地震のように震央が内陸から離れた地震の場合、M8~M9程度の大きなマグニチュードでなければ推定が困難な可能性があります。
一方、プレート境界が陸地にある様な地震(2016年台湾南部地震)、内陸型地震(2016年熊本地震)、震央が陸地に近い地震(2024年8月8日日向灘地震)では、プレスリップ(前兆滑り)の異常を示すシグナルの大きさが大きい場合もあります。現在、研究チームは、2011年東北地方太平洋沖地震以外でも有効な場合があることは確認してますが、地震の発生メカニズムにより、どの様な地震の場合、はっきりとした震央が推定できるのかまだ不明な点があります。今後、2011年東北地方太平洋沖地震以外の地震での震央推定解析を進め、震央推定ができる地震の条件、及びマグニチュード推定の研究を進める必要があります。
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/168434/3/168434-3-fbf498439453102e8a1901f1e6314a93-720x405.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
震央推定アルゴリズムの概要: 日本列島を周辺海域も含め、20km×20kmの格子(グリッド)で分割。それぞれの格子(グリッド)で、地殻変動の相関値を計算し、最大となったところを震央候補地として推定。
d168434-3-cfe7ada3874b2f261f40734359445d90.pdf<問い合わせ先>
京都大学大学院情報学研究科・教授
梅野健(うめのけん)
TEL:075-753-4919
E-mail:umeno.ken.8z@kyoto-u.ac.jp























