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Netflix「10DANCE」、海外SNSで広がる“困惑と魅了” 「情緒が崩壊した」人も

 Netflixで12月18日に配信が始まった映画「10DANCE」が、SNSの海外コミュニティで強い反響を呼んでいます。

 BL作品であることに戸惑いながらも強く惹き込まれ、「情緒が崩壊した」と語る視聴者も現れるなど、“困惑”と“魅了”が入り混じった反応が広がっています。

  • ■ BLという前提と海外の反応

     本作は、井上佐藤氏によるBL漫画「10DANCE」を原作とした作品です。主人公は、ラテンダンス日本チャンピオンの鈴木信也と、スタンダードダンス日本チャンピオンで世界2位の実績も持つ杉木信也。実写化にあたっては、鈴木信也役を竹内涼真さん、杉木信也役を町田啓太さんが演じています。

     物語では、生きてきた世界も価値観もまったく異なる2人が、10ダンス競技大会の頂点を目指し、ともにレッスンを重ねるなかで、ぶつかり合いながらも次第に強く引かれていく様子が、情熱的かつ丁寧に描かれています。

     こうした作品の背景から、同性同士の関係性が特にセンシティブに受け取られやすい海外では、どのような反応が起こるのか未知数という状態でした。

     しかし、公開後に英語圏やラテンアメリカ、ヨーロッパの視聴者の反応を追っていくと、本作は必ずしも「BL作品」という枠組みだけで消費されていない様子が浮かび上がってきます。

    ■ 「BL」を越えて受け取られる映画体験

     SNSで検索すると多く見られたのは、「ジャンルがよく分からないまま見始めたが、圧倒された」「困惑したが、とにかく美しい」「説明できないのに感情を持っていかれた」といった声です。競技ダンスという題材がもつ身体性や、成熟した男性同士の関係性、言葉よりも視線や距離で積み重ねられる緊張感が、BLという枠組みを越えて“映画体験”として受け取られています。

     ブラジルやエクアドルなどラテンアメリカ圏では、ダンス表現そのものに加え、作品の中で描かれる「ラテンのシーン」への反応も目立ちます。俳優たちが振付を習得するまでに費やしたであろう時間や労力に思いを馳せ、「練習風景を見てみたい」「ここまで仕上げるのは相当大変だったはずだ」と、画面の裏側を想像する声も多くありました。

     また、本作で描かれたラテンコミュニティの枠組みに、日本人だけでなく多様な人々が登場している点を評価する声も見られます。日本発の作品でありながら、ラテンコミュニティを一様な存在として描かず、その多様性を自然に取り込んでいることが、ラテンアメリカ圏の視聴者には好意的に受け止められているようです。

     英語圏の特に北米では、「これほど俳優同士のケミストリーを感じた映画は久しぶりだ」「芸術作品のようだ」と、演技や映像美への賛辞が中心です。

     中には、使用楽曲に強く惹かれ、「ちょっと助けて誰か。10DANCEの全サントラが欲しい。曲が良すぎる。Netflix公式サントラに入ってる分しか見つからない」と、公式サウンドトラックだけでは足りず、劇中で流れたすべての音楽を探し始める視聴者も見受けられました。

    ■ LGBTQ+視点からは「分かる人には見える作品

     興味深いのは、LGBTQ+コミュニティからの反応です。ヨーロッパのユーザーの中には、本作を「mlm(男性同士の関係)とwlw(女性同士の関係)の連帯が、分かる人には見える作品」と表現する声もあります。

     ここで言われている「連帯」とは、恋愛の形が同じであることではありません。主人公の2人が、制約のある環境の中で自らの感情を引き受け、選択を重ねていく姿勢そのものに向けられています。その姿が、LGBTQ+の視聴者にとって、自身の生き方を肯定する感覚へとつながっているようです。

    ■ 「困惑されながら評価される」という少し珍しい広がり方

     また、「彼が一緒に踊ろうと頼むと予感した瞬間から泣いていた」「何か月経っても、二人はまだお互いを切望していた」といった声も。海外の反応には、初めてのキスやダンスに誘った瞬間といった分かりやすい場面ではなく、選択や予感、時間の経過に感情を重ねているものも多くあります。こうした反応からも、やはりBLというジャンル名より先に、“関係性の映画”として受け止められているようすがうかがえます。

     「10DANCE」は、海外で「困惑されながら評価される」という少し珍しい広がり方をしています。しかしその困惑は拒否ではなく、新しい表現に出会ったときの戸惑いに近いようです。

     ジャンルを越えて観客の心や感情に届いたとき、作品は国境を越えて語られ始めます。その過程を、今まさにSNS上で目にしていると言えそうです。

    <参考・引用>
    Netflix「Netflix映画『10DANCE』情熱の予告映像&キーアート解禁

    (宮崎美和子)

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    鹿児島県産。放送関連、印刷、ソフト開発会社を渡り歩きさまざまな職種を経験。ライターデビューもこの頃。その後ゲーム会社に転職しMD(主にサブライセンス管理)、マーケを経験。運営・システム関連では管理職も務める。2008年にWEBライターとして独立。得意分野はオカルト、ネットの話題、過去職の経験から著作権と雑多。趣味は読書。40才すぎてバレエを習い始めました。

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