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編集長の言葉
私たちは2種類の「声」を持っている。ひとつは他者と共有する社会的な“声”、もうひとつは心の内に響く“こえ”。
私たちは頭の中に浮かんだ言葉(“こえ”)を取捨選択し、それを文字や音声などを使いながら、相手に届けるための形(“声”)に変えてコミュニケーションしている。“声”はあくまで“こえ”の伝達手段に過ぎない。
一方で、今の私たちは、「何を思っているか」より「どう表現するのか」に重きを置きがちだ。書店やネットをのぞけば、「伝え方」の技術に関するコンテンツであふれていることからも、それがわかる。
“声”の偏重は、人とのつながりの多さや発言の影響力が評価される社会で、生きやすくなるための自然な行動かもしれない。しかし、その結果として、私たちは自分の存在意義を揺るがす社会を自ら迎えようとしているのではないか。
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2024年3月26日。亡くなった歌手の八代亜紀氏のお別れ会で、AIが合成した「本人の声」によるメッセージが読まれた。それを聞き、涙を流す参列者もいたという。
そこで流れた音声は、実際には八代氏のものでなく、第三者がAIを介して作った“声”であるはずだ。しかし、参列者はそこから八代氏を想起し、感動してしまう。
“声”を偏重し続けた私たちは、“こえ”を聞こうとせず、巧妙に作られた“声”から思いを勝手に想像し、それで満足するようになってしまった。
もし、お別れ会で流された“声”から“こえ”を聞こうとしたならば、そこにいるのは八代氏ではなく、別の人間であることに気づいただろう。
しかし、涙を流した参列者に「あなたは八代氏の“声”を上手に活用した、知らない誰かによって泣かされたのですよ」と言ったとして、果たしてどれだけの人が納得するだろう?「そんなひねくれた考え方をするな」と反発する人のほうが多いのではなかろうか。
誰もがAIを使って手軽に“声”を作れる時代だ。ネットやSNSといったデジタルの世界は、AI製の“声”で一層あふれるだろう。第三者がAIを介して作った“声”に感情を動かされるケースが、より日常的に起きていく。
その中で、「この感動は自分から生まれたものなのだろうか」という問いを抱くことがあるかもしれない。しかし、AIを介した巧みな“声”にあふれる社会では、その答えを見つけることも難しい。自分自身の感動にさえ確信を持てない環境にいれば、やがて自分の存在意義を感じることも危うくなるだろう。
“こえ”と向き合う態度を、私たちは今こそ取り戻すべきだ。
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こえラボは「“こえ”を題材にした文章の発信」を行う。
【作品例】
- 自分の“こえ”を探る人物を描く小説
- “こえ”と“声”のズレに悩んだ経験をつづったエッセイ
- “こえ”の社会的なあり方を研究する論文
- “こえ”の響き方に違いのある人へのインタビュー記事
こえラボのさまざまな言葉に触れ、そこから得た感覚をもとに、自分の“こえ”と対話をしよう。ただ耳を澄ませるのではなく、思いを巡らし、あふれてくるさまざまな自分の“こえ”と真摯に向き合う。そのプロセスをたどってみよう。
“こえ”との対話こそが、「“こえ”そのものの価値」を見い出す道しるべになるはずだ。
寄稿記事の募集
こえラボでは、“こえ”をテーマにした【作品】を募集しています。まだ見ぬ誰かの「“こえ”と向き合うきっかけ」を一緒に作りませんか?
ジャンル、体裁、字数に縛りはありません。その他の寄稿に関する詳細は、下記をご覧ください。
https://koelabo.net/coll-for/
運営会社概要
- 会社名: 株式会社スタジオユリグラフ
- 代表者: 森石豊
- 所在地: 沖縄県名護市字宇茂佐428番地24
- 事業内容:メディア制作および運用・BtoBウェブマーケティング支援事業、メディア・出版事業部(こえラボ)、書店事業(思い出書店)、サービス開発(Xaris)
Webサイト(こえラボ):https://koelabo.net/
【編集長プロフィール】
藤平泰徳(Fujihira Yasunori)
8年間の書店勤務後、ライターへ転身。スタジオユリグラフ立ち上げ期から中心メンバーとして活動し、現在は同社のメディア出版事業部責任者。興味は“時間”。趣味は散歩。