株式会社帝国データバンクは、2025年11月の企業倒産件数(負債1000万円以上の法的整理が対象)について集計し、分析を行った。
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概況・主要ポイント
■ 倒産件数は796件(前年同月834件、4.6%減)と6カ月ぶりに前年を下回った。2025年1-11月の累計は9380件となり、前年同期(9053件)を327件・3.6%上回った。このペースで推移すると、12年ぶりの年間1万件超えが見込まれる
■ 負債総額は788億8300万円(前年同月1522億4400万円、48.2%減)と大幅に減少し、3カ月連続で前年を下回った。負債5000万円未満の倒産が増加し、小規模な倒産が目立った。負債額■ トップは、土木工事や浚渫工事などを手がけていた「中央建設(株)」の53億8100万円
■ 業種別にみると、7業種中3業種で前年を下回った。『小売業』(前年同期174件→175件、0.6%増)が最も多く、全体の22.0%を占めた。業種別トップとなるのは約4年ぶり。一方、『サービス業』(同221件→172件、22.2%減)は3カ月ぶりに前年を下回った。減少率が20%を上回ったのは2021年8月以来およそ4年ぶり
■ 地域別にみると、9地域中5地域で前年を下回った。『近畿』(前年同月225件→191件、15.1%減)は3カ月ぶりに前年を下回った。『中国』(同34件→22件、35.3%減)は大幅に減少し、3カ月連続で前年を下回った
■ 「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は43件判明し、7カ月連続で前年を下回った
■ 「人手不足倒産」は31件判明し、2025年1-11月の累計は390件となった
■ 「後継者難倒産」は36件判明し、3カ月連続で前年を下回った
■ 「物価高倒産」は74件判明し、2025年1-11月の累計は879件となった
集計期間:2025年11月1日~2025年11月30日
発表日: 2025年12月8日
集計対象:負債1000万円以上、法的整理による倒産
次回発表日は1月13日(火)13時30分を予定しております。
『小売業』が約4年ぶりに業種別最多の175件
業種別にみると、7業種中3業種で前年を下回った。『小売業』(前年同期174件→175件、0.6%増)が最も多く、全体の22.0%を占めた。業種別トップとなるのは約4年ぶり。一方、『サービス業』(同221件→172件、22.2%減)は3カ月ぶりに前年を下回った。減少率が20%を上回ったのは2021年8月以来約4年ぶり。
業種を細かくみると、『サービス業』では、「専門サービス」(前年同月49件→30件)の減少が目立ち、特に個人教授所や土木建築サービスが減少した。一方、飲食料品関連では増加が目立ち、「飲食料品卸売」(同21件→29件)や「食料品・飼料・飲料製造」(同15件→20件)は前年を上回った。
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『不況型倒産』が666件、全体の83.7%を占める
主因別にみると、「販売不振」が658件(前年同月680件、3.2%減)で、3カ月ぶりに前年を下回った。「業界不振」(前年同月5件→2件、60.0%減)は2カ月連続で前年を下回った。このほか、「売掛金回収難」(同3件→5件、66.7%増)などを含めた『不況型倒産』は666件(同689件、3.3%減)となり、全体の83.7%を占めた。2025年1-11月の累計は7792件で前年同期(7493件)を上回った。
「放漫経営」(前年同月19件→18件、5.3%減)と「経営者の病気、死亡」(同23件→16件、30.4%減)は2カ月連続で前年を下回った。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を『不況型倒産』として集計
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「破産」が731件、全体の9割超を占める
倒産態様別にみると、『清算型』倒産は771件(前年同月812件、5.0%減)となり6カ月ぶりに前年を下回った。『再生型』倒産は25件(同22件、13.6%増)発生し、3カ月連続で前年を上回った。
『清算型』では、「破産」が731件(前年同月776件、5.8%減)で最も多く、全体の91.8%を占めた。「特別清算」は40件(同36件、11.1%増)で2カ月ぶりに前年を上回り、11月としては2000年以降で3番目に多かった。
『再生型』では、「民事再生法」が25件(前年同月21件、19.0%増)となり、法人は2件、個人は23件発生した。
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負債の小口化顕著に、「5000万円未満」のみ増加
負債額を規模別にみると、「5000万円未満」が506件(前年同月491件、3.1%増)で前年から唯一増加し、3カ月連続で前年を上回った。一方、『5000万円以上』(同343件→290件、15.5%減)は大きく減少し、5カ月ぶりに前年を下回った。
資本金を規模別にみると、『個人+1000万円未満』の倒産が584件(前年同月592件、1.4%減)となり、11月としては前年に次ぎ2000年以降で2番目に多かった。
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「30年以上」が275件、全体の34.5%占める
業歴別にみると、「30年以上」が最多の275件(前年同月251件、9.6%増)と3カ月連続で前年を上回り、全体の34.5%を占めた。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は16件(同10件、60.0%増)だった。
業歴10年未満の『新興企業』〈「3年未満」(前年同月42件→29件、31.0%減)、「5年未満」(同64件→46件、28.1%減)、「10年未満」(同171件→150件、12.3%減)〉は225件(前年同月277件、18.8%減)となり、2カ月連続で前年を下回った。内訳を業種別にみると、「サービス業」(同99件→71件、28.3%減)が最も多く、「小売業」(同67件→54件、19.4%減)、「建設業」(同58件→42件、27.6%減)が続いた。
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9地域中5地域で前年を下回る 『近畿』は前年から15.1%減少
地域別にみると、9地域中5地域で前年を下回った。『近畿』(前年同月225件→191件、15.1%減)は3カ月ぶりに前年を下回った。特に「大阪」(同123件→81件)の減少が目立った。一方、『関東』(同282件→285件、1.1%増)は6カ月連続で前年を上回り、11月としては過去10年で最多となった。
増減率でみると、『中国』(前年同月34件→22件、35.3%減)は大幅に減少し、3カ月連続で前年を下回った。一方、『東北』(同38件→50件、31.6%増)は2カ月ぶりに前年を上回った。「宮城」(同6件→17件)が11月としては2000年以降で最多となり、件数を押し上げた。
単月でみると、47都道府県中21都道県が前年を上回った。
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注目の倒産動向
ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産は43件判明 7カ月連続で前年を下回る
「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は、43件(前年同月56件、23.2%減)判明し、7カ月連続で前年を下回った。業種別にみると、『小売業』が14件で最も多く、『製造業』が10件、『建設業』『卸売業』が各7件で続いた。2025年1-11月の累計は584件となり、前年同期(685件)を14.7%下回るペースで推移している。
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人手不足倒産は31件判明 2025年1-11月の累計は390件
「人手不足倒産」は、31件(前年同月24件、29.2%増)判明し、6カ月連続で前年を上回った。業種別にみると、『建設業』が9件で最も多く、『小売業』が6件、『製造業』が5件で続いた。2025年1-11月の累計は390件と過去最多を更新し、集計開始から初めて通年で400件を超えるペースで推移している。
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後継者難倒産は36件判明 3カ月連続で前年を下回る
「後継者難倒産」は、36件(前年同月46件、21.7%減)判明し、3カ月連続で前年を下回った。業種別にみると、『卸売業』が9件で最も多く、『建設業』『サービス業』が各7件、『製造業』が5件で続いた。2025年1-11月の累計は461件となり、前年同期(501件)を8.0%下回った。
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物価高倒産は74件判明 2025年1-11月の累計は879件
「物価高倒産」は、74件(前年同月82件、9.8%減)判明し、4カ月ぶりに前年を下回った。業種別にみると、『小売業』が23件で最多、『建設業』が17件、『製造業』が15件で続いた。特に「飲食店」や「食料品・飼料・飲料製造」などの飲食関連で倒産が目立った。2025年1-11月の累計は879件となり、前年同期(877件)を0.2%上回った。
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今後の見通し
6カ月ぶりに前年を下回る、「物価高倒産」が過去最多ペース
2025年11月の全国企業倒産は796件発生し、前年(834件)を38件(4.6%減)下回った。前年を下回ったのは5月以来6カ月ぶりで今年2回目。2025年1-11月の累計は9380件となり、前年同期(9053件)を327件・3.6%上回った。一方、負債総額は788億8300万円となった。前年(1522億4400万円)を733億6100万円(48.2%減)下回り、3カ月連続で前年を下回った。
トレンドとなっている「人手不足倒産」の1-11月の累計は390件となり、通年で初の400件超えが濃厚となっている。また、「物価高倒産」の1-11月の累計は879件となり、過去最多の2024年(通年で933件)を上回る見通しとなっている。
建設業の倒産、12年ぶりに2000件超へ
主な事例では、中央建設(株)(東京都)が11月18日に東京地裁より再生手続き開始決定を受けた。2011年の東京本社開設を機に総合建築業者として業容を拡大してきたが、外注業者の施工不良トラブルに加え、近時の大口取引先からのクレームによる支払いトラブルがきっかけとなり、資金繰りが急速に悪化した。負債は約53億8100万円で、2025年の建設業の倒産として中川企画建設(株)(大阪府、10月会社更生法、負債約222億2200万円)に次ぐ規模となった。
建設業の倒産は1-11月の累計で1843件となり、2013年(通年で2347件)以来、12年ぶりに年間2000件超えとなる可能性が高まっている。そうしたなかで適用期限を迎える「住宅ローン減税の5年間延長」が浮上した。ハウスビルダーや工務店など、資材価格の高騰や人手不足で経営悪化が目立つ戸建住宅関連事業者への好転材料となるのか、動向が注目される。
飲食店の倒産、初の900件超えも
これから忘年会、新年会と繁忙期を迎える外食業界だが、倒産は高水準で発生し続けている。11月の飲食店運営事業者の倒産は68件発生し、1-11月の累計は820件となった。このままのペースで推移すると、過去最多の2024年(通年で894件)を上回り、初の900件超えとなる可能性がある。
11月までに発生した820件を分析すると、居酒屋を主体とする「酒場・ビヤホール」(180件)が最も多く、負債額別では「5000万円未満」の小規模事業者が634件・77.3%を占めた。
「コロナ禍で得た休業や時短営業に伴う協力金が売り上げを上回り、倒産を回避した飲食店が一定数存在した」(金融機関関係者)ものの、アフターコロナでの競争激化や食材費・人件費の高騰などで事業継続を断念する事業者が増加している。また、接待や忘・新年会、二次会の減少傾向の影響なども加わって、年末年始を目処に事業をあきらめる事業者がさらに増加する可能性もある。
今後も緩やかな増加傾向
引き続き11月も建設関連事業者や飲食店を中心とした負債5000万円未満の小規模倒産が目立った。当面は長期金利の上昇や政策金利の引き上げのほか、日中関係、為替変動を踏まえた中小企業の動向に注視する必要がある。また、年末年始は各種イベントが相次ぐことから、同関連事業者や個人消費者向けサービス事業者の動向にも注意する必要がある。倒産件数は今後も緩やかな増加傾向が続き、2025年(通年)の倒産件数は1万300件前後になるとみられる。























