奈良公園に生息する「奈良のシカ」たちに、殴る蹴るなどする男性の姿が2024年7月、SNS上で拡散されました。この事態をうけ奈良県が公式Xアカウントを通じて「このような行為は極めて不適切」と、正式に声明を発表。

 また、「近年、鹿せんべい以外のえさやりによる健康被害、人身事故、交通事故などが増えてきている」とし、「奈良のシカを守るため、正しい接し方を再確認しましょう」と呼び掛けています。

■ 「奈良のシカ」との正しい接し方

 「奈良のシカ」との正しい接し方については、添付された画像にて、以下のように説明されています。

・背中に乗る、抱え込む、角をつかむなどの接触により、不必要なストレスや害を与える可能性があることから、直接的な接触は行うべきではない。

・マダニなどが寄生している可能性があり、直接的な接触は避け、注意が必要。

・メスジカは出産期に、オスジカは発情期に不用意に近づいてはいけない。また子ジカにも不用意に近づいてはいけない。

・シカの健康に悪影響を与える恐れがあるため、「鹿せんべい」以外は与えてはいけない。

・「奈良のシカ」に鹿せんべいを与える際は、「小さな子どもは大人と一緒に与える」、「じらさない」、「周りのシカにも注意する」、「手荷物に注意する」。

・公園内では、犬にリードを必ずつけることとし(ロングリードは不可)、犬を放すなど、「奈良のシカ」が驚く行為は行ってはいけない。

・紙やビニール袋などを「奈良のシカ」が間違えて食べてしまわないように、公園内にポイ捨てせず、家に持ち帰る。

 いずれもごく当たり前のように感じる内容が羅列されていますが、改めて説明をしなければならないほど、訪問者のモラルやマナー意識が低下してしまっているのでしょう。

■ 注意喚起を行った背景は、観光客の増加による多くの問題が表面化していること

 こうした注意喚起を行った背景としては、近年の観光客の増加に伴い、シカに噛まれたり叩かれるなどの人身事故、鹿せんべい以外の給餌によるシカの健康への影響、シカと車両との交通事故が増加するなど、多くの問題が表面化していることを受けてのことだそう。

 加えて、先述した「奈良のシカ」に暴力をふるう動画が拡散されたこと。このような行為は極めて不適切であり、文化財保護法の規定に抵触し罰則が科せられる可能性がある、と改めて注意喚起しました。

 「奈良のシカ」は野生動物ではありますが、国の天然記念物(文化財)であり、春日大社の神鹿として保護されてきた歴史があります。そして、奈良県は奈良市、春日大社と協力し、奈良の鹿愛護会や鹿サポーターズクラブと連携しながら、保護育成の取組も進めています。

 「奈良のシカ」に安心して奈良公園で暮らし続けてもらうため、訪問者・観光客も今一度ルールやモラル・マナーを見直す必要があると言えるでしょう。

<参考・引用>
奈良県公式(@narakencyou

(山口弘剛)