おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

「ドラゴンボール」だけかと思いきや……謎のアプリ「ドラゴン伝説アニメ戦士の戦い」はいろいろな作品をごちゃ混ぜにした衝撃の珍ゲームだった

 鳥山明さんが生み出した国民的人気マンガ「ドラゴンボール」。先日App Storeでどう見ても「ドラゴンボール」にしか見えない「ドラゴン伝説アニメ戦士の戦い」というゲームを発見しました。

 タイトルから強烈に「ドラゴンボール」感あふれ出るこのゲーム、いったいどんな内容なのか実際にダウンロードしてみました。

  • ■ 「ドラゴン伝説アニメ戦士の戦い」のデベロッパーにしっかりした活動実態はなし?

     「ドラゴン伝説アニメ戦士の戦い」はDaud Aminというデベロッパーが公開しているゲームです。

    「ドラゴン伝説アニメ戦士の戦い」

     アプリのアイコンに描かれているのは、オレンジ色の道着のような衣装をまとった青年。髪型は若干違うものの、孫悟飯にしか見えません。

     ゲームジャンルは「アニメスーパー格闘ゲーム」とあります。ごちゃごちゃ修飾されていますが、要は格闘ゲームということでしょうか。

     本家「ドラゴンボール」の方で3D対戦格闘ゲームが出ていますから、それを真似ているということかもしれません。

     説明欄には「エネルギーブラスト、レーザービーム、超高速飛行パワーを使って邪悪なドラゴンファイターから街を救う空飛ぶスーパーヒーロードラゴンゲーム」とあります。スーパーヒーロードラゴンゲームって何のことでしょう。格闘ゲームとはまた違うのでしょうか。

     デベロッパーのDaud Aminについては、ネット上では情報がほとんど公開されていません。

     AppTailという海外のアプリ分析サイトを覗いてみたところ、かろうじて分かったのはDaud Aminが2021年から活動しているということ。

    AppTailの情報

     同サイトやApp StoreからはデベロッパーのWebサイトとして、Googleが運営するレンタルブログサービス「Blogger」上で展開しているプライバシーポリシーページに飛ぶことができます。該当ブログの運営者は「Extreme Bolt Fighting Games」となっています。

    「Extreme Bolt Fighting Games」のプライバシーポリシー

    「Extreme Bolt Fighting Games」のプロフィール

     しかし「Extreme Bolt Fighting Games」のプロフィールページに飛んでもこれといった追加情報はなく、名前でGoogle検索をかけてみても「Daud Aminと関連があること」「ゲームアプリを作っていること」以上の情報は得られませんでした。

     「Daud Amin」と「Extreme Bolt Fighting Games」の詳細や関連は不明ですが、少なくともしっかりとした活動実態がある企業や個人開発者であるかは不明です。

    ■ ジャンルは格闘……ではない!「ドラゴンボール」とかけ離れた、物騒なミッションだらけのゲーム

     App Storeを眺めてあれこれ言っていても仕方がないので、実際にダウンロードしてプレイしてみます。

     メイン画面に写っているのはかめはめ波らしきもの放つキャラクターの画像。コンテンツの解除ボタンや設定、ストアといったボタンがごちゃごちゃと配置されていて、ちょっと見にくいです。「どこから始めればいいんだ?」と数秒考えてしまいました。

    メインメニュー

     右下にある「PLAY」ボタンを押すと、キャラクターセレクト画面に切り替わります。選べるキャラクターは1人のみ。アイコンにもいた孫悟飯っぽい誰かです。

    キャラクター選択画面

     広告を視聴したりゲーム内通貨を支払ったりすることでロックの掛かっているキャラクターを解除することができますが、変わるのは服装だけです。性能も変わらないようです。

     キャラクター選択を終えると、次はモードの選択へ。

    モード選択

     最初にプレイできるのは「MISSION MODE」のみです。残りの未開放枠は「ZOMBIE MODE」「BOSS MODE」「GTA MODE」の3つ。「ZOMBIE」と「BOSS」はまだ理解ができますが、「GTA」とは……?

     ゲームモードを選択すると、レベル選択画面に変わります。

    レベル選択

     ゲームフィールドは高層ビルが立ち並ぶ、アメリカの大都市のような市街地。そして画面右上には赤い文字で「KILL 5 POLICE MEN(=警官を5人殺せ)」という物騒すぎる指示が。

    与えられたミッションは物騒

     「MISSION MODE」ではこの赤文字の指示を達成するとゲームクリアとなり、次のステージに進むことができるようになります。

     フィールドはかなり広く、自由度は高め。歩いたり、走ったり、飛んだりして好きなように移動することができます。画面右下には8つのボタンが配置されており、これらを押すことで様々なスキルを発動できます。

    8つのボタンでスキル操作

     かめはめ波らしき光線を放ったり、地面を殴りつけたり、周囲に気のようなものを弾けさせたり。

    かめはめ波らしき攻撃

    地面を殴りつける攻撃

    周囲に気のようなものを弾けさせる

     ちなみに「AD」とバッジ表示されているものは、発動するのに広告視聴が必要なスキルです。

     手からロープを射出したり、目からレーザービームを出したりすることもできます。ここまで来るともう「ドラゴンボール」は関係ありません。

    手からロープを射出

    目からレーザービーム

     ステージごとに与えられるミッションは上述の「KILL 5 POLICE MEN(=警官を5人殺せ)」のほか「DESTROY 5 BIKES(=バイクを5台壊せ)」、「KILL 5 PRISONERS ESCAPED FROM LOCKUP(=脱獄囚を5人殺せ)」、「SNATCH 5 VEHICLES(=車を5台盗め)」、「KILL 8 ROCKSTARS(=ロックスターを8人殺せ)」などととにかく治安が終わっています。

     この「MISSION MODE」のステージをいくつかクリアすると、「ZOMBIE MODE」が開放されます。

    ZOMBIE MODE

     これは「MISSION MODE」とは違い農場のようなフィールドで、襲い来るゾンビを倒すモードです。

     「ZOMBIE MODE」のステージをいくつかクリアすると開放されるのが「BOSS MODE」。

    BOSS MODE

     どこかの惑星を模したフィールドで強めのボス敵を倒すモードです。

     最後の「GTA MODE」は最初の「MISSION MODE」のミッションがないバージョン。つまりフィールドを好きに移動し、好きなように暴れることができます。

    ■ 盛り込まれた要素は「ドラゴンボール」以外にも 国内外の人気コンテンツがごちゃまぜに

     「MISSION MODE」と「GTA MODE」の街フィールドにいるNPCたちは、ミッションの内容などから分かる通り人相が悪めです。さらに近くを通り過ぎるたびにガンをつけてきます。道着姿が浮いてるからでしょうか。

    ガンをつけてくるNPC

     あと街フィールドにはゾンビもいます。

    街なかにゾンビ

     武器を持った警官がNPCとしています。

    ハンドガンを構える警官

     彼らは警官らしくハンドガンを携行していますが、実は警官よりも物騒な武器を持ったNPCキャラがいます。

    アサルトライフルを構えるロックスター

     ワイルド感のある服装とカーリーヘア、そしてアサルトライフル。このNPCは「ロックスター」と呼ばれていますです。あの「ロックスター」です。この世界のロックスターはギターではなくアサルトライフルを持ち歩いているようです。意味がわかりません。

     しばらくフィールドを徘徊してみて気が付きましたが、この治安の悪さと自由度の高さは人気クライムアクションゲーム「グランド・セフト・オート」を彷彿させます。

     App Storeの英語版ページで本作の英語版タイトルを確認してみると「Dragon Superhero Grand City」となっています。

    英語タイトルは「Dragon Superhero Grand City」

     「Grand City」に「グランド・セフト・オート」への意識を感じずにはいられません。

     また本作のプレイヤーキャラクターはロープを射出してビルからビルに移動したり、ビルの壁面にへばりついて移動したりすることも可能ですが、

    ロープでビルからビルへ移動

    壁にへばりつくことも可能

     この要素はプレイステーションで展開されている「スパイダーマン」のアクションゲーム「Marvel’s Spider-Man」シリーズにそっくりです。

     「ドラゴンボール」、「グランド・セフト・オート」、「Marvel’s Spider-Man」といった国内外の大人気コンテンツを組み合わせたならさぞや面白いゲームになるだろうと思いきや……国内App Storeでの評価は2.3。かなり低いです。

    評価はかなり低い

     低評価の理由にはパクリとしか思えないキャラクター・システムの部分もあるでしょうが、それ以前に本作がゲームとしてお世辞にも良い出来とは言えないところも挙げられそうです。

     狙い通りにキャラクターを動かせない操作性の悪さ、人や車がいきなり空から降ってきたり、車が地中に潜って走るなどのバグ、広告を視聴しなければクリアできないステージなど、ゲームのツッコミどころは枚挙に暇がありません。

     App Storeの英語圏のユーザーからも「the controls are impossible to use unless you play for 5 years (=5年間プレイしないと使いこなせない操作性)」「My grandmother can do better than this just dogwater(=俺の婆ちゃんはこれよりマシなの作れるよ)」などと皮肉たっぷりなコメントが相次いでいます。

     「寿司とカレーとパフェを混ぜたら美味しいに決まってる!」というようなアイデアで生み出されたとしか思えない、衝撃のアプリゲーム「ドラゴン伝説アニメ戦士の戦い」。

     心と時間に果てしなく余裕のある方にはおすすめかもしれません。

    <参考・出典>
    「ドラゴン伝説アニメ戦士の戦い」
    Daud Amin|AppTail.ページ
    Extreme Bolt Fighting Games|プロフィール
    Extreme Bolt Fighting Games|プライバシーポリシー
    ※本文掲載の画像は特に記載が無い限り、「ドラゴン伝説アニメ戦士の戦い」ゲーム内および関連ページのスクリーンショットです。

    (ヨシクラミク)

    あわせて読みたい関連記事
  • 「ワンピース」に酷似と注目のゲーム2作品がMy Nintendo Storeから削除
    ゲーム, ニュース・話題

    「ワンピース」に酷似と注目のゲーム2作品がMy Nintendo Storeから…

  • これは「ワンピース」では……?My Nintendo Storeの怪しすぎるSwitchゲームが話題
    ゲーム, ニュース・話題

    これは「ワンピース」では……?My Nintendo Storeの怪しすぎるSw…

  • 万博 with 「DRAGON BALL」コラボコンセプトビジュアル
    アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    2025大阪・関西万博に「DRAGON BALL」コラボグッズ登場 DNPが日本…

  • 「いつも同じ服着てない?」と言われないために…… 服装管理アプリ「KORE着た」がリニューアル
    商品・物販, 経済

    「いつも同じ服着てない?」と言われないために…… 服装管理アプリ「KORE着た」…

  • JR東日本のアプリが神アプデと話題 東海、西日本の運行状況も見られるように
    企業・サービス, 経済

    JR東日本のアプリが神アプデと話題 東海、西日本の運行状況も見られるように

  • 筋斗雲よーーい!「トミカ」と「ドラゴンボール」が初コラボ 鳥山明氏の魅力溢れる乗り物が立体化
    アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    筋斗雲よーーい!「トミカ」と「ドラゴンボール」が初コラボ 鳥山明氏の魅力溢れる乗…

  • あまりにも炭治郎!モロッコ発のゲーム「Demon Fighter Quest」を徹底調査
    ゲーム, コラム・レビュー・取材

    あまりにも炭治郎!モロッコ発のゲーム「Demon Fighter Quest」を…

  • Chainsaw Man : Mortal .Fighter
    ゲーム, コラム・レビュー・取材

    どう見ても「チェンソーマン」な低評価ゲームをプレイしてみたら……理不尽&手抜きな…

  • 万華鏡の眼
    ゲーム, コラム・レビュー・取材

    スマホゲーム「バンバンサバイバー」には「NARUTO」のキャラが登場する?パクリ…

  • 「巨人の3D」ゲーム画面
    ゲーム, コラム・レビュー・取材

    全身網タイツの変態が空中を駆ける「巨人の3D」 Appleが8回も却下した問題作…

  • ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 後ろ足を揃えてピーン!独特な伸び方をする“美脚”猫ちゃんに13万いいね
    インターネット, おもしろ

    後ろ足を揃えてピーン!独特な伸び方をする“美脚”猫ちゃんに13万いいね

  • ガシャポンの魅力&世界観を全身で体感!「ガシャポンに超夢中展2025」内覧会レポ
    イベント・キャンペーン, 経済

    ガシャポンの魅力&世界観を全身で体感!「ガシャポンに超夢中展2025」内覧会レポ…

  • 寝落ちした?なんとも言えない表情で熟睡する猫ちゃんが癒やし全開
    インターネット, おもしろ

    寝落ちした?なんとも言えない表情で熟睡する猫ちゃんが癒やし全開

  • 大好きな粉薬が切れて泣く3歳児 悩んだ親が与えた食材に「健康的」
    インターネット, おもしろ

    大好きな粉薬が切れて泣く3歳児 悩んだ親が与えた食材に「健康的」

  • キャラメルポップコーン×スパイシースナック!1袋で2つの味が楽しめる新商品が登場
    グルメ, 商品・サービス

    キャラメルポップコーン×スパイシースナック!1袋で2つの味が楽しめる新商品が登場…

  • 変革迎える物流、「運ぶ」の未来とは?いすゞがコンセプトカー「VCCC」を世界初公開
    企業・サービス, 経済

    変革迎える物流、「運ぶ」の未来とは?いすゞがコンセプトカー「VCCC」を世界初公…

  • トピックス

    1. ガシャポンの魅力&世界観を全身で体感!「ガシャポンに超夢中展2025」内覧会レポ

      ガシャポンの魅力&世界観を全身で体感!「ガシャポンに超夢中展2025」内覧会レポ

      10月31日から11月2日までの3日間、池袋・サンシャインシティにて「ガシャポンに超夢中展2025」…
    2. 缶コーヒーの「#マーク」に隠された意味 コカ・コーラ社に聞いた“色が変わる理由”

      缶コーヒーの「#マーク」に隠された意味 コカ・コーラ社に聞いた“色が変わる理由”

      徐々に寒さが増し、そろそろ温かい飲み物が恋しくなってくる季節。近ごろSNS上で、「ホットコーヒー缶に…
    3. イーロン・マスク氏、Xの不具合を報告 「フォローしている人の投稿が少ない」原因はバグだった

      イーロン・マスク氏、Xの不具合を報告 「フォローしている人の投稿が少ない」原因はバグだった

      SNS「X(旧Twitter)」のオーナーであるイーロン・マスク氏が、日本時間10月27日深夜、自身…

    編集部おすすめ

    1. 集英社、生成AIによる権利侵害へ厳正対応を表明 Sora2公開後の「類似映像大量発生」を受け

      集英社、生成AIによる権利侵害へ厳正対応を表明 Sora2公開後の「類似映像大量発生」を受け

      集英社は10月31日、生成AIを利用した権利侵害への対応について声明を発表しました。今秋、OpenAI社の生成AIサービス「Sora2」が公…
    2. 菊水産業「お菊社長」なりすましに接触 ウザ絡みして目的を探ってみた

      菊水産業「お菊社長」なりすましに接触 ウザ絡みして目的を探ってみた

      10月14日、国産つまようじ製造を手掛ける「菊水産業株式会社」の公式Xアカウントが、同社代表取締役・末延秋恵さんのなりすましアカウントが出現…
    3. 職員室を自由に物色! 体験型展示「あの職員室」が11月15日より開催

      職員室を自由に物色! 体験型展示「あの職員室」が11月15日より開催

      株式会社チョコレイト(CHOCOLATE Inc.)は、あの頃入りたくても入れなかった職員室を体験できる展示企画「あの職員室」を、11月15…
    4. カービィのエアライダー、桜井政博こだわりの「酔い対策」が話題 アクセシビリティ配慮に称賛の声

      カービィのエアライダー、桜井政博こだわりの「酔い対策」が話題 アクセシビリティ配慮に称賛の声

      2025年10月23日22時より配信されたNintendo公式番組「カービィのエアライダー Direct 2」にて、ゲームクリエイター・桜井…
    5. 「なぜ誹謗中傷は起きたのか」 にじさんじ運営が加害者心理を公表

      「なぜ誹謗中傷は起きたのか」 にじさんじ運営が加害者心理を公表

      ANYCOLOR株式会社は10月22日、所属ライバーである甲斐田晴さんをめぐる極めて悪質な誹謗中傷・荒らし行為への対応結果を、加害者側の意識…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト