おたくま経済新聞

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「当選者はあなた!」から始まる手口 編集部に届いた“当選DM”を追ってみた

 「おめでとうございます、当選者はあなた!プロフのサブアカウントをフォローして特典をゲット」

 ある日突然、XのDM(ダイレクトメッセージ)に、相互フォロワーからこんなメッセージが届いたらどうしますか?「ラッキー!」とすぐに信じてしまうのは厳禁。それ、「アカウントを乗っ取った第三者」が送ってきたものかもしれません。

  •  今回、おたくま経済新聞のXアカウント宛に、まさにこの種のDMが届きました。相手は過去に取材でやり取りをしたことがある人物ですが、普段このようなメッセージを送ってくる方ではありません。

     不穏な空気を感じ取りつつ、編集部ではこの「詐欺の深淵」を覗いてみることにしました。

    ■ 乗っ取られたアカウント、そして誘導先の「本丸」

     DMの送り主のプロフィールページを確認すると、そこには変わり果てた姿が。

     アイコンやヘッダー画像はそのままではあるものの、本当の持ち主なら絶対に投稿しない、「ギフトを受け取るには、私のサブアカウントをフォローしてください」という文言に加え、タイムラインには「必ず当たる抽選イベント」「すべての商品は現金化も可能です」といった、怪しさ満点の懸賞投稿が固定されています。

    変わり果ててしまった乗っ取りアカウント

     さらに、「31万円当選しました!」「ビットコインで儲かってるからお金には困ってないよ」といった、典型的な詐欺アカウント特有の投稿が並びます。残念ながら、このアカウントは第三者によって完全に乗っ取られてしまったようです。

     誘導先として指定されたのは、フォロワー4万人超えのアカウント「du」。 プロフィールには「賞品を受け取るには1万6000円のご購入が必要です」と、ここで早くも金銭の要求が明示されています。

    誘導先として指定されたのは、フォロワー4万人超えのアカウント「du」

     念のため、アカウントの接続地域が確認できる「このアカウントについて」の項目をチェックしてみました。すると、アカウントの所在地は「United States」、接続元は「Hong Kong App Store」と表示されていました。

    「このアカウントについて」の項目をチェック

     なお、所在地については「このアカウントはプロキシ(VPNなど)を使用していた可能性があるとパートナー企業から報告されている」という備考も添えられており、実際の居場所とは異なる可能性があります。そのため、接続元として記されている「香港」が、より実態に近い位置情報である可能性も考えられます。

    ■ 謎の「1万6000円」課金ルール その中身は

     次に「du」が投稿していた説明画像を細かく確認すると、ルールは次のように読み取れました。

    ・NIKEのプレミアスニーカーや時計などの画像から2点を選んで購入(計1万6000円)

    ・購入するとハズレなしの抽選に参加できる

    ・賞品は「iPhone 17 Pro Max「現金13万6600円」「AirPods 4」など。気に入らなければ現金化も可能

     1万6000円払えば、最新iPhoneや現金が必ず当たる……?そんなうまい話があるわけがありません。実態を探るため、早速DMで接触を試みます。

    謎の「1万6000円」課金ルール

     まずは「こんにちは。当選したと連絡があったのですが」とメッセージを送信すると、5分ほどで「商品を2点購入し、1万6000円支払えばイベントに参加できます。ハズレなしで必ず当たります」との返答がありました。マニュアル通りの返信です。

    5分ほどでメッセージが返ってくる

     「スニーカーが好きなので1と5をお願いします」と伝えると、続けて発送先住所を聞かれました。さすがに本物の住所をやすやすと伝えるわけにはいかないので、架空の都市「おたくま町」の住所を伝えてみましたが……なんとスルー。

    おたくま町はスルーされる

     「はい」とあっさり承諾され、支払い用と思われるPayPayのQRコードが送られてきました。「10分以内にお支払いいただき、スクリーンショットをご送付いただけますようお願いいたします」とのこと。10分はさすがに短すぎないか……そして何より「おたくま町」に違和感を持ってくれないか。

    ■ 会社名を聞くと強気の発言「参加しなくていい」

     ここで、違った角度から攻めてみます。誘導されたアカウント「du」が投稿していた抽選参加の説明画像には、「このイベントの解釈権は当社に帰属します」と企業が運営しているような記述がありました。相手を信用させるためなのでしょうが、これにカマをかけてみます。

    「このイベントの解釈権は当社に帰属します」と企業が運営しているような記述

     「どちらの企業が運営しているのでしょうか? 会社名を教えてもらえたら助かります」と尋ねてみたところ、相手は「私は今回のイベントの運営を担当しています」と、頑なに会社名を名乗りません。

    最後まで会社名には答えてもらえず

     さらにしつこく食い下がると、ついに「それなら、あなたは参加しなくていいですよ」と逆ギレされてしまいました。どうしても言えない事情があるのか、はたまた、そんな会社などそもそも存在しないのか……。

    「それなら、あなたは参加しなくていいですよ」と逆ギレ

    ■ 「架空決済」画像を送りつけたら……態度が急変「馬鹿野郎」

     これ以上の聞き取りは困難と判断し、最後の手段に出ることにしました。もちろん本物のPayPayのスクリーンショットは、相手が詐欺師であったとしても、倫理的な観点から使用できません。

     もっとも、架空の画像であれば問題ないというわけではありませんが、今回は実在の決済サービスや第三者に一切の被害が及ばないよう配慮したうえで、「おたくまPay」なる架空の決済画面のスクリーンショットを作成しました。画像には、万一どこかで悪用されることがないよう、「嘘画面」という透かし文字も念のために入れています。

     こうした準備を整えた上で、あたかも1万6000円を支払ったかのように装い、相手に画像を送信。さて、どのような反応を示すのでしょうか。

    「おたくまPay」なる架空の決済画面のスクリーンショット

     嘘の住所でも問題なかったので、もしかするとバレないかもしれません。……しかしこの後、割と丁寧だった相手の態度が急変。

    おたくまPayの画像を見せると態度が一変

     「偽物の画像はどこで手に入れたのですか?」「馬鹿野郎」

     ……送信から1分で相手から怒りのメッセージが寄せられました。さらに

    お怒りモードの相手

     「なんでお前みたいなクズ人間がまだいるんだ?さっさと失せろ、このドアホ!」

     なぜ被害者面……。すさまじい暴言と共に、メッセージを閉じられてしまいました。どうやら、こちらの「嘘」には厳しかったようです。

    ■ 知り合いからのDMでも不審な内容は疑う

     今回のケースは、「商品がお得に手に入れられる」「支払えばあとでさらに高額商品や現金がもらえる」と誘導し、1万6000円を支払わせようとするものでした。

     こうした手口はお金を支払ったとしても賞品が届くことはありません。中には、さらにお金を要求してくるケースも存在します。

     加えて、住所をはじめとする個人情報を知られてしまう危険性もはらむ手口です。そもそもこのアカウントに誘導するための方法が、「乗っ取ったアカウント」なのですから、まともなはずがあるわけないのです。

     なお、今回の「du」以外に、この手の類似アカウントはわんさか存在しています。もし、友人や知人から不自然な「当選おめでとう」DMが届いても、絶対にリンクを開かず、そっと通報&ブロックなどの自衛を行ってください。

     また、アカウントを乗っ取られないよう対策することも重要です。二段階認証を必ず取り入れる、単純なパスワードにはしない、相互フォロワーから突然変わったDMが届いたら不審を疑う、こうした自衛が重要です。

    ※注意※
    本記事中で使用している支払い画面の画像は、取材目的で作成した架空のものです。このような行為を一般の方が行うことは推奨されず、状況によってはトラブルにつながるおそれがあります。
    また、今回は相手の手口を確認するため取材としてやり取りを行いましたが、同様の行為を個人で行うことは非常に危険です。いずれも絶対に真似をしないでください。

    (山口弘剛)

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  • 山口 弘剛‌Writer

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    鹿児島出身・鹿児島在住。私生活では妻と共に2人の子どもを子育てしながら、地元のサッカークラブを熱烈応援中。仕事は元アパレル店長、元ゲームショップ店長を経験。現在はライター、イラストレーターとして活動。

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