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【いのち会議】~いのち宣言をつなぐ「103のアクション」~ 第28回「窒素の良い循環が健康な土や水、元気な草や牛、おいしい牛乳も生む。「うんち」を技術でより良く循環させ、地球の窒素問題に対応しよう」

update:
いのち会議
みなさまとともにすべてのいのちが輝く世界を実現したく、ぜひお声とご協力を!



いのち会議は2025年10月11日に大阪・関西万博会場内にて「いのち宣言」および「アクションプラン集」を発表いたしました。本リリースは いのちを「まもる」【宣言2-4】資源リサイクルやエネルギー循環のしくみをつくり、地球の環境を守ろうへのアクションプランの1つをご紹介するものです。ご興味ございましたら、ぜひお問い合わせください。

窒素の良い循環が、健康な土や水を、元気な草や牛を、そしておいしい牛乳をつくる。「うんち」を技術でより良く循環させ、地球の窒素問題に対応しよう

私たちヒトやすべての生物の「いのち」を支えるカラダは、水分と脂質を除くと、ほとんどがタンパク質でできています。タンパク質は、大気中の窒素を源として、土壌、微生物、植物、動物など「共に宿る大きないのち」の循環の中でつくられていますが、窒素を直接利用できるのはごく一部の微生物だけです。自然界で植物が利用できるのは窒素固定菌などから生成されるアンモニアなどの窒素化合物、「おいしい窒素」だけで、ほんのわずかの量しかありませんでした。それが1900年代に発明されたアンモニア合成法(ハーバー・ボッシュ法)により、人工的な「おいしい窒素」である窒素化学肥料を作る技術が確立されると、農作物の生産が増え、食糧が増加しこれにより世界人口は爆発的に増加しました。

人工的な「おいしい窒素」の製造は、極度の貧困や飢餓などの社会的課題を飛躍的に解決し、人類に大きな恩恵を与えましたが、一方で多くの弊害があることも知られてきました。窒素化学肥料の多くは作物に吸収されず、土壌の酸性化を経て、土壌劣化(=砂漠化)や、川や海の富栄養化による植物プランクトンの大発生と酸欠という生態系への深刻なダメージ(例:サンゴの死滅の一因)を引き起こしています。EU をはじめとする世界の農業大国においては、炭素問題よりも深刻と考えられている窒素問題の本質は、人工的な窒素肥料由来の窒素資源がしっかりと植物に利用されず流れ去っていることにあります。

また、陸上の動物の9割が人間と家畜となった今、大量に排出されるヒトと家畜の「うんち」も地球の窒素問題を悪化させる大きな要因となっています。人工的な窒素肥料の生産と利用が爆発的な拡大を遂げた一方、ヒトと家畜の「うんち」に含まれる窒素は適正に循環利用されず、下水処理や堆肥化を通じて空中や水域へ放出され続けてきました。その結果、地球上の「おいしい窒素」が過剰になってしまい、地球の許容限界「プラネタリー・バウンダリー」を超過する最大の課題として世界中で注目されつつあります。

北海道のある酪農場では、株式会社LIFULL Agri Loop が展開する鉄触媒を利用して牛の糞尿を「おいしい窒素」に変え、化学肥料を使わずにおいしい牧草を育て、その牧草で健康な牛を育てる画期的な「うんちの循環(Poop Loop)」をおこなっています。鉄触媒を入れた糞尿タンクからは、有害なアンモニアや温室効果ガスは殆ど出ず、悪臭は全くありません。触媒によって窒素が酸化せず、肥料成分として安定貯留されるからです。触媒の入った糞尿を撒いた牧草地では土の酸化が防がれ、糖度の高い牧草がたくさん採れるようになり、牛は牧草だけを食べて健康に育ち、長寿な上に乳脂肪たっぷりのおいしい牛乳をたくさん出すようになりました。また、牧場は、化学肥料だけでなく穀物などの配合飼料の購入も不要になったため、環境負荷を減らしつつ、農業生産性を向上させることができました。農家の大部分が赤字経営を強いられ、「3K(きつい、汚い、稼げない)」というネガティブなイメージもあいまっての就農人口の減少、ひいては食料自給率の低下にも繋がっている日本の現状において、このように「窒素問題への対応」と「儲かる農業」が両立できた事例があります。

[画像: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/161447/97/161447-97-67f3667dd1d4d2ffdeec6b1b52b51731-591x392.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
窒素問題を解決する「うんちの循環(Poop Loop)」



日本の畜産業で排出される糞尿に含まれる窒素は、日本で使用されている窒素化学肥料とほぼ同じ量です。LIFULL Agri Loopは、2050年に向けての取り組みの一つとして、「うんち」の酸化を技術で抑えながら「おいしい窒素」に変えて農業で利用することを目指しています。これが広まれば、土壌劣化や水域の窒素汚染、窒素由来の温室効果ガスの抑止に寄与すると考えられます。結果として、環境全体が健康になり、食を介して人も健康になることが期待されます。

いのち会議は、さまざまな組織と連携し、窒素循環の重要性について情報発信や教育活動を通じ、社会全体に理解と共感を広める活動を継続的に拡大すること、また産学の協働・共創の場により、窒素の「より良い循環」に寄与する技術の発掘と活動を支援します。

【参考情報】

・持続可能な環境と食料安全保障を両立させる窒素利用の在り方 林健太郎
 https://ajass.jp/Sympo/2023/2hayashi.pdf
・環境省・環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和4年度 環境の状況
 https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r05/html/hj23010101.html
・日本肥料アンモニア協会・家畜ふん尿の肥料成分
 http://www.jaf.gr.jp/faq.html

本記事に関する問い合わせ先

いのち会議 事務局、大阪大学 社会ソリューションイニシアティブ(SSI)
特任助教(常勤) 宮崎 貴芳(みやざき たかよし)、教授 伊藤 武志(いとう たけし)
TEL: 06-6105-6183
E-mail: ssi2@ml.office.osaka-u.ac.jp
※取材の申し込みにつきましてはお気軽にご連絡ください。

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