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野村不動産株式会社(本社:東京都新宿区/代表取締役社⾧:松尾大作、以下「野村不動産」)と慶應義塾大学(東京都港区)は、「高断熱集合住宅における床チャンバー※1方式の全館空調が住宅内温熱環境と居住者の健康に及ぼす影響(以下「本研究」)」についての共同研究を2022年の夏より行ってまいりました。本研究は、野村不動産が提供する住戸全体の床空調である「床快full空調(ゆかいふる空調)※2」の採用物件に転居した居住者様を対象に、転居前後で温熱環境の他、血圧や睡眠効率などバイタルデータの実測調査を行い、検証を行ったものです。この度、断熱性能や床チャンバー方式の全館空調(床快full空調が該当)が、住宅内の温熱環境や居住者の夏季の睡眠及び冬季の血圧に良い影響を及ぼす結果を得ることができましたのでお知らせいたします。この研究成果は、2024年3月の日本建築学会関東支部研究発表会、8月の日本建築学会大会にて発表されました。また、空気調和・衛生工学会論文集(2025年1月発行)の査読論文にも採録されております。
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【床快full空調断面イメージ】
※1: 二重床を利用して住戸全体に冷暖房と換気の空気を送る空調システム
※2: 床快full空調の詳細については公式HPをご覧ください。(https://www.proud-web.jp/proud/environment/yukaifull/)
1. 今回の共同研究の背景
今まで床快full空調の健康への効果については、国土交通省の発行する「スマートウェルネス住宅推進事業」において提供されている資料などを基にリーフレット等を作成し、説明しておりました。ただ、マンションにおける床チャンバー方式の全館空調がもたらす健康への効果についての調査・研究は例が少ないこともあり、この度、温熱環境・快適性の確度をより高めることによる顧客満足度向上を目的とし、慶應義塾大学と野村不動産で共同研究を実施する運びとなりました。床快full空調を採用しているマンション購入者様に協力を依頼し、転居前後の住宅における温熱環境と血圧、脈拍、睡眠状態、体温等のバイタルデータを比較することで健康への効果検証を実施しました。
検証においては、スマートウェルネス住宅等推進事業など住宅と健康の関係について多数の調査を実施し、当分野において豊富な知見を有する慶應義塾大学伊香賀俊治教授(現名誉教授)、川久保俊准教授に依頼いたしました。
<床快full空調とは>
床空調システムを利用し、24時間365日、住戸のすみずみまで換気しながら年間を通じて住戸全体を一定の温度に保つことができるため、部屋ごとの温度差が生じにくくなります。夏においては室温が一定に保たれることによる熱中症リスクの低減、冬においては家中が暖かく、床近傍の室温が暖かくなるため、室内の温度差によって起こるヒートショックや高血圧などのリスクの軽減が期待されます。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/25694/726/25694-726-afcbaf762bdeff971cde14621ebb155e-821x254.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
【床快full空調の採用有無による住戸全体の温度の違い】
<研究者紹介>
伊香賀俊治 慶應義塾大学名誉教授 専門:建築・都市環境工学
1959年東京生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業、同大学院修了。(株)日建設計、東京大学助教授、慶應義塾大学理工学部教授を経て2024年より慶應義塾大学名誉教授、一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター理事長。博士(工学)。日本学術会議連携会員、日本建築学会副会長、日本LCA学会副会長、日本応用老年学会理事を歴任。共著に「CASBEE入門」、「熱中症の予防と現状」、「LCCM住宅の設計手法」、「最高の環境建築をつくる方法」、「すこやかに住まう、すこやかに生きる、ゆすはら健康長寿の里づくりプロジェクト」、「"生活環境病"による不本意な老後を回避する -幸齢住宅読本」など多数。
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川久保俊 慶應義塾大学准教授 専門:建築環境・都市環境工学、サステナビリティサイエンス
1985年長崎生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程を修了。博士(工学)。2013年4月より法政大学デザイン工学部建築学科助教。その後、専任講師、准教授を経て2021年に教授へ昇進。その後、2024年4月より母校の慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科に准教授として着任。大阪大学社会ソリューションイニシアティブ招聘教授を兼任中。近年はローカルSDGsを原動力とした地域課題の解決に関する研究に注力。主な受賞歴として、文部科学大臣表彰若手科学者賞、グリーン購入大賞・環境大臣賞、World Sustainable Built Environment Conference Outstanding Contribution Awardなど多数。
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2. 本研究で得られた成果について
本研究では、床快full空調を採用しているマンションの購入者様を対象に、転居前後での実測調査を行いました。夏季と冬季にそれぞれ実測調査を実施し、それぞれにおいて以下のような結果が得られました。
<夏季の調査結果について>
転居前調査(2022年7~8月)と転居後調査(2023年7~8月)を実施
1.転居後は転居前に比べ、測定期間中の平均気温が日中約3.6℃、夜間約1.5℃上昇したにもかかわらず、全館空調の効果で水回りを中心とした室温の低下が見られた。転居前後でのアンケート調査では「体のだるさ」「疲れ」「イライラ」といった指標において改善が見られた。
2.就寝中の寝室環境において、平均室温は0.2℃と若干上昇するも、相対湿度は9.6%と大幅に低下、平均CO2濃度も低下が見られた。転居前後の質問において、「暑くて眠れない」「ジメジメして眠れない」と回答した割合が大幅に低下、また、睡眠効率においても、2.4%の改善と有意な効果が見られた。
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【A-就寝中の寝室の環境(気温・湿度・CO2濃度)】
※対応したサンプルのt 検定を実施 †: p < 0.1, :p < 0.05, *: p < 0.01, ***: p < 0.001,n.s.: not significant.(以下、共通)
[画像6: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/25694/726/25694-726-f3e7564a65885f005c1dd9eb0d345264-820x386.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
【B‐夏季における転居前後で症状を感じた割合】
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<冬季の調査結果について>
転居前調査(2022年12月~2023年1月)と転居後調査(2023年12月~2024年1月)実施※3
3.転居後は転居前に比べ外気温は1.5℃程度上昇。各室の室温は、転居前では居間を除く全ての室でWHO(世界保健機関)推奨最低室温の18℃を下回る時間が存在したが、転居後では18℃を下回る時間はなく、1日を通して室温が高く維持されている。特に、在宅中の居間の上下温度差(2.2℃→0.3℃)、居間と水回り(脱衣所・トイレ)の温度差等で改善が見られた。また、「手足が冷える」と感じる人の割合が低下した。
4.参加者のうち転居前に起床後収縮期血圧が、日本高血圧学会の定める正常高値血圧(115mmHg)以上と以下に分類して比較したところ、正常高値血圧では血圧が3.9 mmHg低下するなど、血圧が高い人ほど有意に低下するという結果が見られた。
※3: 物件の引き渡し時期の都合で夏季調査と参加者は異なる
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【E-転居前後での平均室温比較】
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【F-転居前後で「手足が冷える」と答えた割合(左)、転居前血圧が115mmHg以上、未満それぞれの血圧の変化(右)】
3. 今後の展開
今後も野村不動産と慶應義塾大学は、サステナブルな社会に貢献するとともに、誰もが住みやすく、快適性や健康に寄与する優れた住宅環境に関する研究・商品開発を進めてまいります。