2026年2月20日、日米をはじめとする29の市民団体は、日本政府による対米投融資パッケージに化石燃料事業が含まれていることを受け、共同声明「日本政府はトランプ関税の『取引材料』として、化石燃料インフラに公的資金を投じるべきではない」を発出しました。声明は、オハイオ州の大規模ガス火力発電所やテキサス州の原油輸出インフラへの公的支援検討に深刻な懸念を示し、日本政府、国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)に対して、これら化石燃料事業への支援の即時撤回を求めています。
声明は、1.5℃目標やG7合意、IEA・IPCCの科学的知見に照らして新規化石燃料事業に余地はないこと、米国の石油・ガス事業におけるメタン排出の深刻さ、さらに日本の公的資金が支援した既存LNG事業による環境・健康被害の実例などを指摘しています。加えて、関税交渉の取引材料として化石燃料インフラに資金を投じることは「責任ある」公的資金の使い道ではないとして、日本政府に対し国際合意と気候科学に整合した政策判断を強く求めています。
詳細は以下の共同声明をご覧ください。
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共同声明: 日本政府はトランプ関税の「取引材料」として、
化石燃料インフラに公的資金を投じるべきではない
2026年2月20日日米をはじめとする29の市民団体は、トランプ米大統領が「トランプ関税」の成果として日本時間2月18日に公表した日本の対米投融資の第1弾に、化石燃料事業が含まれていることに深い懸念を表明するとともに、日本政府、国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)に対し、これら化石燃料事業への支援検討を直ちに撤回することを要請する。
対米投融資第1弾には、オハイオ州の世界最大級となる920万キロワットのガス火力発電施設とテキサス州の原油積み出し港(原油輸出インフラ)が含まれている。これらの事業は、気候危機の回避に不可欠な「化石燃料からの脱却」に逆行する。また、メキシコ湾岸地域では日本の官民の投融資を受けて多くの化石燃料関連事業が行われ、地域社会に環境被害や人権侵害をもたらしてきたが、今回の対米投融資によって更なる被害がもたらされる可能性がある。今後の米国の政権交代と政策変更などによって、かかる化石燃料インフラがいわゆる「座礁資産」と化すリスクもある。
このような化石燃料開発に対して、日米の市民は明確に反対の声を上げてきた。アラスカLNGについては世界150超の団体が公開書簡を発出し、トランプ政権による圧力と引き換えに現地の環境を破壊する事業へ公的支援を行うべきでないと要請した。気候危機が激化し、世界が「脱化石燃料」に向けた取り組みを強化しなくてはならない中、トランプ政権の意向に追従して、気候変動対策を後退させるようなことはあってはならない。関税交渉の取引材料として化石燃料事業に公的資金を投じ、地域社会や地球環境を破壊することは「責任ある公的資金の使い道」ではない。
報道によれば、日米両政府はこれらの事業に投資する特別目的事業体を組成し、日本側からJBICが資金を拠出し、NEXIの融資保証の下で邦銀も融資する枠組みが想定されている。2月18日の発表を受け、同日にJBICとNEXIは上記2つの化石燃料インフラ建設・所有・運営について融資または付保の検討を始めた 。しかし、「責任ある積極財政」を掲げる高市政権として、化石燃料事業に対して日本の公的資金を投入することが本当に「責任ある」行動になるのか、再考するべきである。特に新規の石油・ガス事業については以下の点を考慮しなければならない。
国際合意と科学が示す結論:新規化石燃料事業の余地は無い
2022年G7エルマウ・サミットにて日本政府は、「各国が明確に規定する、地球温暖化に関する摂氏1.5度目標やパリ協定の目標に整合的である限られた状況以外において、排出削減対策が講じられていない国際的な化石燃料エネルギー部門への新規の公的直接支援の2022年末まで」の終了にコミットした。気候変動シンクタンクのClimate AnalyticsはClimate Action Trackerで、米国の気候目標や政策は1.5 ℃目標に整合的ではないと評価しており、JBICおよびNEXIによるオハイオ州ガス火力発電およびテキサス州原油輸出インフラへの支援は、明確にこのG7合意に違反するものである。
2050年ネットゼロの道筋を分析した国際エネルギー機関の報告書では、1.5℃の目標達成のためには、石油、ガス、石炭の新規プロジェクト開発は必要ないことが再確認された。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新報告書でも、既存の化石燃料インフラからの推定CO2排出量だけでも、1.5℃以上の温暖化につながってしまうと指摘されている。科学の結論は明確である。気候変動による最悪の影響を避けるためには、新規の化石燃料プロジェクトの開発を行う余地はもう地球上にはない。
世界190カ国以上が参加する国連気候変動枠組条約の第28回締約国会合(COP28)でも、「化石燃料からの脱却」が合意された。日本を含む世界中で気候変動災害が激甚化する中、新規ガス火力発電所や原油輸出インフラに公的資金を投じることは許されない。日本政府には国際合意を守る責任がある。
米国のガス・石油事業の深刻なメタン排出
化石ガスの主成分は非常に強力な温室効果ガス、メタンである。メタンの地球温暖化への寄与を示す地球温暖化係数は、100年スパン(GWP100)で見るとCO2の29.8倍、20年スパン(GWP20)で見ると82.5倍となっている。このメタンは、ガスのサプライチェーン全体で排出・漏出されており、このようなメタン排出も考慮すると、LNGのライフサイクルを通しての温室効果ガス排出量は石炭より33%も多いことが報告されている(米国で生産されるLNGの場合)。
今回支援対象とされるガス火力発電所もメタン排出と無縁ではない。米国で石油ガス産業の汚染を監視・記録する団体Oilfield Witnessが光学ガス画像技術を用いて行っている調査では、ガス火力発電所からのメタン排出が確認されている。FoE Japanの試算では、JBICが2024年に支援した化石燃料事業全体の直接排出量のうち、メタンが占める割合は46%(GWP20の場合)に達する。メタンを考慮に入れると、ガス事業への資金支援は一層許されないのは明らかである。
JBICの化石燃料投融資による温室効果ガス排出量は既に限度を超えている
JBIC等を通じた海外の化石燃料事業に対する公的資金支援は、既に莫大な温室効果ガス排出をもたらしている。FoE Japanの調査によれば、JBICによる温室効果ガス排出量は2024年に約4億800万トン(CO2換算、GWP20、動員排出量)であり、JBICを国と見立てた場合、温室効果ガス排出量において世界第20位に相当し、フランス、イギリス、イタリア等の国々の年間排出量を上回る。
さらに、JBICの年間温室効果ガス排出の推移はIPCCが求める削減率(2030年までに、2019年比で「約43%」削減)と整合していないことも明らかになっている。仮にJBICが2025年以降に化石燃料ガス事業への投融資を一切しない前提でも整合しない。今回米国でのガス火力・原油輸出インフラに投融資すれば、1.5℃目標に整合する排出削減経路から一層乖離することになる。
日本の公的機関が支援する米LNG施設での深刻な環境破壊と健康被害
米国メキシコ湾岸では、JBICなどによる支援を受けたキャメロンLNG事業やフリーポートLNG事業が、すでに地域社会に深刻な環境破壊と健康被害をもたらしている。フリーポートLNGでは、2022年6月の爆発事故により約3,400m³ものメタンを排出し、爆風で子どもを含む複数人が怪我をし、ターミナルはその後8ヶ月間操業を停止した。このような事例は、JBICやNEXIによる日本の公的支援が、現地の健康・環境・生活を犠牲にして進められる化石燃料開発の拡大と不可分であることを示すものである。これ以上、新たな犠牲を地域社会に強いる化石燃料事業への支援は許されない。
署名団体:
国際環境NGO FoE Japan
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
国際環境NGO 350.org Japan
気候ネットワーク
メコン・ウォッチ
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
350Hawaii
Oilfield Witness
Better Brazoria Freeport Texas
Oil Change International
Turtle Island Restoration Network
Unitarian Universalist Service Committee
Friends of the Earth United States
Gulf South Fossil Finance Hub
Zero Hour
Jubilee Australia Research Centre
The Australia Institute
Green America
Save Ohio Parks
FreshWater Accountability Project
Ohio Valley Environmental Advocates
Mid-Ohio Valley Climate Action
Earth Ethics, Inc.
198 methods
Dayton Energy Collaborative
Third Act Ohio
Columbus Community Bill of RIghts
Radioactive Waste Alert
Ohio Nuclear Free Network
連絡先:
国際環境NGO FoE Japan
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9
Email: osada@foejapan.org























