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インバウンド強化に取り組む観光地で来訪者数が前年比約2倍 じゃらんリサーチセンターと熱海市、AIエージェントで観光DXを実証

update:
株式会社リクルート
人手不足の中でも機能する、インバウンドAIマーケティングの実装モデルを提示



株式会社リクルート(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:牛田 圭一、以下リクルート)の観光に関する調査・研究、地域振興機関『じゃらんリサーチセンター』(センター長:沢登 次彦、以下JRC)は、昨年度に実施した生成AI活用に関する研究の成果を踏まえ、静岡県熱海市をフィールドに、地域の持続可能な観光地経営を目指した「AIエージェント」の実装に関する実証事業(※1)を行いました。
本実証事業では、市・DMO、旅行者、観光事業者の3者が有機的に連動する循環サイクルの構築を目指し、分析・検知・情報生成・共有をAIで連鎖させる仕組みを検証しました。
その結果、限られた人材体制の中でもインバウンド強化に向けた施策を効果的かつ効率的に推進できることが確認され、対象国からの来訪者数は前年比で約2倍に増加するなど、具体的な成果が得られました。
(※1)観光庁の「観光DX推進による地域活性化モデル実証事業」として実施したプロジェクト。熱海市役所、熱海観光局、JRCの協業によって実行。
本研究の背景・目的
温泉や海、美しい自然景観、海の幸やスイーツなどの豊富な観光資源を有する静岡県熱海市は、年間約300万人が宿泊する国内有数の観光地です。近年は国内旅行者数が順調に推移している一方で、インバウンド延べ宿泊客数は全体の約5%にとどまっており、特に平日を中心とした宿泊需要の創出や消費額の向上が課題となっていました。
こうした課題に対応するため、熱海市では令和6年度にインバウンドに関する注力指標を設定し、誘客強化に向けた取り組みを進めてきました。しかし、観光に関するデータの収集範囲が限られており、体系的に整理・活用しきれていないことに加え、現状分析、施策の検討・実行、振り返りといった一連の業務に十分な人的リソースを割くことが難しいという課題を抱えていました。
こうした状況を踏まえ、JRCは、昨年度に実施した生成AI活用に関する研究(※2)で得られた知見を基に、限られた人材体制の中でもデータを活用し、目標達成に向けた施策を効果的かつ効率的に回せる体制の構築を目指しました。本実証では、単体の業務効率化にとどまらず、「市・DMO」「旅行者」「観光事業者」の3者がAIを介して有機的に連動する循環サイクルの構築を目的とし、AIエージェントの実装によって、持続可能な観光地域経営に寄与するかを検証しています。
あわせて、本実証を通じて得られた知見を基に、今後同様の課題を抱える他地域においては、業務プロセスの整理や小規模な検証を重ねながら段階的に取り組むことが有効であるという示唆も含め、実践可能なモデルとして提示することを目的としています。
(※2) https://jrc.jalan.net/wp-content/uploads/2025/02/Release_JRC-GenerativeAI2025.pdf

実証概要
本実証では、分析・検知・情報生成・共有といった業務プロセスをAIで連鎖させる「AIエージェント」の実装を検証しました。(図1)
具体的には、観光統計データやWeb行動データ、口コミ、問い合わせ情報などを横断的に活用し、重要指標や施策の変化を把握する「AIダッシュボード」および、変化の兆しを自動で通知する「AI検知アラート」を構築しました。これにより、市・DMOは膨大なデータを能動的に確認することなく、優先的に対応すべき課題や次の打ち手を把握できる運用を実現しています。



あわせて、AIダッシュボードによる分析結果を基に、インバウンド旅行者の関心や行動特性に即した発信内容を整理し、そのコンテンツをAIによるダブルチェックを通じて品質を担保しながら多言語化する「AI多言語ツール」や、観光案内所のデータと現場の気づきを統合したレポートを自動生成する「AIレポート作成ツール」を連携させました。これらのアウトプットは、公式観光サイトやQRコードリストを通じて、旅行者への情報提供や観光事業者の接客・施策立案支援に活用されています。
また、本実証では、アナログな業務整理や小規模な検証を重ねながら段階的にAIを組み込む導入プロセスを重視しました。人が行ってきた業務を明文化・型化した上でAIに任せることで、限られた人材体制でも現場で実践可能な活用モデルとなるかを検証しています。
実証結果

市・DMO:分析業務の工数を最大90分の1に削減 「分析作業」から「気づきが届く運営」へ

市・DMOでは、AIダッシュボードおよびAI検知アラートの活用により、従来人手で行っていたデータの抽出・分析・整理といった作業を大幅に削減しました。
観光統計データやWeb行動データ、口コミ情報などを横断的に分析し、重要指標と施策振り返り指標を一体的に把握できる仕組みを構築したことで、分析業務にかかる工数は最大で90分の1(※3)に削減され、複数の施策を同時並行で検証することが可能となっています。
また、変化の兆しはアラートとして自動通知されるため、担当者が常にダッシュボードを確認しなくても、優先的に対応すべき課題や次の打ち手を把握しやすくなりました。これにより、創出された時間を施策実行や事業者との対話、戦略検討に充てられるようになりました。
(※3)業務内容を細かく分類し、生成AIを使わない場合の時間と生成AIを使った場合の時間と比較

旅行者:検索表示回数15.3倍、来訪者数は前年比約2倍 「言語変換」から「ニーズ起点の情報接点」へ

旅行者向けには、AIダッシュボードで得られた分析結果を基に、検索ニーズや行動データに即した多言語情報の生成・発信を行いました。
単なる日本語コンテンツの翻訳ではなく、国・地域別の関心や旅マエ・旅ナカの行動特性を踏まえた情報を整備したことで、公式観光サイトへの流入が大きく拡大しました。
その結果、Google検索における表示回数は15.3倍に増加(※4)し、平均掲載順位も大幅に向上しています。
また、これらの情報をQRコードリストとして観光案内所や宿泊施設で活用することで、現地滞在中の情報接触も促進されました。
こうした取り組みの積み重ねにより、インバウンド強化の対象国であるアメリカおよび台湾からの来訪者数は、前年比でおおむね約2倍(※5)に増加し、インバウンド強化に向けた具体的な成果が確認されました。
(※4)2025年5月21日~6月30日(41日間)と2025年11月21日~12月31日(41日間)で比較(Google Search Console計測)
(※5)2024年4月~11月と2025年4月~11月で比較(おでかけウォッチャー「デジタル観光統計(訪日版)」計測)

観光事業者:レポート作成時間を30分の1、接客工数は約3割削減 「結果共有」から「現場で使える支援ツール」へ

観光事業者向けには、観光案内所の来訪者データや問い合わせ内容、現場スタッフの気づきなどを統合し、AIが自動で要点を整理する「AIレポート作成ツール」を導入しました。
これにより、従来は作成に時間を要していたレポートが短時間で生成可能となり、データを“読む資料”ではなく、“すぐに使える支援ツール”として共有できるようになりました。
生成されたレポートは、観光協会や宿泊事業者、交通事業者など地域内の関係者間で共通言語として活用され、情報共有や認識のすり合わせを円滑にしています。あわせて、QRコードを活用した案内により、観光案内所における接客工数は約3割削減されるなど、現場業務の負担軽減と連携強化の両立が確認されました。
担当者のコメント
株式会社リクルート じゃらんリサーチセンター 研究員 松本 百加里
今回の実証で最も重要だと感じているのは、AIを導入したこと自体ではなく、「限られた人材でも、きちんとPDCAが回る状態を先につくれた」点です。インバウンドを強化したいという目的があっても、現場ではデータの整理や分析、振り返りに十分な時間を割けないという声は多く聞かれます。だからこそ本実証では、分析・検知・情報生成・共有といった業務をAIで連鎖させ、人が本来注力すべき施策検討や対話の時間を生み出すことを重視しました。
また、本実証を通じて、AIエージェントを現場に定着させていく上では、業務プロセスを整理しながら小さな検証を重ね、段階的に活用を広げていくことの重要性も改めて認識しました。必ずしも最初から完成形を目指すのではなく、実際の運用を通じて改善を重ねていくことで、業務効率化とインバウンド来訪者数の増加を両立できたと捉えています。
インバウンド強化や人手不足といった課題は、熱海市に限らず多くの観光地が直面しています。本実証で得られた、データを並走させながらサイクルを回していく考え方や、AIを業務に無理なく組み込んでいくプロセスは、同様の課題を抱える地域でも十分に応用可能です。
JRCとしては、今後も各地域と伴走しながら、持続可能な観光地域経営の実装に向けた知見を蓄積・共有していきたいと考えています。
なお、本実証の取り組み詳細は、3月下旬に観光庁サイトで動画と成果報告書として掲載予定です。
熱海観光局
膨大なデータの分析をAIに委ねることで、分析業務の負荷が軽減され、訪日外国人客の最新ニーズを地域全体でタイムリーに把握するとともに、受け入れ環境整備としても迅速に進められるようになりました。
今回の実証において意義深かった点は、観光局にとどまらず、地域の宿泊施設や観光事業者様とも、鮮度の高い情報を「共通言語」として共有できたことです。
その結果、地域一体となってデータを活用し、より人でしか表現できないおもてなしにフォーカスできたことは、一定の手応えを感じられる点です。AIが作成する「トレンド通信」や、現場で活用可能な「QRコードリスト」などを通じて、日々の運営や改善に役立てることができました。





▼リクルートについて
https://www.recruit.co.jp/

▼本件に関するお問い合わせ先
https://www.recruit.co.jp/support/form/

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