著者:中野大樹(IBM)、Jerry Chow(IBM)、仙場浩一(東京大学 大学院 理学系研究科フォトンサイエンス研究機構 特任教授)
日本は、量子コンピューティングにおける世界的リーダーの一国です。
そのきっかけは、2019年に東京大学とIBMが締結したJapan-IBM Quantum Partnershipに基づき、日本初のIBM Quantum System Oneを日本に導入したことでした。以降、IBMと東京大学が共同で創設した量子イノベーションイニシアティブ協議会に参画するJSRやトヨタ自動車、三菱ケミカル、ソフトバンク、ソニーなど、日本の大手企業がIBM Quantum System Oneを積極的に活用しています。
これらの取り組みを通じて、日本の産業界は量子コンピューティング技術の進展に重要な役割を果たしてきました。
日本と東京大学の貢献は、量子コンピューティングの科学にとどまりません。東京大学とIBMは、2021年に設立した世界初の量子ハードウェアテストセンター「東京大学 - IBM Quantum ハードウェアテストセンター」を通じて、日本の量子ハードウェア・サプライヤーのサプライチェーンおよびエコシステムの発展を支援してきました。量子コンピューティングのような新興市場におけるサプライチェーンを成長させるには、業界に必要なコンポーネントの開発を中心とした集中的なアプローチが必要です。フライホイール効果が実際に発揮され始めており、日本の研究機関における新しい研究の蓄積、産業界のリーダーによる新技術、そして日米間の協力が、大きな勢いと自立した量子産業の種を生み出しています。
日本は、サプライチェーンを構築し、量子エコシステムを拡大するための成長モデルとなっており、東京大学 - IBM Quantum ハードウェアテストセンターは、その中で重要な役割を果たしています。TDK、フジクラ、キーコム、I-PEXなどのメーカーが量子コンピューティングのコンポーネントに取り組んでおり、同テストセンターでは、コンポーネントの性能評価に必要な専用インフラストラクチャーにアクセスする機会を提供しています。テストセンター以外でも、アルバックと京セラは、量子コンピューターの重要なコンポーネントやインフラストラクチャーを構築しています。
わずか数年前まで、量子コンピューティングは、トイ・プロブレムや学術研究の領域でのみ機能する探索的な技術でした。現在、世界中のユーザー・コミュニティーが、IBMの量子コンピューターの規模や品質、スピードの恩恵を受け、そのコミュニティーが、量子技術を実験室から産業界の職場へと持ち込んでいます。
IBMは、大規模なフォールト・トレラント量子コンピューターを構築するためのタイムラインを詳述した、実用的な量子コンピューティングを推進するための包括的なロードマップを公開しています。その取り組みの一環として、IBMは、現在および将来の量子コンピューターの主要コンポーネントの仕様を、見込みベンダーに提供しています。IBMは、東京大学のハードウェアテストセンターを通じて、多くのサプライヤーと協力して、これらのコンポーネントの一部をテストしてきました。
日本で量子に命を吹き込む企業
電子部品を製造するTDKは、磁気技術で世界をリードし、スマートフォンに使用されているような小型バッテリーで最大のシェアを誇っています。同社のコンポーネントは、コネクテッド・カーや産業用ロボット、スマートフォン、AIを搭載したIoTスマート・デバイスに搭載されています。TDKは、極低温マイクロ波アイソレータの開発と実証において大きな進歩を遂げてきました。これらは、超伝導量子ビットを中心に構築される量子コンピューティング・システムの重要なコンポーネントです。TDKは、東京大学のハードウェアテストセンターを利用して、その進歩を早期に検証しました。
超伝導量子ビット技術におけるもう一つの重要なコンポーネントは、希釈冷凍機です。希釈冷凍機は、ヘリウム同位体を混合チャンバー内で循環させ、超伝導量子ビットのミリケルビン動作温度を達成します。真空技術のリーダーであるアルバックは、IBMの量子クライオスタットの仕様を満たす最先端の希釈冷凍機の構築に取り組んでいます。2025年後半に、IBMの量子データセンターでULVACクライオスタットを試験する予定です。
株式会社アルバックの代表取締役社長である岩下節夫氏は、次のように述べています。
「IBMは量子コンピューティングの進歩をリードしており、アルバックは真空および極低温技術の専門知識でこの取り組みをサポートできることを誇りに思っています。最先端の極低温ソリューションを提供することで、IBMの量子コンピューティング・エコシステムを強化し、スケーラブルな量子インフラストラクチャーを実現することに尽力します」
量子産業に参入する日本のサプライヤーが増えています。極低温配線技術や超伝導配線技術から、高密度のコネクタ、より大きな量子チップに対応するための大面積の積層板に至るまで、さまざまな分野で目覚ましい成果をあげています。大規模半導体パッケージの重要なサプライヤーである京セラは、現在、その専門知識を量子アプリケーションに活用しています。電子機器メーカーであるフジクラと電子計測技術の会社であるキーコムは、超電導材料の専門知識を活かして、次世代の超高密度極低温ケーブルを開発しています。I-PEXはコネクタ技術を構築し、量子コンピューターの極低温環境での動作を評価しています。
これは世界の量子コンピューティングの未来であり、量子の最も困難なエンジニアリング問題に取り組むために専門知識を提供する企業のグローバルなエコシステムです。IBMは、東京大学との共同の取り組みを通じて、このテクノロジーを拡大しています。拡大を続ける量子ユーザーは、実際の問題を解決するためにそれをどのように適用するかを考えています。東京大学のリーダーシップと量子に対する日本政府の投資により、日本の量子エコシステムは急速に成長し、日本の産業界はその取り組みの成果を実感し始めています。この日本モデルが、世界の他の国々が見習うべき模範となることを願っています 。
当報道資料は、2025年3月11日(現地時間)にIBM Corporationが発表したブログの抄訳をもとにしています。原文はこちらをご参照ください。
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- グローバルな量子エコシステムの成長 – IBMは、量子コンピューターを構築するだけでなく、量子コンピューティング業界の基盤を築くために日本を含むグローバルで協業
グローバルな量子エコシステムの成長 – IBMは、量子コンピューターを構築するだけでなく、量子コンピューティング業界の基盤を築くために日本を含むグローバルで協業
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