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(東京、2025年7月31日)日本製鉄が風力発電機の大手ベスタス(デンマーク)と協力覚書[1]を締結した。これは低排出鋼材の需要を促進させる大きな機会だ。一方で、長期的に真のネットゼロへの移行につながるのかどうかは疑問が残る。
日本製鉄は、組織内の排出削減実績を任意の鋼材(実際の排出削減とは異なる生産ライン)に割り当て、証書として付加することを可能にする、いわゆる「マスバランス方式」の製品を供給する計画である。同社は「NSCarbolex」のブランドに本方式を採用しており、この製品は石炭由来の鋼材に対し低排出あるいはゼロエミッションという誤解を与えるとして、国内外の市民社会団体から批判を受けている[2]。
スティールウォッチのアジア担当、ロジャー・スミスは次のように述べている。
「ベスタスは再生可能エネルギー分野の世界的リーダーであり、自社の風力タービン製造用にグリーン鋼材を調達することは鉄鋼業界の脱炭素化を後押しする可能性がある。そのためには、実際に低排出技術で生産された鋼材を選択する必要がある。ベスタスはすでに欧州の顧客に対し、低排出鋼材を使用した風力タービンを提供している[3]。この鋼材はアルセロール・ミッタル社により、スクラップ鉄100%を鉄源とし、風力発電100%で稼働する電炉で生産されている」
「ベスタスには、帳簿上の削減にとどまる製品にお墨付きを与えるのではなく、実際に低排出な技術によって生産された鋼材を求めることで、鉄鋼メーカーの低排出技術への投資を後押しする役割を期待する。日本製鉄のNSCarbolexは、現状では石炭由来の鋼材でありグリーンとはいえない。」[4]
以上
メディア問い合わせ先:
ロジャー・スミス(アジア担当)
media@steelwatch.org
松本志織(アジアコミュニケーション・リサーチ担当)
shiori@steelwatch.org, (+34 613 869508)
参考:
[1] 日本製鉄「ベスタス社と、国内風力発電プロジェクトの円滑な実行と、 国内外の風力発電市場におけるサプライチェーン強化を目的として覚書を締結」2025年7月30日
[2] スティールウォッチ「日本鉄鋼連盟が推進する低排出鋼材、世界基準と乖離:国内外の市民団体が反対声明」2025年6月5日
[3] アルセロール・ミッタル「Vestas introduces ArcelorMittal’s low carbon-emissions steel offering for wind turbines」2024年1月16日
[4] 日本製鉄の東日本製鉄所君津地区および九州製鉄所大分地区からの鋼材供給に関する協業を進めている。君津地区には第2高炉(年産能力410万t)と第4高炉(同510万t)の2基、大分地区にも第1高炉(同530万t)と第2高炉(同530万t)の2基がある(年産能力は、Global Energy Monitor(2024年4月)に基づく)。