4月27日から日本で発売が開始された、フォルクスワーゲンの新型『up!』。フォルクスワーゲンのラインナップ車種の中で史上最小の車ですが、そのプロモーションサイト『Pack up!』で、史上最強のだまし絵動画と銘打った『up!-size』を公開しました。
フォルクスワーゲンで一番小さいup!ですが、「小さいから、面白い」というメッセージを込めて、遠近法やだまし絵など、いわゆる特撮のテクニックを駆使した映像となっています。このトリック映像には、ジオラマ職人の情景師・アラーキーさんが制作したジオラマも登場しています。「小さいから、面白い」というコンセプトは、かつてフォルクスワーゲンがアメリカに進出した際、大きなアメリカ車に較べてコンパクトだったビートル(タイプI)の大きさを逆手にとって「Think small.」という広告キャンペーンを行ったことを思い出しますね。
この動画公開に先立ち、ツイッター(@VW_JPN)では「映像に隠されたトリックを見抜けますか?」としたクイズ形式のツイートを投稿。海沿いの街で、黄色いup!の横に立った女性の画像ですが、どこがトリックなんでしょうか。
動画を見ていくと、いきなり上から大きな手が登場。ここで特撮映画で使われる「遠近感トリック」が明らかになります。そして次々とトリックの舞台装置を撤去していきます。女性の横にある銅像、女性の方はパントマイマーだったんですね。
画面の奥に男性が現れ、女性とともにup!に乗り込んで走り出します……と、up!が巨大化!実は前景にあった建物は、情景師・アラーキーさんが制作したジオラマだったんですね。
このメイキング映像も公開されていますが、ジオラマと車の大きさを元に、互いの距離と撮影アングルを綿密に計算する撮影準備がすごいですね。日本の伝統であるミニチュア特撮のテクニックが披露されています。ミニチュアをより本物らしく見せるには、鑑賞者の視点が重要。つまり、そのスケールに応じた人間の目線と同じ高さ(低さ)にカメラを据えることで、映像のリアル感と説得力が出てくるんですね。そして、互いの距離が離れているために指の動きとそれに対応する演者の動きがうまく合わず、悪戦苦闘する場面も。モニターを見ながらお芝居できればいいんですが、それは無理ですものね。さらに情景師アラーキーさんのインタビュー動画も公開されており、アラーキーさんによるジオラマの話が聞けます。
「小さくて凝縮された世界を、みんなやっぱり『どうやって再現したんだろう』って、そこがすごく気になる。人は知りたくなる。で知った時に、ヒザを叩きたくなる。で、今度知った知識を教えたくなる……っていうところの循環が、作り手である私と、鑑賞する側がお互いに『セッション』している感じ」
確かに、作り込まれた細部を見てしまう魅力が、ミニチュアジオラマにありますね。作り手と鑑賞者が互いに響きあう関係にあるというのもよく解ります。
わずか1分あまりの映像に込められた、凝縮されたテクニック。ぜひ一度ご覧になってみてください。
(咲村珠樹 / 画像提供・フォルクスワーゲン グループ ジャパン 株式会社)