おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

え?これ痛車?「わかるひとだけにわかる痛車」が話題

 車の車体部分に、漫画やアニメ・ゲームで登場するキャラクターやロゴのステッカーを貼ったり塗装を施した「痛車」。普通はこれとわかるキャラクターがでかでか描かれ一瞬で「痛車」と分かるものなのですが、一般車両と見分けのつかないデザインを施した「痛車」がこのごろ、ネット上で話題になっていました。

  •  普段は舞台関係の仕事をされているという投稿者の綾小路 紅麿さん(以下綾小路さん)が制作したのは人気アニメ「機動警察パトレイバー」にて、主人公の一人である篠原遊馬(あすま)の父親が経営するメーカー「篠原重工」の社用車。

     ちなみにパトレイバーとは、1988年に公開された押井守監督によるOVAアニメ作品と、ゆうきまさみさんのマンガ作品(小学館発行「週刊少年サンデー」で連載)を皮切りに、映画・小説・ゲーム・実写など今でいうメディアミックスの先駆けとなった作品。先日には1989年に公開された劇場版第1作「機動警察パトレイバー the Movie」の4DX公開でも話題となり、現実とリンクしたリアル感のある描写は多くのファンを虜にしました。

     綾小路さんも、そんなリアル感のある描写に惹かれてリアルタイムで視聴していた世代。しかしこれは私の偏見かもしれませんが、痛車選びであえてパトレイバーに登場した社用車を選ぶのは少々意外なチョイスです。今回その理由を綾小路さんにお聞きしました。

     「元々痛車の祭典である痛Gふぇすたというのがありまして、2009年の第1回から参加していたんですが最初は皆さんが連想されるような”萌え感”のある車両で参戦したんです。ただ会場でただひたすらに文字だけが刻まれたトラックの痛車を見かけまして。それが凄く印象的でこういうのも楽しいんじゃないかなと感じたのがきっかけです」
     ※痛Gふぇすたとは2009年から2016年までに開催された芸文社発行「痛車グラフィックス」(現在は休刊)主催の痛車展示イベントのこと。

     確かにデコトラも中には文字圧のインパクトが強烈なタイプもありますし、痛車に転用するのも別段不思議ではない話。そんなわけで綾小路さんが当時運転していたダイハツ ミラがちょうど車種としてもピッタリだったので、これを改造してイベントにも参加されたそう。


     え?ちょっと話がおかしくないかって?

     そう、実は綾小路さんが制作した篠原重工社用車は2台あり、今回話題になったのは2代目。2010年のイベントにミラで参戦したのが元祖篠原重工社用車なんです。

     そして月日は流れ、綾小路さんも様々な痛車を制作しつつ、もう一つの趣味であるコスプレ活動に勤しんでいたわけですが、ある時またあの篠原重工の痛車を作ろうと思い立ったのが2019年。

     「まずは車種の選定もしっかりと行って、デザインも普段見かける企業の社用車を観察しながら作りました」

     そんな中で誕生した“2代目篠原重工社用車”。車種はダイハツ ハイゼットを選択し、初代よりも細部のディテールに拘ったとのことで、後方部分には作品にて登場しているキャラクターの名前を刻印しつつも、現代風に合わせて安全運転ステッカーも合わせて貼付しているという徹底ぶり。ちなみにこちらのデザインは自らフォトショップでデザインしたのち、プリントは看板屋さんに依頼したものの、貼り付けはご自身でされたそうです。パトレイバーという作品を知らなければ、篠原重工業株式会社という会社のなんてことない普通の社用車にしか見えません。

     この「わかるひとだけにわかる痛車」の醍醐味がいいんですと答えてくれた綾小路さん。そのねらいも語ってもらいました。

     「私もパトレイバーを見ていたので、ついつい細かいところを盛り込もうとしがちなんですが、でもそれだとパトレイバーファン向けだけのものになってしまうんです。いかに街中で自然に溶け込めるかということを意識した結果あのような作りになりました」

     ナンバープレートに関しても希望したナンバーにせず、あくまでひとりの痛車作りとしてこのデザインを選んだのとのこと。といいつつも車両通行証やオリジナル社員証をちゃっかり製作している綾小路さんのパトレイバー愛もとても深く感じるのは気のせいでしょうか。

     ちなみにこの社用車ですが、実は2019年1月にもTwitterにて投稿したところ、1万を超えるいいねの反応があり大きな反響を呼びました。約1年半が経った今回改めてクローズアップされたことで何か変化があったのか聞いてみると、

     「何もないですよ(笑)でも走行中に手を振ってもらったり、信号待ちをしているときに横断している方からサムアップポーズをしてもらったことはあったかな(笑)」

     この記事をお読みになった皆様、もしこちらの”コンディショングリーン”な社用車を見かけられましたらよろしければお手を振ってくださいませ。

    <記事化協力>
    綾小路 紅麿さん(@ayanokohji)

    (向山純平)

    あわせて読みたい関連記事
  • 「お台場痛車天国2025」開催!約1000台の痛車とコスプレイヤーが集結(画像提供:痛車天国プロジェクト事務局)
    アニメ/マンガ, イベント・キャンペーン

    「お台場痛車天国2025」開催!約1000台の痛車とコスプレイヤーが集結

  • 「Yupiteru presents 静岡痛車天国2023」
    イベント・キャンペーン, 経済

    痛車130台とコスプレイヤーが集う!海辺の祭典「Yupiteru present…

  • パトレイバーのレイバーキャリアが初のキット化
    アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    「機動警察パトレイバー」のレイバーキャリア グッスマから初のプラキット化

  • 同室のウマ娘名で管理される「ウマ」(とーまさん提供)
    インターネット, おもしろ

    ペアの組み合わせも間違えない!ウマ娘の「ウマ」がクルマ整備に活躍

  • ニュース・話題

    まんが家ゆうきまさみが語る「オタク」の興味の掘り下げ方に共感続々

  • アニメ/マンガ, 放送・配信

    『機動警察パトレイバーREBOOT』期間限定配信 8分32秒の映像

  • 企業・サービス, 経済

    代車も痛車の「痛車検」、名古屋の美ッ冨士自動車が開始

  • アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    パトレイバー・篠原重工の支給品ウインドブレーカー登場

  • イベント・キャンペーン, 経済

    名古屋モーターショーで『痛レンタカー』お披露目!オリジナルキャラは二次創作OK

  • コラム・レビュー

    【うちの本棚】番外編/THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都…

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 介護未経験者全体の72.9%が将来に向けて「特に何も準備していない」
    社会, 経済

    仕事と介護の両立に不安85% ダスキンが「介護白書2025」で実態調査

  • プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

  • 美食祭 in 日本橋三越
    TV・ドラマ, エンタメ

    高見沢俊彦の“美しいメシ”100回記念 日本橋三越で初の美食祭

  • なか卯が“ウニの二大メニュー” 雲丹おろしうどんとウニ丼を9月17日から販売
    商品・物販, 経済

    なか卯が“ウニの二大メニュー” 雲丹おろしうどんとウニ丼を9月17日から販売

  • 掃除機「自動お手入れ機能」篇(15秒)
    商品・物販, 経済

    反町隆史、東芝新CMで料理や掃除に挑戦 家庭的な素顔ものぞかせる

  • 音楽劇「謎解きはディナーのあとで」(撮影:阿部章仁)
    エンタメ, 舞台

    上田竜也が毒舌執事に挑む 玉井詩織&橋本良亮と共演「謎解きはディナーのあとで」開…

  • トピックス

    1. 偽ファッション広告

      偽ファッション広告がGoogle広告に大量出現 サポート詐欺被害に注意

      2025年9月上旬からGoogle広告に偽ファッションサイトが急増。数秒で「Windows Defe…
    2. 邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くなった

      邪悪なAI搭載「絶対にバズるSNS」で理不尽な炎上を疑似体験→リアルすぎて怖くなった

      Webコンテンツ「絶対にバズるSNS」が9月15日公開。9月26日公開映画「俺ではない炎上」と連動し…
    3. 26年前のMMORPG「Dark Ages」、YouTuberの挑戦で限界集落から奇跡の再生

      26年前のMMORPG「Dark Ages」、YouTuberの挑戦で限界集落から奇跡の再生

      26年前にリリースされたMMORPG「Dark Ages」をご存じでしょうか。年月とともに人口は減少…

    編集部おすすめ

    1. 英国伝統のうなぎ料理は“水槽の味”?日本にはない「ゼリー寄せ」の衝撃

      英国伝統のうなぎ料理は“水槽の味”?日本にはない「ゼリー寄せ」の衝撃

      日本でうなぎといえば、甘いタレをつけて香ばしく焼き上げた「蒲焼き」が定番のスタイル。白焼きなどもあるにはありますが、うなぎといえばやっぱり蒲…
    2. たこばさんの「糸こんにゃく炒飯」

      えっ…これ糸こんにゃく!?目も舌も騙される“ヘルシー炒飯”を実際に作ってみた

      「糸こんにゃくで作った炒飯が本物そっくりに仕上がる」と聞いたら、信じられるでしょうか。大阪市のたこ焼き店「たこ焼たこば」の店主がSNSに投稿…
    3. 虎ノ門ヒルズの「どこか奇妙な職業体験」が話題 ゴミを拾いながら物語の世界へ没入

      虎ノ門ヒルズの「どこか奇妙な職業体験」が話題 ゴミを拾いながら物語の世界へ没入

      虎ノ門ヒルズで清掃員の仕事を疑似体験しながら、非日常な体験に巻き込まれていく……そんな不思議な没入型体験イベント「どこか奇妙な職業体験 虎ノ…
    4. あれー?どこかなー?伸びしろしかない3歳児の“全力”かくれんぼが手強すぎる!

      あれー?どこかなー?伸びしろしかない3歳児の“全力”かくれんぼが手強すぎる!

      子どもにとってかくれんぼは、ハラハラドキドキのスリリングな遊び。自分だけにしか分からないであろう隠れ場所を見つけて「ここなら大丈夫」「絶対見…
    5. プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

      プリキュア映画ぬりえコンテスト、第三者による不正応募判明 公式が謝罪と訂正

      アニメ映画「映画キミとアイドルプリキュア♪ お待たせ!キミに届けるキラッキライブ!」公式は9月12日、「キミプリ♪ぬりえコンテスト」において…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト