新書や文庫といったシリーズでは、統一感を出すためにカバーが共通の装丁となっています。普段から新書をよく読んでいる人なら「あれだ!」と気づくカラーパターンを並べた画像が、Twitterで話題となっています。

 この「わかる人にはわかる画像作ってみた」というツイートと、カラーパターンの画像を投稿したのは、市川さん(@sakura1945815)。自称戦史研究家、骨董品収集家であると同時に、もちろん読書家でもあります。

 並んでいるのは、縦長のカラーパターンが8つ。実はこれ、各出版社から刊行されている新書のカバーに使われている装丁なんです。

 画像の上段左から右へ、文春新書(文芸春秋社)、中公新書(中央公論新社)、岩波新書(岩波書店)、ちくま新書(筑摩書房)。下段は同じく左から右へ、新潮新書(新潮社)、角川新書(KADOKAWA)、集英社新書(集英社)、講談社現代新書(講談社)で、前面にイラストや写真などが使われていない、標準的な装丁で使用されているパターンです。

 このうち、岩波新書の場合、初版の刊行時期によって使用される色が異なる場合があります。このイラストで表現された岩波新書の赤は、現在初版が刊行されている「新赤版」と呼ばれるもの。

 イラストに取り上げた8つの新書は、いずれも市川さんが手に取って購入する機会の多いものだとのこと。特に日本の近現代史についての基礎知識を求めて新書を購入することが多いそうで、岩波新書、中公新書、文春新書、講談社現代新書が書棚に占める割合が大きく、次いで新潮新書、角川新書、集英社新書、ちくま新書の4つという感じだと語ってくれました。

 このツイートには、新書のTwitter公式アカウントも反応。中公新書公式アカウント(@chukoshinsho)はすぐ分かったようで「仲間たちの集合写真的な何かですね」と引用リツイート。

 これを見た、平凡社新書を刊行している平凡社の公式Twitterアカウントは「うちは仲間外れですか…」と、中公新書公式アカウントの投稿を引用リツイート。さらに市川さんのイラストを参考に、平凡社新書のカバーデザインを加えて「むしゃくしゃしたのでやってやった。後悔はしていない」と自分を慰めるかのようなツイートもしています。

 ほかにも光文社新書公式アカウント、講談社の科学系新書である講談社ブルーバックス公式アカウント、そしてヤマケイ新書を刊行する山と渓谷社いきもの部公式アカウントも反応。イラストに入っていないことを嘆く流れができあがりました。

 思わぬ反応に、市川さんは「公式アカウントからも反応が来るとは全く予想していませんでした。これには驚きましたが、その一方で自分も様々な新書の存在を知り、かつ購入するときの選択肢を増やすことができよかったかなと思います」とコメント。その後光文社新書(光文社)、平凡社新書(平凡社)、双葉新書(双葉社)などを加えた増補版も投稿しました。

 今回、新書のカバーデザインをイラスト化してみて、市川さんは「これだけ抽象化したイラストであっても、どの出版社のものかわかる方が多くいたことには驚きました。各出版社はそれぞれ、特徴となり得る独自のデザインを表紙に用いたのでしょう」と、イラストがどの新書であるか即答した人の多さに驚いた様子。それだけ新書ファンが多いということなのでしょうね。

 新書の装丁は、特に書店で平積みされた際に、他社のシリーズと見分けがつくよう目立ちながら、書名を邪魔しないようなデザインと色使いを考えられたもの。普段何気なく手に取っている新書ですが、今回のイラストで元ネタが分かる人が多かった、ということは、出版社が装丁に込めた意図が伝わっているという証明なのかもしれません。

<記事化協力>
市川さん(@sakura1945815)

(咲村珠樹)