新型コロナウイルス禍の影響で外出機会が減り、運動不足で気づけば体重が増えてしまった……という人も増えたのではないかと思われる2020年。ダイエットはなかなか大変なものですが、それは犬の場合も同じかもしれません。オーストラリア陸軍のとある部隊にいるマスコット犬が、1年がかりで10kgのダイエットに成功しました。

 ダイエットに挑戦していたのは、オーストラリア陸軍第3旅団・第3戦闘支援大隊のマスコット犬、トビー・テビアス(Toby Tebiass)伍長。2014年から部隊のマスコットとして、所属兵たちを癒やしてきました。名前は第3戦闘支援大隊が派遣された東チモール(East Timor)、ブーゲンビル島(Bougainville)、イラク(Iraq)、アフガニスタン(Afganistan)、ソロモン諸島(Solomon Islands)、ソマリア(Somalia)の頭文字「TBIASS」に由来しています。

 テビアス伍長の世話を担当するハンドラー、ジョシュア・マクファーレン伍長によると「基地の『ワピティ・カフェ』に行けば、トビーが大隊所属の兵たちから、食事の分け前をもらっている様子を見ることができました。結果として、大隊のみんながトビーに少しずつエサやりをしていることになり、誰もトビーがどれだけ食べているかを把握できていなかったのです」と、普段の様子を語っています。

 1人からもらう量は少しでも、それが100人をゆうに超える大隊規模となれば話は別です。テビアス伍長が大隊のみんなから愛されていることの証として、その体重は着実に増えていき……最終的に30kgに達してしまったといいます。

 ハンドラーのマクファーレン伍長によると「これは、年齢を考慮した適正体重から10kgほどオーバーした数値です。若いうちから脚が関節炎になっていたのは、その超過した体重による関節への負担増が原因でした」とのこと。

 2020年初め、大隊のキンバリー・キーリー連隊先任軍曹(1等准尉)は新たに2名のハンドラーを任命し、基地の外における運動の増加や、獣医による定期的な検診を指示。トビー・テビアス伍長の体重減少を助けるため、栄養バランスを考えた食事をさせるといった、より厳格な健康管理プログラムを策定しました。

 マクファーレン伍長によると、以前は部隊内にとどまり、基地の外へ出る機会は基本的になかったとのこと。「今年は、より一般的な家庭のペットと同じような経験をさせました。ハンドラーの自宅へ連れ帰ったり、ほかの犬たちと一緒の時間を過ごしたり。ビーチへ連れて行ったこともあります」と、テビアス伍長の変化した日常を説明してくれました。

 およそ1年にわたるテビアス伍長の減量作戦。新しい生活パターンが功を奏し、見事10kgの減量に成功したそうです。

 マクファーレン伍長は「今の方が幸せそうに見えます」と、テビアス伍長の様子を伝えています。「彼は我々の部隊で非常に大きな位置を占めています。戦没者慰霊のイベントや誕生日のお祝い、そして街頭でのパレードなど、我々の部隊活動に関与しているんです。いつも人々をその鳴き声で迎え、元気付けてくれる気さくで思いやりのある犬です」

 新型コロナウイルス対策に駆り出された2020年を振り返り、マクファーレン伍長は「部隊から多くの兵が新型コロナウイルス対処(COVID-19アシスト作戦)に派遣されましたが、基地には作戦に参加できない兵もいるので、彼らを元気付けるため、テビアス伍長は活躍してくれました。トビーは笑顔で仕事に取り組み、それを続ける姿勢を示してくれています」と、テビアス伍長が果たした役割を語ります。

 現在、第3戦闘支援大隊でトビー・テビアス伍長の世話をしているハンドラーは、マクファーレン伍長のほか、モーガン・ヒギンス伍長、スティーブン・ソープ兵卒の計3名。これからも、テビアス伍長は部隊の兵士たちを癒やし、良きマスコットして活動を続けてくれそうです。

<出典・引用>
オーストラリア国防省 ニュースリリース
Image:Commonwealth of Australia 2020

(咲村珠樹)