数多のWebサイトが存在するインターネットの海には、個性的なコンセプトを持ちながらも、ひっそりと運用されているサイトが存在します。今回紹介する「翻訳困難」もそのひとつ。
その名の通り「外国語に翻訳するのが難しい、あるいは翻訳してしまうとつまらなくなってしまうような文章」が書き記される中、ひときわ異彩を放っているのが「夢の中に出てきた奇妙な単語達」をまとめた項目。実に興味深い……!
サイトの説明によると、管理人さんが夢の中で見聞きした単語のうち、辞書を調べても載っていないものを随時記録しているのだそう。
見出しは「1900年代の夢に出てきた奇妙な単語達」から始まり、もちろん直近でも更新。年ごとに20~40単語ほどが収録され、夢の中のシチュエーションも詳細に記載されているなど、その内容も決して薄くありません。
ひとつひとつを丁寧に読んでいると、一日が終わってしまうくらいのボリュームを誇るサイトですが、見れば見るほど深まる謎。なぜ夢の中に出てきた奇妙な単語を記録し続けているのか……インタビューしてみたい。
気になったので、サイトの情報を元に連絡を行ってみると……なんとコンタクトを取ることに成功。せっかくなので、いろいろ質問してみることにしました。
なお、インタビューにあたり、管理人自身については「あくまで正体不明の人物としてほしい」という要望があったため、質問は行っていません
■ 「夢の中に出てきた奇妙な単語達」のこと 色々聞いてみた
―― この度はお忙しい中、インタビューにご協力いただき誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いします。
ネットの隅っこでひっそりとやっているつぶやきサイトですから、記事にはなりにくいと思いますが、質問にお答えするくらいならできると思います。よろしくお願いします。
―― 単語は1900年代から収録されていますが、サイトの運営自体はいつ頃から始められたのでしょうか?また、その経緯やきっかけについて詳細をお聞かせください。
サイトを開設したのは2000年前後だったと思います。集合住宅に引っ越したら、常時接続、料金定額、サイト開設サービス付きのインターネットプロバイダが利用可能だったので、それならばと始めた記憶があります。
―― 思い立ったが吉日ですね。私個人としては、夢に出てきた言葉どころか、どんな夢を見たかもなかなか覚えていないのですが、何かそのためのコツなどあるのでしょうか?
そうですね。夢の内容なんて大抵すぐに忘れてしまうので、インパクトのある言葉が出てきたら急いでメモを取るようにしています。枕元にメモの用意を忘れた時は、夢に出てきた言葉を口の中でぶつぶつ繰り返しながら紙と鉛筆を取り出す事もあります。
―― そんな陰の努力もあり、収録されている単語は、たしかにどれも聞き覚えがなくユニークなものばかりです。特に印象に残っている単語があれば、その理由と共にお聞かせください。
うーん、どうでしょうね。個人的には文章編の最古参である「ベンジャミンの花が咲くとき、黄金の風が吹く」かもしれません。この文が夢に登場したのがきっかけで、夢の中に出てきた言葉の記録を取るようになりました。
あと、過去にいただいたメールによると、2017年の「ギリヤント記算方式」などは比較的読者受けが良かったようです。
※「ベンジャミンの花が咲くとき、黄金の風が吹く」……1900年代の文章編に収録。森の中を歩いていると、前方に人の姿が見えた。 ゆっくりと振り返ったその人は、自分自身だった。その「前に立っていた自分」が「後からやってきた自分」に言った言葉。
※「ギリヤント記算方式」……2017年の日本語編に収録。意味不明。単語が聞こえてきた直後、目覚し時計のスヌーズ機能で夢は中断された。
―― 聞けば聞くほどわけが分からなくて大好きです。直近でも単語を追加しており、今後も都度更新を行っていくと思いますが、もしも今後の展望などございましたらお聞かせください。
それはまったくわかりません。何しろ夢まかせですので、努力してどうなるものでもありませんし、もしかしたらもう変な単語が出てこなくなる可能性だってゼロではありません。意識して更新できるのは「夢」以外のページですね。ほとんど反応を頂くことはありませんけど。(笑)
―― 先の更新が確約されていない状況だからこそ、意外性のある言葉が生まれるのかもしれませんね。今後も単語の追加を楽しみにしています。ありがとうございました。
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コンタクトを取るまでは、どんな変わり者が運用しているのかと不安もありましたが、丁寧に受け答えをしてくれる真面目な性格の人物でした。20年以上も夢に出てきた単語を記録することは、相当な根気がなければ続けられることではないでしょう。
パッと見では奇特な単語も、意味を読むことで新たな気付きを得たり、困りごとを解決するヒントが見つかるかもしれません。刺さる人には刺さるシュールな世界観を、ぜひ覗いてみてはいかがでしょうか。
<記事化協力>
Webサイト「翻訳困難」管理人さん
<引用>
「夢の中に出てきた奇妙な単語達」
(山口弘剛)