以前からYouTubeのショート動画に挟まれる動画広告で気になっていたものがあります。「バンバンサバイバー」というゲームの広告です。
広告の中には明らかに「NARUTO」や「ONE PIECE」のキャラクターによく似たキャラクター、技が登場しているのです。しかしタイトルは違いますし、コラボキャンペーンなどでもなさそう。一体これはどういうことなのでしょうか。実際のゲームがどうなっているのかを、プレイして探ってみました。
■ 運営会社は羽振りがよさげな中国企業
「バンバンサバイバー(英語名:BangBang Survivor)」は、台湾・香港・マカオ・韓国・日本でモバイルゲームなどを展開しているパブリッシャー、「SPGame Co., Limited(通称:SPGame)」が2024年5月9日にリリースしたアプリ。といっても、「SPGame」という会社自体が日本ではあまり知られていないため、少し調べてみました。
日本のリリース配信サービス「PR TIMES」の登録情報によると、SPGameの所在は「Hong Kong(香港)」となっていましたが、“運営会社自体”は中国本土の企業でした。
中国の求人サイト「BOSS直聘」の登録情報および、中国の海外進出企業支援プラットフォーム「快出海」の登録データを確認すると、「SPGame(中国語表記:露珠游戏)」は表に掲げるブランド名(屋号)らしく、実際の社名は「広州露珠信息科技有限公司(所在:中国広州市天河区)」。
そして「バンバンサバイバー」自体は、「海南盛昌网絡科技有限公司(所在:中国海南省城米県)」が開発した、「ゾンビを撃て(原題:向僵尸开炮)」がオリジナル。「バンバンサバイバー」は海外向けにアレンジされた作品という位置づけです。
パブリッシャーから開発会社までの説明は、やや複雑なことになっていますが、SPGameの企業情報を調べた限り、しっかり運営実態もあり、怪しい会社では決してありません。
ただし、個人的には気になる点も。求人情報に掲載されている写真が、いずれもバブリィさをにおわせるものばかりでした。社内で行われた豪華パーティーや食事会のようす、新年会のクジ引き大会に出された豪華景品の写真、他にもずらっと並んだGUCCIの紙袋など……。
なぜこんなに羽振りのよさを見せつけているのかは不明ですが、社内で飼われているらしき猫2匹はとても可愛い子たちです。
■ どう見てもこれは……「バンバンサバイバー」の広告に登場するパクリ要素
さて、いよいよ本題。問題の動画広告はYouTubeで展開されているもの。動画内にはどう見ても「NARUTO」に登場する暁の衣装をまとっているキャラクターがいたり……。
漫画「NARUTO」本編と思われる画像が使用されています。
スキル使用画面では「万華鏡の眼」という「万華鏡写輪眼」のジェネリック版みたいな技が出てきています。直接「万華鏡写輪眼」と表現しないあたりがいやらしいですね。
パクリ疑惑のネタは「NARUTO」だけではありません。「傭兵を選択」という画面には誰が見ても「ONE PIECE」のルフィだと思う「帽子の少年」が描かれています。
左右にいるソフトモヒカンの「ショットガンナー」や青髪ショートの「ヒルダ」というキャラクターも、もしかすると既存作品のキャラクターなのかもしれませんが、筆者は存じ上げませんでした。
また別のスキルとして「ゴムハンマー」なるものも広告動画には登場しています。
“ゴム”はもう完全にルフィを意識していますね。しかしカットインで登場しているキャラクターのイラストはなぜかバーソロミュー・くま。せめてルフィであってくれ。いや、それはそれでダメなんだけど。
■ 実際にゲーム本編をプレイしてみるが……あれ、パクリ要素は?
広告動画だけでツッコミどころ満載なのに、実際にゲームをプレイしたらどうなるんだろう……と戦々恐々しながらApp Storeでゲームをダウンロードして始めてみます。
ゲームジャンルとしてはタワーディフェンス系。一定時間経過で発動できるスキルを駆使しながら、自陣を守るというものです。
ただしスキルの発動はシステム側が自動で行ってくれるため、ゲーム中はほとんど放置でOK。プレイヤーの操作が必要になるのは「どのスキルを強化するか」という選択フェーズのみ。
一応プレイヤーキャラクターの操作もできますが、動かし勝手が悪い上に、基本的には自動で最適な挙動をしてくれるので必要ありません。
9割自動のゲーム画面を1割手動で操って、自陣のHPが0になる前に画面上部からやってくるゾンビの群れを撃退できたらゲームクリアです。
ゲーム中はほとんどやることがないですが、完全放置もできないので、基本的にはゾンビよりも眠気との戦いの方が辛いです。プレイしながら何度スマホを手から落としたことか。
最近のゲームの動画広告にありがちな「広告のプレイ画面」と「実際のプレイ画面」が全く違う、という類のゲームではなさそうです。広告と実際のプレイ画面はほとんど同じです。
ほとんど、という言葉がキモです。細かな演出や構成は違います。たとえばスキル発動時のカットインは存在しません。「ゴムハンマー」を打つバーソロミュー・くまは幻です。幻なら幻のままの方がよいですが。
さて本題のパクリ疑惑についてです。
ゲーム画面は大きく「ショップ」「キャラクター」「戦闘」「コア」「基地」の5つに分かれています。
「ショップ」画面では「宝箱」と呼ばれるガチャを回すことができます。
「キャラクター」画面ではプレイヤーキャラクターのカスタマイズや強化ができます。
「戦闘」画面ではメインとなるタワーディフェンスゲームで遊ぶことができます。
「コア」画面ではサポートキャラクターのカスタマイズや強化ができます。
「基地」画面ではプレイヤーランキングや、倒したゾンビの図鑑を閲覧することができます。
いずれの画面でも始めた段階では、広告にあったようなパクリ要素はありません。いたって普通のソーシャルゲームです。
しばらくメインゲームをこなしてレベルを上げていきますが、いつまで経っても「NARUTO」や「ONE PIECE」の要素は登場してきません。
■ 広告の内容やパクリ疑惑についてサポートに問い合わせてみた結果
焦れったくなったのでゲーム内からサポートに問い合わせてみました。
するとサポートからの返答は「そちらのスキルはまだ実装されていません。今後のアップデートをお楽しみください」とのことでした。
ある程度予想できていた返答ではありましたがこのまま「わかりました」と引き下がるのはもったいないです。続けて「なぜ未実装のスキルが広告動画に出ているのですか?」と聞いてみました。
しかし向こうからの返答は「申し訳ございません」という謝罪のみでした。さらに「今後私のようなユーザーを生まないためにも、公式としてアナウンスをする必要があるかと思うのですが、ご対応いただけますでしょうか?」と追加で聞いてみたところ「ご意見は運営を担当するチームに伝えました。検討させていただきます」とだけ返ってきました。
検討せずに即実行でお願いしたいですが、おそらく同じところを突き続けてもはぐらかされるだけでしょう。今度は別角度から「広告内で使用されている画像は漫画「NARUTO」の本編のコマを使用しているように見えます。これは正式に許諾を得てのものなのでしょうか?」と尋ねてみました。が、本記事執筆時点ではこの質問に対する回答は得られていません。
怪しげな広告が気になってプレイしてみたゲーム「バンバンサバイバー」は、ゲーム内には広告に登場したパクリ要素はありませんでした。正確には“未実装”の要素であるようです。
ですのでこのゲームの広告を見て気になった方がいたとしたら、少しプレイするのを待った方がよいかもしれません。「帽子の少年」や「万華鏡の眼」が実装されたら、私もまたプレイを再開してみたいと思います。
実装されることがあれば、ですが。
<参考・引用>
SPGame公式サイト(sp-games)
SPGame 2024年5月9日配信プレスリリース(PR TIMES)
BOSS直聘「SPGame/露珠游戏(広州露珠信息科技有限公司)」
快出海「SPGame/露珠游戏(広州露珠信息科技有限公司)」
中国ネットメディア・36kr.com 2024年5月28日公開記事
※本文掲載の画像は特に記載が無い限り、「バンバンサバイバー」ゲーム内および関連ページのスクリーンショットです。
(ヨシクラミク/宮崎美和子)