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南ダルフール州のコレラ治療センターで治療を受ける人びと=2025年8月10日 (C) Rehab Adam Adam Abaker/MSF
内戦が2年以上続くスーダンにおいて、過去数年で最悪レベルのコレラ流行が人びとを襲っている。保健省が1年前に流行を宣言してから、今年8月11日までに累計9万9700人の疑い例と2470人超の関連死が報告されている。ダルフール地方だけでも、国境なき医師団(MSF)はこの1週間の間に保健省の医療施設で40人の死亡を確認した。
MSFは、迅速な医療提供、水・衛生設備の改善、集団予防接種の開始ができるよう、国際社会による緊急調整メカニズムが必要だと訴える。
水不足と衛生環境の悪化が流行を加速
コレラとは、コレラ菌を原因とする水媒介性の感染症だ。衛生環境が整っておらず、安全な水の供給が行われていない人口密集地域で発生しやすい。感染すると深刻な下痢や嘔吐を引き起こし、治療しなければ数時間で致命的症状に陥ることもある。
ダルフールでは、食器や食べ物を洗うといった基本的な衛生対策すら難しいほどの水不足に陥っていた人びとを、コレラが直撃した。特に深刻なのが北ダルフール州のタウィラで、そこには州都エル・ファシール周辺で続く戦闘から38万人が避難している。
タウィラ病院のコレラ治療センターは、公式病床数130床に対して8月第1週には400人の患者を受け入れ、施設は人であふれかえった。スタッフは床にマットレスを敷いて患者のケアにあたっている。
タウィラでは、人びとは1日平均わずか3リットルの水で生き延びている。世界保健機関(WHO)が定める、飲料、調理、衛生に必要な1人1日7.5リットルの緊急時最低基準値の半分に満たない。コレラ患者が増加し、資源が枯渇するなか、これ以上死者を出さないためには、清潔な水と衛生設備の整備が急務だ。
MSFのプロジェクト・コーディネーター、シルバン・ペニコーはこう語る。
「避難民キャンプでは汚染された水源の水を飲むしかなく、多くの人がコレラに感染しています。2週間前、あるキャンプの井戸から遺体が発見されました。遺体は回収されたものの、人びとは2日後には再びその井戸の水を飲まざるを得なかったのです」
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北ダルフール州・タウィラの避難民キャンプ=2025年5月31日 (C) Stephanie Ngai/MSF
医療施設は限界 浄水剤の不足も深刻に
タウィラから約100キロ離れた中央ダルフール州ゴロでも、7月13日にコレラが確認された。MSFはゴロ病院に73床の治療センターを開設したが、8月3日には137人の患者が運ばれ、施設は限界に達した。周辺には経口補水ポイントが5カ所設けられ、軽症患者の容体管理と悪化防止に努めているが、流行は急速に拡大している。
8月上旬には、中央ダルフール州のザリンゲイとロケロ、北ダルフール州のソルトニにも感染が広がった。大雨による水質汚染や下水道の損傷が危機をさらに悪化させている。南ダルフール州でも患者数は増加しており、MSFは保健省と連携してニヤラの治療センターを80床に拡張した。現地ではワクチンの到着を待つ一方で、深刻な浄水剤不足にも直面している。
ニヤラのオタシュ避難民キャンプに住むサミア・ダハブさんはこう語った。
「診療所は満員です。水がある地域もあれば、ない地域もあります。水は塩辛いことがありますが、沸騰させずに飲んでいます。安全かどうかは分かりません」
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ニヤラのコレラ治療センターで治療を受けるサミアさん=2025年8月10日 (C) Rehab Adam Adam Abaker/MSF
緊急調整メカニズムが必要
戦闘から逃れる人びとの移動に伴い、コレラはスーダン国内のみならず、隣国チャドや南スーダンにも広がっている。南スーダンと接する青ナイル州ダマジンでは、南スーダンからの帰還民に対応するためMSFと保健省がダマジン病院の治療センターを50床から250床に増床した。同センターでは、コレラと栄養失調の複合危機が深刻化しており、8月3日から9日にかけて死亡した6人の患者は急性栄養失調を併発していた。
MSFスーダン活動責任者のトゥナ・トルクメンはこう警鐘を鳴らす。
「状況は緊急というレベルを超えています。流行は避難民キャンプを超え、ダルフール地方内外の複数地域に広がっています。この壊滅的な状況に対して、迅速な医療提供、水・衛生設備の改善、集団予防接種の開始ができるよう、国際社会による流行発生時の緊急調整メカニズムが必要です。
日々命が失われています。MSFは保健省、国連児童基金(ユニセフ)、WHOと連携し、ダルフール全域で集団予防接種を実施する準備が整っています。内戦を生き抜いている人たちの命が、予防可能な病気で奪われてはなりません」