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Jリーグ遠征の裏側を追う 鹿児島発アウェイサポ密着番組がアツい

 今年もシーズンインとなり、間もなく開幕を迎えるJリーグ。サポーター界隈で今、ひそかに、しかし熱烈な支持を集めているYouTubeチャンネルがあります。

 その名も「アウェイサポ、鹿児島でなにしてる?」

  • ■ 「アウェイサポ、鹿児島でなにしてる?」とは?

     運営しているのは、地元のテレビ局である「KTS鹿児島テレビ」。

     「日本一アウェイサポに寄り添うテレビ局」を自称する彼らが、Jリーグの試合のためにはるばる鹿児島を訪れたアウェイサポーターに密着し、「鹿児島までどうやって来たのか?」「試合後はどこに行くのか?」等を調査。サッカー観戦の面白さと、地域の魅力を掘り下げるという新たな切り口の番組です。

     サッカーの番組ですが、試合映像はおろか、選手の出演も一切ありません。主役はあくまで「アウェイサポ」たちなのです。

    YouTube「アウェイサポ、鹿児島でなにしてる?」

     取材が行われるのは、もちろん「鹿児島ユナイテッドFC」のホームゲーム。J2リーグに所属していた2024シーズン途中の開設からおよそ1年半でチャンネル登録者数は5000人を突破し、J3リーグに降格して迎えた2025シーズンの動画は平均1万回再生を超えるなど、ローカル局が行うYouTube企画としては異例の盛り上がりを見せています。

     最大の見どころは、試合後の祝勝会or反省会で語られる、アウェイサポーターひとりひとりのストーリー。「なぜクラブを応援しているのか?」そして「なにがそこまで一人の人間を熱狂させるのか?」インタビューを通して、勝ち負けを超えた「人が人を応援すること」の本質を垣間見ることができます。

     サッカーファンであれば、きっとこの番組コンセプトの面白さに共感することでしょうが、それにしてもなぜテレビ局が、あえて「アウェイサポ」に注目したのか?そして中の人は一体何者なのか?企画・取材・編集をほぼ一人でこなすKTS鹿児島テレビの前田さんに、その舞台裏を聞きました。

    ■ 中の人は「ウイイレ」育ちの元営業マン 「あるある」な入口が親しみやすさを生む

     「アウェイサポ、鹿児島でなにしてる?」の動画を見ると、いずれにおいてもサポーターへのリスペクトと、絶妙な距離感の近さを感じます。さぞやサッカー愛にあふれた人物が作っているのかと思いきや、前田さんの経歴は少々意外なものでした。

    鹿児島を訪れるアウェイサポに密着

    ―― まずは経歴を教えてください。サッカー経験はあるのでしょうか?

     前田さん:「出身は鹿児島県霧島市です。高専、大学を経て映像制作会社に入り、フリーランスを経て2018年にKTSに入社しました。制作部や大阪支社の営業部を経て、2024年から現在の編成開発部にいます。サッカー経験は……高1の時にフットサル同好会に1ヶ月ほど(笑)。部活はずっとソフトテニス部でした」

     なんと意外や意外。サッカー部出身ではありませんでした。しかし、これだけサッカーへの造詣が深いのには理由があります。

     前田さん:「兄の影響で始めたゲーム『ウイニングイレブン』でサッカーにハマったんです。だから世界のサッカーには異常に詳しかったですね。ファン・ニステルローイとかヴィエリとかトレゼゲとか、大型FWが好きでした。そこからJリーグ版が発売されて、当時オシム監督のジェフ(ジェフユナイテッド市原・千葉)でマスターリーグ戦ったり、ゲームきっかけでJリーグにも詳しくなった感じです」

     これはなかなか通好みなチョイス。名作ゲームからサッカー沼にハマるという、多くのサポーターが共感しそうな「あるある」な入り口を持つ前田さんの親しみやすさが、勝っても負けてもノーサイドな番組の空気感を作っているのかもしれません。

    ■ きっかけは中継車で発した何気ない一言 「モニターには映らない物語」に興味を持つように

     番組が立ち上がったのは2024年の6月、現在J2リーグに所属する「ブラウブリッツ秋田」を鹿児島に迎えての試合です。きっかけは、KTSが制作を請け負っているDAZNのJリーグ中継の現場でした。

    きっかけは中継車で発した何気ない一言

    ―― 番組を始めた経緯やきっかけはどのようなものでしょうか?

     前田さん:「2024年の3月、中継車ディレクターとして仕事をした後、モニターをボケーっと眺めていたら、アウェイサポーターが映ったんです。『この人たちって、このあとどこ行くんですかね?』と隣のスタッフに話しかけたら、『それおもしろいね!』と盛り上がって。当時、新しい部署(編成開発部)に異動になって『なにかしなきゃな』と悩んでいた時期でもあったので、企画してみようと思い、2024年6月の秋田戦で初めて取材を行いました」

     試合が終われば中継は終わりますが、サポーターの「遠征」はまだまだ続きます。試合後にサポーター同士で集まって、居酒屋で祝勝会or反省会……モニターには決して映らない、「サポーターひとりひとりの物語」に興味を持ったのが始まりでした。

    ■ 驚きの制作体制 取材はディレクターとカメラマンの2人

     テレビ局の制作番組といえば、大勢のスタッフが動いているイメージがありますが、この番組は極めて少人数で作られています。

    ―― 番組の制作体制について教えてください。

     前田さん:「取材はディレクターとカメラマンの2人体制です。動画編集はほぼ自分が全て行っています。テロップ、BGM、効果音、そしてXの運用も自分です」

    ―― ホームゲームの日はどのようなスケジュールで動いているのでしょうか?

     前田さん:「試合開始の3時間前から白波スタジアム(鹿児島ユナイテッドFCのホームスタジアム)で取材開始です。ひたすらインタビューして密着できる人を探します。逆に試合中はやることがないので、スタジアム近くのガストで、DAZNで試合を見ながらご飯を食べています。試合後、サポーターと連絡を取り合って居酒屋へ……という流れですね」

     なんと取材日ですら2人体制で、まさか中の人がファミレス観戦していようとは!番組制作の苦労が垣間見えます。しかし、編集へのこだわりはプロそのもの。

    ―― 取材後、動画編集~配信までに、どのくらいの時間をかけているのでしょうか?

     前田さん:「動画は“次節まで”にあげるようにしています。それは動画を見て『次の試合行こうかな』と思ってくれる人が一人でも増えたらいいなという思いからで、例えば、金曜に動画を見て興味を持って、翌日の試合あるじゃん!みたいな。サッカーに興味のない人たちにも届くといいなと思っています」

     たしかに、ホームゲームは基本的には2週間ごとに開催されるので、すでに終了した試合への熱量が失われないためには、スピード感がとても大事です。いかに前田さんが仕事を素早く、しかも高いクオリティで行っているかが分かるのではないでしょうか。

    ■ 「ツイ灰」だからこそ感じる、ダイレクトに感想が寄せられる喜び 認知度が上がった故の悩みも

     デイゲームであればさておき、ナイターの場合は取材が深夜にまで及ぶことも。心身共に大変な仕事ですから、制作には前田さん自身のモチベーション維持も欠かせません。番組の認知度が上がるにつれ、前田さんの元には多くの反響が届くようになりました。

    ナイターの場合は取材が深夜にまで及ぶことも

    ―― これまでさまざまなアウェイサポを取材してきたと思いますが、自身がやりがいを感じる瞬間はどういったところでしょうか?

     前田さん:「やはりSNSの声ですね。私もすっかり“ツイ灰(X上における鹿児島サポーターの総称)”なのでずっとエゴサしてます(笑)。ローカル番組ってあまりSNSで感想をもらえないんですが、この番組はすごく反応があって嬉しいです。たまに傷つくこともありますが……。最近ではスタジアムで『見てます!』と声をかけられたり、毎回お土産や差し入れをくれる人もいて……こんなの普通のロケじゃありえませんからね!」

    アウェイサポ、鹿児島でなにしてる?公式X

     一方で、人気が出たからこその「悩み」もあるそうです。

    ―― 取材を行う際に苦労していること、大変なことはありますか?

     前田さん:「番組が知られるようになればなるほど、密着させてくれるサポーターを探すのに苦労しています。『(密着されると)あんな風になるんだな』って皆さんにバレちゃってるので。気楽な気持ちで密着させてもらえれば嬉しいんですけど……なかなか難しいですよね(笑)」

     確かに、アウェイの地で自分の酔っ払った姿や熱狂する姿が数万回再生されると思うと……尻込みしてしまうのも無理はないかもしれません。しかし、前田さんがうまく編集してくれるので、そこはくれぐれもご安心を。

    密着させてくれるサポーターを探すのに苦労しているのだとか

    ■ 目標は同コンセプト番組の全国展開「どこかの地域で、同じような番組が始まってほしい」

     今年で3シーズン目に突入する「アウェイサポ、鹿児島でなにしてる?」。前田さんは今後、配信企画やグッズ、イベントなどを通じ、視聴者との距離をさらに縮めていきたいと語ります。

     そして、将来のビジョンについて尋ねると、こんな答えが返ってきました。

     前田さん:「どこかの地域で、同じような番組が始まってほしいなと思います」

     動画の公開後、徐々にその名が全国に知られるようになると、実際に他県のテレビ局から前田さんの元に連絡が寄せられるといった動きもあったのだとか。「アウェイサポの遠征」への注目は、徐々に広がりを見せているようです。

     各クラブの地元テレビ局が、それぞれの地域に来る「アウェイサポ」を歓迎し、取材する。そんな文化がJリーグ全体、さらにはスポーツ界全体に広がれば、スポーツツーリズムはもっと活性化し、面白くなるに違いありません。

     2026年の「百年構想リーグ」そして「2026‐2027シーズン」の開幕はもう間もなく。もしもJリーグの試合観戦で鹿児島・白波スタジアムを訪れる際は、カメラを持った前田さんたちに声をかけられるかもしれません。その時はぜひ、あなただけの「鹿児島旅」と「クラブ愛」を語ってみてはいかがでしょうか。

    <記事化協力>
    KTS鹿児島テレビ 前田剛宏さん

    <参考・引用>
    YouTubeチャンネル「アウェイサポ、鹿児島でなにしてる?【KTS鹿児島テレビ 公式動画】
    【公式】アウェイサポ、鹿児島でなにしてる?(@kts_away

    (山口弘剛)

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  • 山口 弘剛‌Writer

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    鹿児島出身・鹿児島在住。私生活では妻と共に2人の子どもを子育てしながら、地元のサッカークラブを熱烈応援中。仕事は元アパレル店長、元ゲームショップ店長を経験。現在はライター、イラストレーターとして活動。

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