皆様、こんにちは。今話題のアニメに注目する「新作アニメ捜査網」、今回は、三国志をテーマにしたアニメを取り上げたいと思います。2010年第2クールの新作アニメには、三国志を題材にした番組が4本あります。『最強武将伝 三国演義』『SDガンダム三国伝 Brave Battle Warriors』『一騎当千 XTREME XECUTOR』『真・恋姫†無双~乙女大乱~』の4本です。
本稿では、特に『一騎当千 XTREME XECUTOR』と『真・恋姫†無双~乙女大乱~』の2本を中心にご紹介したいと思います(番組の基本的なデータについては前回の記事をご覧戴きたい)。
2本とも、三国志の登場人物のうち多くの人物を女性化したという共通点があります。『一騎当千』は、三国志の人物の魂を受け継いだ現代日本の高校生(一部、中学生も混じる)の戦いを描いたもの。一方の『恋姫†無双』は、後漢末期を舞台に武将達の冒険を描いたものです。
まずは、両番組の歩みを見てみましょう。
『一騎当千』(2003年第3クール。シリーズ1作目) 『一騎当千 Dragon Destiny』(2007年第2クール。シリーズ2作目) 『一騎当千 Great Guardians』(2008年第3クール。シリーズ3作目) 『恋姫†無双』(2008年第3クール。シリーズ1作目) 『真・恋姫†無双』(2009年第4クール。シリーズ2作目) 『一騎当千 XTREME XECUTOR』(2010年第2クール.シリーズ4作目) 『真・恋姫†無双~乙女大乱~』(2010年第2クール.シリーズ3作目) |
このように両番組が同時期に放送されるのは2度目なのですが、この度、両番組の出資者は大々的なキャンペーンを打ち出すに至りました。『一騎当千』4作目と『恋姫†無双』3作目の製作委員会には両方ともAT-Xが出資していることから、AT-Xは『一騎当千』と『恋姫†無双』をセットで宣伝しております。また、『一騎当千』製作委員会の出資者メディアファクトリーと『恋姫†無双』製作委員会の出資者マーベラスエンターテイメント(マーベラスは『一騎当千』のゲームソフトの発売元でもあります)もタッグを組み、『一騎当千』と『恋姫†無双』をセットで宣伝。『一騎当千』&『恋姫†無双』コラボホームページにはメディファクとマーベラスのロゴが踊っています。メディファクはユーチューブのメディアファクトリーTVで『一騎当千』&『恋姫†無双』を宣伝し、マーベラスはニコニコ動画のマーベラスエンターテイメント公式ちゃんねるで『一騎当千』&『恋姫†無双』を宣伝しております。東京国際アニメフェアでは、メディファクが主催し、両社の関係者と両番組の出演声優が登壇するイベントも実施していました。更にブシロードも両番組のカードゲームを販売しています。
ではここで両番組のストーリーを見てみようと思いますが、その前に、歴史上の三国志、及び小説『三国志演義』の大まかな流れを眺めておきましょう。三国志の物語は、後漢王朝末期の西暦184年、黄巾(こうきん)の乱という叛乱が勃発した辺りから始まります。世の中は乱れ、宮廷には派閥争いが渦巻いていました。そして、宮廷の宦官が西暦189年、宮廷の実力者・何進(かしん)将軍を殺害。しかし董卓(とうたく)という武将が宦官を抑えて宮廷の実権を握ることになります。だが董卓も西暦192年に呂布(りょふ)という武将に殺害されることに。その後、色々ありまして、中国大陸の北部を曹操(そうそう)という武将の陣営、南東部を孫権(そんけん)という武将の陣営、西部を劉備(りゅうび)という武将の陣営が支配するに至ります。西暦208年には、孫権陣営と劉備陣営が同盟を組み、曹操陣営と対決。これが世に言う赤壁(せきへき)の戦いです。西暦220年には曹操の息子・曹丕(そうひ)が魏(ぎ)という国を建国。続く221年には劉備が蜀(しょく)という国を、229年には孫権が呉(ご)という国を建国しました。蜀では、西暦223年に劉備が死去すると、諸葛亮(しょかつりょう)が政治を担います。諸葛亮は西暦225年に南征と呼ばれる遠征を実施し、南蛮(中華思想では南方の異民族をこう呼びます)の孟獲(もうかく)らを屈服させます。その後も三国志の物語は続きますが、とりあえず本稿ではここまでにしておきましょう。
以上に述べたような三国志の主な流れを頭に入れつつ、実際に『恋姫†無双』シリーズと『一騎当千』シリーズのストーリーを見てみましょう。以下、本文では便宜上、両番組における劉備とその関係者の陣営を蜀、孫権とその関係者の陣営を呉、曹操とその関係者の陣営を魏と呼ぶことにします。『恋姫†無双』の主役は蜀で、1作目の主人公は関羽(かんう)、2、3作目の主人公は劉備となっています。一方『一騎当千』の主役は呉で、主人公は孫策(そんさく)となっていますが、呉と蜀の同盟関係が物語に取り入れられていることから蜀の出番も多くなっています。
『恋姫†無双』シリーズでは、2作目の途中で黄巾の乱が勃発し、乱を鎮圧して最終回となりました。3作目では何進と宦官の抗争が勃発。宦官の張譲(ちょうじょう)が何進に猫耳になる呪いをかけたところで物語の幕開けとなります。呪いを解くために必要な物質を蜀のメンバーが取りにいくという展開になったのですが、その目的地というのが呉と南蛮。という訳で、『恋姫†無双』3作目は何進と宦官の抗争と、蜀の南征を同時並行的に描いていると言えます。
『一騎当千』シリーズは、まず1作目のクライマックスは呂布と董卓の一騎打ちでした。そして両者とも討ち死に。そして2作目のクライマックスは、呉と蜀が同盟して魏に立ち向かう赤壁の戦い。これにより曹操が討ち死にしました。3作目では呂布が復活して呂布中心のエピソードが描かれ、4作目では曹操までもが復活しました。更に4作目では南蛮の孟獲らが新キャラクターとして登場。『恋姫†無双』3作目と同様に『一騎当千』4作目でも蜀の南征を描いていると言えます。
『一騎当千』と『恋姫†無双』は今後どのような形で視聴者を楽しませてくれるのでしょうか。
■ライター紹介
【コートク】
戦前の映画から現在のアニメまで喰いつく、映像雑食性の一般市民です。本連載の目的は、現在放送中の深夜アニメを中心に、当該番組の優れた点を見つけ出して顕彰しようというものです。読者の皆さんと一緒に、アニメ界を盛り上げる一助となっていきたいと考えています。宜しくお願いします。