10月31日はケルトの民間信仰に端を発する「死者がよみがえる日」ハロウィン。それに合わせてNASAは2019年10月28日(現地時間)、実在する星をモチーフにしたホラー映画風のポスターと予告編動画を公開しました。

 宇宙に存在する惑星は、どれも地球とは異なった環境。NASAではそんな星たちに親しみを持ってもらおうと、星の特徴を分かりやすく観光地のポスターに見立てた「EXOPLANET」というシリーズを展開しています。

 2019年のハロウィンにちなみ「Galaxy of Horrors(恐怖の銀河)」として取り上げられたのは、惑星を持つことが初めて確認された「アンデッドの星(パルサー)」と、ガラスの雨が降り注ぐという「恐怖の雨が降る星」。

 まず「アンデッドの星」として紹介されたのは、おとめ座宙域に存在するパルサーのPSR B1257+12。パルサーは、寿命を迎えた星(恒星)が超新星爆発を起こし、その中心に残った中性子星がパルス状の電磁波(可視光線、電波、X線など)を発している天体のことです。

 PSR B1257+12は1990年、ポーランドの天文学者ヴォルシュチャンがプエルトリコにあるアレシボ天文台の電波望遠鏡を使って発見しました。パルサーは寿命を迎え、超新星爆発を起こして「死んだ」はずの星が中性子星となって生きている……ということから、ファンタジー作品でよく見られる不死の魔術師(アンデッド・マジシャン)にちなんで「リッチ(Lich)」と名づけられました。

 このリッチ、通常ならば超新星爆発に巻き込まれ、消滅するはずの惑星までも「生き残っている」ことが判明しました。惑星は1992年に2つ(PSR B1257+12BとPSR B1257+12 C)、1994年にも母星に最も近いところを回る1つ(PSR B1257+12 A)が見つかっています。

 パルサーが惑星を持っている、と確認されたのはこれが最初のこと。母星がファンタジー作品でのアンデッドから命名されたので、惑星にもそれぞれアンデッドや幽霊に関する名前がつけられました。

 一番内側を回るAには北欧神話のアンデッド「ドラウグル(Draugr)」、2番目に近い軌道を回るBには「ポルターガイスト(Poltergeist)」、そして一番遠くの軌道を回るCにはギリシャ神話で夢の中に現れ悪夢を生み出す神「ポベートール(Phobetor)」。ポスターでは。この星系を「ゾンビワールド(ZOMBIE WORLDS)」とホラー映画風に紹介しています。

 ガラスでできた「恐怖の雨が降る星」は、こぎつね座宙域にある恒星HD 189733 Aの周囲を回る惑星HS 189733 b。太陽系から約64.5光年離れており、フランスの天文学者ボウチーらによって2005年に発見されました。

 惑星のタイプとしては、ガス状の物質が主成分である「木星型惑星」に分類されますが、2013年にハッブル望遠鏡による可視光線のスペクトル分析の結果、鮮やかな青色であることが分かりました。

 見る分には非常に美しい惑星ですが、これまでの観測結果から判明した表面温度は摂氏1067度〜1267度という灼熱地獄。しかも木星と同じく非常に強い風が吹いていると考えられ、推定2000m/秒の風が気化したガラス質の雲を動かしているとのこと。

 NASAのポスターでは「猛烈な速さで吹き付けるガラスの雨によって、あらゆるものがズタズタに引き裂かれてしまう」と表現していますが、確かに惑星の大気に突入して、無事に表面に降りることは難しそうです。

 このほかにも、NASAの「Galaxy of Horrors」特設サイトには、信じられないような環境をもつ星たちが紹介されており、ポスター画像もPDFでダウンロードできるようになっています。またYouTubeでは、これらの星々をホラー映画の予告編風に紹介する動画も公開されています。いやぁ……NASAはお遊びにも色々本気ですね。

<出典・引用>
NASA プレスリリース
Image:NASA-JPL/Caltech
※見出し画像はYouTube動画のスクリーンショットです

(咲村珠樹)