おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

元ツイッター警部が警視庁流「デジタル鑑識」サービス開始 「千葉県割」も

 ロシアのウクライナ侵攻でも注目されているサイバー攻撃。攻撃する側は「守りの薄いところ」を狙ってくるため、どんな企業や団体でも攻撃対象となり得ます。

 攻撃を受けた場合に重要なのは、攻撃されたことを示すデジタルデータを証拠として保全すること。「元警視庁のサイバー犯罪捜査官」が設立した合同会社デジタル鑑識研究所(千葉県松戸市)が、サイバー攻撃に対応したサービス「デジタル鑑識(デジタル・フォレンジック)」の提供を開始しました。

  •  不正アクセスやマルウェアなどの手法を用い、重要なデータを盗まれたり書き換えられたりするサイバー攻撃。一度攻撃されてしまうと、取引先や株主、ユーザーへの説明や報道発表などの説明責任が生じます。

     この時、重要になるのが「どの部分を」「どのように」攻撃されたかという証拠。デジタルデータは目に見えませんが、データ上の痕跡を可視化し、保全することで手口を解析し、対応策や犯人捜査へつなげることができます。

     合同会社デジタル鑑識研究所は、警視庁で「Twitter警部」として親しまれた中村健児さんが設立した会社。中村さんはTwitterでの情報発信だけでなく、要人警護や経済事犯、サイバー犯罪の捜査に従事していた経歴を持ち、警視で退職しています。

    合同会社デジタル鑑識研究所の中村健児代表

     サイバー犯罪に関しては、2005年の「カカクコム」不正アクセス事件をはじめ、Yahoo!オークション詐欺の被疑者検挙、警察ホームページへの虚偽告訴事件での被疑者検挙など、数々の実績をあげています。警察庁が主催した「情報セキュリティアドバイザー専科」の1期生として、全国の警察からは技官が派遣される中、唯一の警察官としてトップレベルの研修を受け、警視庁で捜査員の指導も行いました。

     そんな警視庁サイバー捜査官の経験を踏まえ、サイバー攻撃を受けた際の対処を実施する「デジタル鑑識」サービス。情報漏洩やデータ破壊などがされた場合、デジタルデータの証拠保全をし、改ざんなどについての調査・分析を行う科学的調査手法・技術を提供するものです。

     手がけるのは元警察官とあって、一番重要なコンプライアンスと守秘義務については厳格に遵守するとのこと。また、被疑者の逮捕から検察への送致は48時間以内という規定のもとで仕事をしてきたため、緊急性を要するサイバー事案でも迅速に対応できるとしています。

     気になる料金は、事案の重大性を素早く判断する「重大性判定」では2万円から。デジタル鑑識をフル活用する「詳細コース」で100万円から、事案の概要を素早く把握する「事案の概要コース」では40万円からとなっています。

     また、合同会社デジタル鑑識研究所の所在が「千葉県」であることから、千葉県内に所在する企業ならびに弁護士事務所などを対象にした「千葉県割」が設定されています。

    「デジタル鑑識」の料金表

     利用の流れとしては、事案を認知した場合、合同会社デジタル鑑識研究所公式サイトの専用フォームまたは電話にて受付を行うとのこと。この際、事案を認知した時点の状態のまま、コンピュータの操作をしない「証拠保全」が必要となります。

    「デジタル鑑識」利用の流れ

     保全された環境からデジタル鑑識を行い、解析(通常7~10営業日かかるとのこと)。手口やアタックされた部分、今後の防衛策などを報告する形になるそうです。

     どの犯罪でもそうですが、犯罪が行われた直後の現場というのは、手がかりの宝庫です。サイバー犯罪で被害に遭ったときも同様で、慌てる心をグッとこらえて「触るな(操作をしない)」「(メモリ内に痕跡が残っているので電源を)落とすな」「(アプリを)動かすな」の3原則を心がけると、デジタル鑑識もスムーズに運ぶとのことです。

    サイバー被害三則

    情報提供:合同会社デジタル鑑識研究所

    (咲村珠樹)

    あわせて読みたい関連記事
  • 「デジポリス」を装った偽アプリ確認 ニセ警察詐欺の新たな手口に注意
    インターネット, 社会・物議

    「デジポリス」を装った偽アプリ確認 ニセ警察詐欺の新たな手口に注意

  • 海外からの不審な着信を自動拒否  警視庁「デジポリス」に「国際電話ブロック機能」が登場
    企業・サービス, 経済

    海外からの不審な着信を自動拒否  警視庁「デジポリス」に「国際電話ブロック機能」…

  • 「私はロボットではありません」に偽装しウイルス感染 警視庁が注意呼びかけ
    インターネット, 社会・物議

    「私はロボットではありません」に偽装しウイルス感染 警視庁が注意呼びかけ

  • 「LOVE 9 LOVE」殺害予告で被害届 直近のイベント出演辞退
    エンタメ, 芸能人

    「LOVE 9 LOVE」殺害予告で被害届 直近のイベント出演辞退

  • ニコニコ、犯罪予告コメントへの対応を説明 「いたずらのつもり」は通用せず
    インターネット, 社会・物議

    ニコニコ、犯罪予告コメントへの対応を説明 「いたずらのつもり」は通用せず

  • 地下鉄サリン事件発生から30年……公安調査庁が「オウム真理教問題デジタルアーカイブ」公開
    インターネット, 社会・物議

    地下鉄サリン事件発生から30年……公安調査庁が「オウム真理教問題デジタルアーカイ…

  • りんごが素手でふたつに割れる!?警視庁災害対策課のライフハック技やってみた
    インターネット, おもしろ

    りんごが素手でふたつに割れる!?警視庁災害対策課のライフハック技やってみた

  • 空き家を悪用する詐欺と密輸、警察庁が注意喚起
    インターネット, 社会・物議

    空き家を悪用する詐欺と密輸、警察庁が注意喚起

  • 自分のスマホが犯罪インフラに? 知らぬ間にSMS大量送信、日本サイバー犯罪センターが警鐘
    インターネット, 社会・物議

    自分のスマホが犯罪インフラに? 知らぬ間にSMS大量送信、日本サイバー犯罪センタ…

  • 万座温泉スキー場、盗難被害で今季営業縮小 リフト3本運休、滑走コースも制限
    社会, 経済

    万座温泉スキー場、盗難被害で今季営業縮小 リフト3本運休、滑走可は2つに制限

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく
    社会, 経済

    雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

  • 声優とAIの共存を模索 81プロデュースとイレブンラボが業務提携、オリジナルの声を守り多言語展開へ
    アニメ/マンガ, 声優

    声優とAIの共存を模索 81プロデュースとイレブンラボが業務提携、オリジナルの声…

  • Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行
    インターネット, サービス・テクノロジー

    Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

  • 駅ホームでの“撮り・録り”が危険に? JR東日本が注意喚起ポスターと動画を展開
    社会, 経済

    駅ホームでの“撮り・録り”が危険に? JR東日本が注意喚起ポスターと動画を展開

  • イベント「清水 ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎祭」(清水駅前銀座商店街)
    エンタメ, 映画

    仲村トオルが清水に凱旋 映画「ビー・バップ・ハイスクール」40周年イベント開催

  • アクリルロゴディスプレイSounds PlayStation
    ゲーム, ホビー・グッズ

    あの起動音が再び 「アクリルロゴディスプレイSounds PlayStation…

  • トピックス

    1. Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Googleは12月16日、個人情報がダークウェブ上に流出していないかを確認できる「ダークウェブ レ…
    2. Gmailを受診している画面

      Gmailの仕様変更でPOP受信が終了 自分は対象?POP利用チェック

      Gmailの仕様変更により、外部メールを取り込むPOP受信機能が2026年1月より利用できなくなりま…
    3. イベント「清水 ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎祭」(清水駅前銀座商店街)

      仲村トオルが清水に凱旋 映画「ビー・バップ・ハイスクール」40周年イベント開催

      映画「ビー・バップ・ハイスクール」(1985年)の劇場公開40周年を記念したイベント「清水 ビー・バ…

    編集部おすすめ

    1. 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      国土交通省と気象庁は12月16日、雨や洪水などの危険を伝える「防災気象情報」について、2026年(令和8年)の大雨シーズンから新たな運用を始…
    2. コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      夏コミ名物、会場の熱気と参加者の汗が昇華して天井付近に発生するという伝説の現象「コミケ雲」。まさかそれを口にできる日が来るとは、誰が想像した…
    3. Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      情報処理推進機構(IPA)は12月10日、多くのウェブサービスで使われている開発技術に重大な問題が見つかり、国内でも悪用したとみられる攻撃が…
    4. ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライブ配信アプリ「Pococha(ポコチャ)」で活動するライバーをサポートしている事務所4社が、所属ライバーの“退所後の活動”を不当にしばっ…
    5. パラマウントのプレスリリース

      まるで三角関係?Netflixと“婚約発表”したワーナーにパラマウントが求婚 関係を分かりやすく解説

      アメリカの映画製作・配給会社であるパラマウントが12月8日、同じくアメリカのメディア企業ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)を1株…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト