おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

男性の育休はただの長期休暇?制度はあるのに取得率が向上しない原因は

 近頃、男性の育休取得に関する話題をニュースやSNS等でよく目にします。特に子育て世代の核家族化が進み、以前よりも周囲の協力が得にくくなっている現代において、育児はもちろん、産後の妻のケアを行う為にも、男性の育休取得は必要であるという風潮が高まっています。

 しかしながら、男性の育休取得率は1割程度と、まだまだ企業によっては理解や賛同が得られていないのが現状。「育休を取得しても、男がやることなんてない」。そんな職場でのやり取りを記した、ツイッターユーザー・ごりさん(@gorisan1202)のツイートに大きな注目が寄せられています。

  • 「育休中何すんの?」って会社の先輩に言われたから『育児です』って言ったら「やらないでしょ~。そもそも育児ってそんなやる事あるの?」と言われました。男性の育休はまだまだ【ただの長期休暇】というイメージが強い。悔し過ぎる。絶対に後悔のない育休期間を過ごすと誓った。

     このようにつぶやいたごりさん。どうやらごりさんの社内でも男性の育休取得について、いい印象を持っている方が少ないのが現状である模様。育休を取得する者はほとんどおらず、ごりさんの所属部署では初めての育休所得者なのだそう。

    ■ 男性の育休取得がキャリアアップの妨げになる?

     これだけ男性の育休取得は必要という声は上がっているにも関わらず、なぜ現状の取得率が約1割にとどまっているのか。その理由について、「男性のキャリアアップの妨げになってしまうという意識があるのかなと感じます」とごりさん。

     たしかに、育休取得期間中は業務から離れているため、通期の評価はアップもダウンもない現状維持、となるのはやむを得ないところではありますが、一方で降格や左遷など不当な評価を受けたという声も耳にします。

     こうした上長からの不適切な扱いが自分の身にも降りかかるかもしれない、という不安があるのも、男性の育休取得が進まない原因の一つ。

     ちなみに、ごりさんの上司は「育休取得は成績や評価にまったく関係ないからね」と、背中を後押ししてくれたとのこと。育休取得に理解のある上長の存在は、取得率向上に必要不可欠。こうした事態に備えて業務の分担などを考えておくことが、上長の役目と言えるでしょう。

    ■ 育休=ただの長期休暇?認識にも課題が

     また、子どもが満一歳を迎えるまでの取得となる育休期間中に、「男性がやることなんてあるの?」と誤認されていることも、取得を妨げる一因となっていそう。

     こうした認識はもちろんNO。二児の父でもある筆者はむしろ、男性の方が出来る方が多いとも感じます。例えば、炊事、洗濯といった日常的な家事全般は全て出来るでしょうし、育児に関してもおむつ替えや抱っこ、お風呂に寝かしつけまで、直接授乳以外は全て出来ます。

     ごりさんも「産後の女性の体の状態は『交通事故で全治1か月の大けが』と例えられるくらいダメージが大きいので、妻の体と心を休めて欲しいなという思いがあった」とのこと。果たして自分が全治1か月の大けがを負った場合、ひとりで家事や育児を全て担うことは可能でしょうか?

     このような認識があれば、「育休=ただの長期休暇」とはならないですよね。ごりさんの妻は、5月下旬までは里帰りをしているため、その後ごりさんも育休を取得する予定とのこと。妻の妊娠中も家事はほとんどごりさんが行っていたそうなので、いざ育休中に何をすればよいのかわからない、というような心配はなさそうです。

    ■ 赤ちゃんの成長はあっという間「目に焼き付けておきたい」

     また、ごりさんが育休取得を決めた理由には、成長著しい新生児期、乳児期の赤ちゃんの成長を目に焼き付けたかったから、という理由もあります。

     この時期の子どもの成長は1週間でも見違えるように成長し、まさにあっという間に大きくなっていきます。「その時期を仕事で忙しくて見届けられないなんて、自分が死ぬ時に後悔すると思いました」とごりさんは言います。

     妻の為、子どもの為、という献身的な思いも大切ですが、やはりまずは自分の為であることが行動の原動力になることは間違いありません。「家族はもちろん、自分にとっても有意義だった」と言えるような育休期間にすることが、延いては今後の男性育休の取得率にも関わってくるでしょう。

    ■ 2022年4月より取得促進が義務化へ

     男性の育休取得率が伸び悩んでいる現状を踏まえ、「改正育児・介護休業法」が2022年4月より施行されています。

     これまでは努力範囲であった、企業から従業員への育休制度の説明および取得の促進が義務化され、使用者側である企業は、労働者側である従業員へ、個別に育休取得制度の通知と意思確認を必ず行わなければなりません。

     義務化ともなると、育休制度の認知や取得率の向上には繋がるでしょうが、とはいえ、同時に「ただの長期休暇」と思われている認識を変えていくことも必要でしょう。

     本来は家族の為、自身の育児経験の為に取得するはずの育休が「自身の趣味の充実」や「日ごろの労働の休息期間」のように扱われていては、こうした制度も本末転倒。

     企業側が正しく制度の説明を行うとともに、取得者側も「育児や家事、産後の妻のケア」という育休の目的を遂行するための期間、という考えを持つべきと思います。育休は「休暇」ではなく「休業」なのですから。

    ■ 育休が必要な人が気兼ねなく取得できる社会の実現へ

     「僕ら夫婦の夢は、子ども達が成人した時に『子育て最高だった!』と言って妻と乾杯することなんです」

     と、将来的な子育てのビジョンを少し照れくさそうに話したごりさん。育休期間は、あくまで長い子育ての一部にすぎませんが、周囲との相互協力は不可欠。長い人生において、パートナーとの良好な関係を築いていくための、ファーストステップとして考えるのも良いでしょう。

     出産後の家事や育児を任せきりにしたばかりに、夫への気持ちが冷めてしまったという話も良く聞きますから。

     インタビューの最後には、「これを機に男性の育休取得の背中を押せればなと思います。やはり育休取得には勇気もいるし、批判もあるのですが、そこを超えて『家族のために』を最優先で行動できる人が増えたらうれしいです」と、投稿に込めた思いを語ってくれました。

     もちろん、それぞれの家庭の事情がありますので、全ての男性が「必ず育休を取得すべき!」とは言いませんが、取得が必要な人が、気兼ねなく周囲に相談できて、キャリアや金銭面において心配なく、適切に取得できる、そんな社会が実現出来れば素敵だなと思います。

     こうしたSNSへの投稿や、法改正をターニングポイントに、今後の更なる育休制度の促進と、取得者並びに周囲の人々の理解が進んで欲しいと、切に願うばかりです。

    <記事化協力>
    ごりさん(@gorisan1202)

    (山口弘剛)

    あわせて読みたい関連記事
  • 大好きな粉薬が切れて泣く3歳児 悩んだ親が与えた食材に「健康的」
    インターネット, おもしろ

    大好きな粉薬が切れて泣く3歳児 悩んだ親が与えた食材に「健康的」

  • ヨーグルトの空き容器で特大タワーを制作 父と2人の息子が作った圧巻の光景に「もはや芸術」
    インターネット, おもしろ

    ヨーグルトの空き容器で特大タワーを制作 父と2人の息子が作った圧巻の光景に「もは…

  • ケーキの上は只今工事中!3歳のわが子に作った「工事現場ケーキ」が楽しそう
    インターネット, おもしろ

    ケーキの上は只今工事中!3歳のわが子に作った「工事現場ケーキ」が楽しそう

  • ベビーカーに乗ってほしい娘にベビーカーのおもちゃを与えた結果……まさかの逆効果に
    インターネット, おもしろ

    ベビーカーに乗ってほしい娘にベビーカーのおもちゃを与えた結果……まさかの逆効果に…

  • 「マツモトキヨシに寄っていい?」母が発した何気ない一言に4歳息子が恐怖
    インターネット, おもしろ

    「マツモトキヨシに寄っていい?」母が発した何気ない一言に4歳息子が恐怖

  • 「二手に分かれよう!」 公園で出会った友だちとの“一緒に遊ぼう”に大人は困惑
    インターネット, おもしろ

    「二手に分かれよう!」 公園で出会った友だちとの“一緒に遊ぼう”に大人は困惑

  • 幼稚園イベントに行けなかった3歳娘のために……母が用意した「おうちぶどう狩り」にほっこり
    インターネット, おもしろ

    幼稚園イベントに行けなかった3歳娘のために……母が用意した「おうちぶどう狩り」に…

  • 危険なテレビ裏に突撃する我が子 近寄らせないために「化け物」を仕掛けた結果
    インターネット, おもしろ

    危険なテレビ裏に突撃する我が子 近寄らせないために「化け物」を仕掛けた結果

  • コストコのクマさん
    インターネット, おもしろ

    「クマさんが見てるよ」言っても聞かない我が子への“愛ある最終手段”

  • まさに育児あるある 探し物が見つかったのはまさかの「おもちゃの中」
    インターネット, おもしろ

    まさに育児あるある 探し物が見つかったのはまさかの「おもちゃの中」

  • 山口 弘剛‌Writer

    記事一覧

    鹿児島出身・鹿児島在住。私生活では妻と共に2人の子どもを子育てしながら、地元のサッカークラブを熱烈応援中。仕事は元アパレル店長、元ゲームショップ店長を経験。現在はライター、イラストレーターとして活動。

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 「RTA in Japan Winter 2025」ゲームスケジュールが公開 任天堂タイトルが復活
    ゲーム, ニュース・話題

    「RTA in Japan Winter 2025」ゲームスケジュールが公開 任…

  • 南里美希が8年ぶりにシリーズ復帰 最新作「牙狼<GARO> 東ノ界楼」2026年1月放送決定
    TV・ドラマ, エンタメ

    南里美希が8年ぶりにシリーズ復帰 最新作「牙狼<GARO> 東ノ界楼」2026年…

  • ニッセンが「ぬい活枕カバー」を発売 「夢でも一緒」を叶える新しい推し活寝具
    商品・物販, 経済

    ニッセンが「ぬい活枕カバー」を発売 「夢でも一緒」を叶える新しい推し活寝具

  • カメラを向けたら同時に「プイッ」 息ぴったりにそっぽを向く2匹の猫ちゃん
    インターネット, おもしろ

    カメラを向けたら同時に「プイッ」 息ぴったりにそっぽを向く2匹の猫ちゃん

  • センター長が又市に!「都市伝説解体センター」と角川文庫が期間限定コラボ
    ゲーム, ニュース・話題

    センター長が又市に!「都市伝説解体センター」と角川文庫が期間限定コラボ

  • ヤフオクとフリマ、新作ゲームは定価超え出品を禁止 11月13日から実施
    ゲーム, ニュース・話題

    ヤフオクとフリマ、新作ゲームは定価超え出品を禁止 11月13日から実施

  • トピックス

    1. アカウント1の投稿

      【前編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ある日の調査作業の過程で、SNS「X」上において、急成長中の越境EC大手「Temu」のサポート担当を…
    2. Shuffle Town

      キーボードを叩くと家が出現!文書に「町」を作るフォント「Shuffle Town」が面白い

      手書き風の文字だったり、ホラー風の文字だったり、一風変わった文字を簡単に使用することができるデジタル…
    3. “すっぱいペヤング”が爆誕!?超大盛りハーフ&ハーフシリーズ最新作を実食

      “すっぱいペヤング”が爆誕!?超大盛りハーフ&ハーフシリーズ最新作を実食

      まるか食品は11月4日、「tabete だし麺×ペヤング超大盛やきそばハーフ&ハーフすっぱゆず」を発…

    編集部おすすめ

    1. アカウント1の投稿

      【後編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ※この記事は前編からの続きです。前編では、Temuを名乗る複数のアカウントを調査する中で見えてきた構図をお伝えしました。ここからは、Temu…
    2. ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設

      ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設

      ヤマト運輸株式会社は、11月10日から「宅急便当日配送サービス」の提供を開始し、併せて新たに「同一都道府県内運賃」を導入すると発表した。午前…
    3. 1回1万円の「大人のセボンスター」カプセルトイ登場 女児ゴコロときめく本格宝石入り

      1回1万円の「大人のセボンスター」カプセルトイ登場 女児ゴコロときめく本格宝石入り

      株式会社KARATZが、カバヤ食品の玩具菓子「セボンスター」45周年を記念したジュエリー企画「大人のセボンスター」第3弾を発表。11月5日に…
    4. 嵐・四宮社長が偽アカウント多発に注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定もなし」

      嵐・四宮社長が偽アカウント多発で注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定も現時点なし」

      人気グループ「嵐」の公式SNSをめぐり、偽アカウントの出現が相次いでいることを受け、所属する株式会社嵐の四宮隆史社長が11月4日、自身のX(…
    5. ヒャダイン氏おすすめ 「ブロッコリー×ごはんですよ×ねぎ油」レシピ作ってみた

      ヒャダイン氏おすすめ 「ブロッコリー×ごはんですよ×ねぎ油」レシピ作ってみた

      音楽クリエイターのヒャダイン(前山田健一)さんが、Xで紹介した超手軽レシピ。それは「ブロッコリーを桃屋『ごはんですよ』と『ねぎ油』で和えたら…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト