ヱビスビールに2023年、新ラインとして「CREATIVE BREW」が誕生しました。2月21日に発売された第1弾「ヱビス ニューオリジン」は、ヱビス誕生当初に使われていたと思われるホップを一部使い、まさに新しい原点といえるもの。
発売当日に開かれたメディア向け説明会で、新ラインが目指すものと「ヱビス ニューオリジン」の狙いについて、ブランドマネージャーと醸造家からうかがってきました。
1890年に誕生し、日本のプレミアムビールの先駆けとしての地位を築いてきたヱビスビール。それでいて、ただ伝統あるブランドを守るだけでなく、絶えず新しい試みを続け、その世界を広げてきました。
メディア向け説明会には、サッポロビール株式会社でヱビスのブランドマネージャーを務める沖井尊子さんと、「ヱビス ニューオリジン」を作り上げたサッポロビールの醸造家、有友亮太さんが出席。新しいラインの狙いや、第1弾商品の特徴について説明がありました。
今回、新ラインとして発表された「CREATIVE BREW」は、ヱビスならではのこだわりを込めて限定販売されてきた「Style Line」とは一線を画し、これまでのビールの概念にとらわれず、新たなビールのおいしさ、楽しさに挑戦していくラインナップ。ヱビスの若手醸造家に、ビールのみならず新たな体験も作ってもらうことにしたといいます。
醸造責任者として白羽の矢が立ったのは、ドイツ留学経験があり、当地でブリューマスターの資格を取得した有友亮太さん。第1弾商品である「ヱビス ニューオリジン」の狙いについて語りました。
今回キーとなったのは、1890年のヱビスビール発売当時に使われていたと思われる、ドイツ産「テトナンガー」というアロマホップ。社内に保存されている醸造記録を調べ、断片的に見つかった情報から推定に至ったのだそうです。
ヱビスがビール作りの範としたドイツ。その南部にあるバーデン=ヴュルテンベルク州のテトナング地方で収穫される伝統的な土着品種がテトナンガー。香りの優れた「ファインアロマホップ」3種のうちの1つです。
穏やかなハーブのような香りが特徴というテトナンガーホップを、伝統的なホップ4分割添加製法で最後の4回目に使用。かつては麦汁の煮沸工程で添加していたのですが、醸造技術の発展により誕生した、煮沸した麦汁から澱(おり)を取り除くワールプール(沈殿槽)の段階で最後の添加を行うことで、より繊細な香りや爽やかな苦味を実現できたといいます。
レクチャーも終わり、今度は実際に「ヱビス ニューオリジン」と、通常のヱビスビールとを飲み比べてみることに。見かけはどちらも黄金色のピルスナースタイルで、あまり変わりはありません。
口に含んでみると、ニューオリジンの方は麦芽のふんわりとした甘味と、風にそよぐハーブのような香りが立ち上がってきます。コクや奥行きもあるのですが、重さはそれほど感じず、あくまでソフトで軽やかなもの。
飲み比べると、通常のヱビスはニューオリジンよりシャープな口当たりに感じ、ピルスナーならではの爽やかさ。ニューオリジンの方は長期熟成もしているとのことで、アルコール度数はヱビスより高めの5.5%ながら、より口当たりはマイルドです。
製造時に使われているホップのペレットで、通常のホップとテトナンガーを比べてみましたが、テトナンガーの香りは骨格がしっかりしていて、その上にふくらみがある感じ。通常のものとは段違いの香りでした。
試飲の間、有友さんにニューオリジンの醸造について追加でうかがったのですが、麦芽も通常より増やしたり、残香も残すよう気を配ったとのこと。また、古い資料を紐解いていると、明治時代の醸造家から「もっと勉強しろよ」と言われているように感じた、とも話してくれました。時代を超えた醸造家同士の交流もあったようです。
今後「CREATIVE BREW」では、第2弾の商品も発表予定だとか。有友さんはヱビスビール記念館に開設される「YEBISU BREWERY TOKYO」でも醸造責任者を務めるので、ひょっとしたらそこで誕生したビールが全国発売されるかもしれない、というお話も聞くことができました。
この「ヱビス ニューオリジン」は、350ml缶(2月21日発売)と500mlびん(3月14日発売)で期間限定発売。樽生は3月14日より全国の「YEBISU BAR」、JR恵比寿駅改札内の「TAPS BY YEBISU」、東京・恵比寿エリアで開催予定の「ヱビスビールに合う逸品グランプリ」参加店で飲むことができます。
<取材協力>
サッポロビール株式会社
(取材・撮影:咲村珠樹)