7月1日、国民生活センターが「ファイル共有ソフト」に関する注意喚起を行いました。
「動画をダウンロードしただけ」のつもりが、ソフトの仕様によって自動的にアップロードもされていたケースが複数報告されており、知らぬ間に法的責任を問われる事態が起きています。
■ 「ただ動画をダウンロードしただけ」…突然届いた開示請求と示談書
発表では、実際に寄せられた2件の相談事例が紹介されました。
1件目は50代男性のケース。動画を視聴するためにファイル共有ソフトを使い、アダルト動画をダウンロードしたところ、後日プロバイダ(インターネット会社)から「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いたそうです。
調べた結果、使用していたファイル共有ソフトはダウンロードと同時に自動でアップロードも行っていたことが判明。男性は「そんなつもりなかった」と戸惑いますが、著作権のある動画を勝手にアップロードしたことになるため、問題視されてしまったのです。
2件目は60代男性からの相談。以前にプロバイダから開示請求書が届いたが、覚えがなかったため放置していたところ、後日、弁護士事務所名義で示談書が送られてきたそうです。
内容は、著作権侵害を理由に1作品につき30万円、複数なら70万円の示談金を支払うよう求めるものでした。該当するパソコンは以前は家族で共用しており、子どもも使用していたそうです。
ファイル共有ソフトは、インターネット上で他者と直接ファイルをやり取りできる仕組みです。P2P(ピア・トゥー・ピア)と呼ばれる方式で、利用者のパソコンがネットワークの一部となり、意図せずに他人とファイルを「共有」してしまうことがあるのです。
そのため、視聴目的でファイルを「ダウンロードしただけ」のつもりでも、同時に自動的に「アップロード」されていれば、著作権の公衆送信権を侵害したとして損害賠償請求の対象になる可能性があります。これは刑事罰の対象にもなり得る重大な問題です。
■ 「使わないことが最大の対策」 センターが呼びかけ
国民生活センターは、こうしたトラブルを未然に防ぐためには「ファイル共有ソフトを使わないことが一番の対策」と明言しています。
特に著作権者に無断でアップロードされたコンテンツをダウンロードすること自体が、私的使用の範囲を超えて著作権法違反となる可能性があると警鐘を鳴らしています。
また、プロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」などの通知が届いた際は、たとえ自分に覚えがなくても無視せず、家族との共用状況を確認し、速やかに対応することが重要とのこと。
さらに、家庭内でパソコンなどの端末を複数人で使用する場合は、使用ルールの明確化やアカウント権限の設定など、予防的な措置を講じることも推奨されています。
なお、同センターでは、通知文書の内容がわからない、対応方法に困ったといった場合には、全国共通の消費者ホットライン「188(いやや!)」に相談するよう呼びかけています。
<参考・引用>
国民生活センター「動画を見るためにファイル共有ソフトを使ってない!?知らないうちに著作権侵害していることも!」