プラモデル作りにおいて、パーツを切り離した後に残る「ランナー」。リサイクル回収なども行われていますが、多くのモデラーにとっては「捨てるもの」という認識でしょう。しかし、Xユーザー・しろまる460さんの手にかかれば、それが芸術作品へと変貌します。
緑色のランナーからスッと伸びた茎、そこには鋭い棘(とげ)まで再現されており、先端には鮮やかな深紅の薔薇が花弁を広げています。驚くべきは、これが「ランナーを溶かして」作られているという点です。
■ 道具は「ヒートペン」のみ 超絶技巧が生んだ一輪の薔薇
普段はオリジナルガレージキットや立体パズルなどを制作しているしろまる460さん。
今回の作品に使用した道具は「ヒートペン」と呼ばれるもので、木材の焼き絵やプラスチックの溶着(溶接)に特化したツール。プラモデルの合わせ目消しやスジ彫りなどにも使われ、元々粘土彫刻を行っていたしろまる460さんも「ヒートペンで造形ができる」という話を聞いて興味を持ったことから、購入して使用を始めたそう。
後日投稿された動画では、その制作過程の一部始終を公開。花の部分や茎の部分を細かいタッチで溶かしながら造形し、最後に花と茎を融着させて完成となります。なんと、塗装は一切行っておらず、ランナーの成型色(プラスチックそのものの色)をそのまま活かし、異なる2種のランナーを用いて薔薇を再現していたのでした。
■ 制作時間はわずか10分「魔法のようだ」
非常に繊細な作業に見えますが、制作にかかった時間は「おそらく10分ほど」という衝撃の回答が。「最近バラは作っていなかったので久しぶりに検証してみました」と語るしろまる460さんですが、単調なプラの質感にならないよう、花と茎で表面の処理を変えるなど、細部へのこだわりが光ります。
投稿には「#失われたプラモ製作技術」というタグが添えられていますが、これはこのヒートペンがすでに販売終了していることを受けてのもの。しかしながら、この技術を見た人たちからは「魔法のようだ」「まさにプラモの錬金術師」と賞賛の声が相次ぎました。
反響についてしろまる460さんは、「素直にうれしく思います。知っているだけでも複数名、ヒートペンで造形できる方がいるので、そこは恐縮です」と控えめにコメント。
続けて「ヒートペン自体は造形に限らず、合わせ目を消したりテクスチャーやリベット等入れたりできる便利アイテム」とし、「反響が大きくあればヒートペン自体の生産もまたあったりするのかなと期待しています。その際はぜひぜひ皆さんにも手に取っていただき、失われる技術どころか、発展させてもらえたらうれしいです」と、思いを述べました。
捨てられるはずだったランナーが、技術とアイデアによって美しい花に生まれ変わる。まさに「持続可能な社会」を目指す現代に則した、エコなアート作品と言えるのかもしれません。
ヒートペンでプラモのランナーを溶かして造形#失われたプラモ製作技術 pic.twitter.com/67UNNvVB1a
— しろまる460 (@shiormaru_460) December 15, 2025
<記事化協力>
しろまる460(@shiormaru_460)
(山口弘剛)








































