コロナ禍において、すっかり生活必需品となったマスク。最近ではオシャレアイテムとして使用する方も増えていますが、TwitterユーザーのCHARTMANさんは、数学力が鍛えられそうなデザインマスクを紹介しています。

 「計算不能な間違った数式を印刷することで『セキが出ない』というおまじないをかけたmathク」というつぶやきとともに、右下に「[1 2]×[3 4]」という数式が印字された白地のマスクを紹介したCHARTMANさん。

右下に[12]×[34]が印字されたマスクを紹介した投稿者。

 「現代社会では、多くのアーティストさんが、趣向を凝らしたデザインのマスクを制作しています。自分も『関数アーティスト』と自称しているので、『数学と掛けて何か作れないか?』と思っていたんです」

 CHARTMANさんは現在、東京大学大学院にて博士課程の学生として3Dモデリングの研究をする傍ら、自己紹介にもあった「関数アーティスト」として活動。

 「難しすぎると分かる人が少ない、でも簡単すぎても面白くもない。そこの“ギリギリ”を攻めた『分かる人には分かる』作品を作っています」という言葉どおり、自身の数学的な視点と少しばかりの洒落っ気があわさった「数学アート」を制作しています。

「関数アーティスト」として、これまでも様々な数学アートを発表している投稿者。

 今回のマスクも「数学に関するものなので」と、数学を英語読みした「math(マス)ク」という洒落っ気のあるネーミングでしたが、想定していた以上の多くの人にこのセンスが刺さったもよう。CHARTMANさんも「理系大学生をターゲットにしましたが、それ以外の方にも興味を持っていただいたようです。これをきっかけに数学を興味をもってもらえれば」と、一連の反響を振り返っています。

 ちなみに、CHARTMANさんが記した「[1 2]×[3 4]」は、「行列の乗法」と呼ばれる演算式。大学数学で取り扱う機会が多いものです。筆者も学生時代に習いましたね。懐かしい~。

 しかしながら、この演算式は、CHARTMANさんのつぶやきにもある通り「計算不能な間違った数式」。行列の乗法は、今回のような『A×B』で計算を行う場合は、「Aの列数とBの行数が同じ場合計算可能」という前提条件があります。

 今回の「[1 2]×[3 4]」ですと、Aに関しては列数が2。反対にBの行数はこの表示ですと1となります。つまり、列と行の数が異なるため不可能。仮に計算可能にするならば、Bの3と4を縦表示にし、行を2にする必要があります。なおその場合、計算結果は「(1×3)+(2×4)=11」となります。

 というわけで、この計算式は「掛け算ができない→積が出ない→咳が出ない」というもう1つの洒落が含まれたもの。まさに「分かる人には分かる」数学アートでした。

 なお、「かけることができない」といっても、マスクはかけるものです。その点ご注意を。

<記事化協力>
CHARTMANさん(@CHARTMANq)

(向山純平)