昭和世代の筆者にとっては、とんと覚えがない「2分の1成人式」。それもそのはず、この十数年で行われるようになった小学校の新行事だそうです。
成人までの半分となる10才の成長を記念して、小学校が主体となり開催しているもの。各地にじわじわと広がっていき、今や多くの小学校で開催されています。
■親子ともに涙涙の感動イベント
実際に参加した人達の話によると「子供の感謝の手紙で泣いた」「親から子への手紙で子供の目がうるんでた」「もう10年、まだ10年。色んな事思い出した」など、とにかく親も子も涙涙のイベントなのだとか。
「2分の1成人式」は主に、参観日をかねて行うところが多く、内容は親への感謝を込めた手紙の発表、小さい頃からの写真の披露、将来の夢のスピーチ、逆に親から子への手紙があったりと様々。開催時期は10月から11月ごろ、そして1月から2月ごろと学校によって異なります。
■でも問題点も?秘密の暴露大会という指摘
この「2分の1成人式」は参加者の満足度が高いと言われており、ベネッセが2013年に発表したアンケート結果によると、9割近くもの親が参加したことを「満足」だと答えているそうです。
ただし問題点も指摘されており、小さい頃から現在までの思い出が子供により発表されてしまうことから、親によっては周囲に黙っていた離婚歴が暴露されてしまったり、里親や養子など複雑な家庭環境が明かされてしまうなど、プライバシー面の問題が懸念されています。
他にも子供として参加したことがあるという人達からはネット上に、「成人式とは違い強制参加なのが嫌」といった意見や、「親への感謝を強要されるようで嫌だった」「押しつけに感じた」という意見もあり親側、子供側ともに全ての人が納得しているわけではないようです。
こうした問題について、2014年に成人式大賞を受賞した、山口県光市の「光市成人のつどい」企画運営委員会委員長・石川博之さんに話をうかがってみたところ、「成人式と違うことは参加の強制性と年齢にあり、特に2分の1成人式は10歳ですので、プライベートの部分などの出すべきではない情報をどう扱うかが自分自身で判断できる年齢ではない点はまず大きく異なるものと感じます」と、実際の成人式との違いを指摘。そして問題点の改善については「学校教育に求められる趣旨とプライバシーなど家庭への配慮の観点から、たとえば“成長の証を伝える場”などのようなねらいやテーマを適切に設定し、取り組んでいくことが求められていくのではないでしょうか」とおっしゃっていました。
10才といえばちょうど思春期にさしかかる少し手前の年齢。親への反抗の芽も少しずつ出始めている頃です。そのため、普段なかなか言えない思いを伝え合うという意味では、とても有意義な機会のかもしれません。ただイベントとしては石川さんもインタビューで仰っていましたが「まだ発展途上の段階」。問題点にもあるように、つづけて行く上では今後一層の工夫が求められていきそうです。
(文:宮崎美和子)