こども家庭庁は7月22日、こどもや子育てに優しい社会「こどもまんなか社会」づくりのための意識改革を推進する、「こどもまんなかアクション」のキックオフイベントをオンラインで開催しました。
「こどもまんなか社会」とは、こどもや若者を取り巻く課題に取り組み、全てのこどもや若者たちが幸せに暮らせるよう、今とこれからにとってもっとも良いことは何かを考え、こどもに関する取り組みや政策を日本の中心に置いた社会のこと。
その実現を目指し、こどもや子育て中の方々が気兼ねなく様々な制度やサービスを利用できるよう、地域社会、企業など様々な場で、年齢、性別を問わず、全ての人がこどもや子育て中の方々を応援するといった、社会全体の意識改革を進めることを趣旨とした活動が「こどもまんなかアクション」です。
イベントには岸田文雄内閣総理大臣と、小倉將信こども政策担当大臣の他、こどもまんなか応援サポーターとしてタレントの丸山桂里奈さん、「こどもまんなかアクション」に関心を持つ親子として、モデルの宮城舞さん、お笑い芸人の完熟フレッシュさん、映像クリエイターのHikari Kizuna TVさん一家、おりおりんTVさんが参加しました。
■ 子育てあるあるトークセッションでは「公共交通機関や商業施設で肩身の狭さを感じる」の声も
最初に登壇したのは小倉大臣。少子化対策については子ども子育て予算の充実を図り、各施策をスピード感を持って実行させていく一方、子どもや子育てに優しい社会づくりを進めていくための意識改革を進めるべく「こどもまんなかアクション」のスタートを宣言。あわせて色とりどりの文字がかわいらしい「こどもまんなかマーク」がお披露目となりました。
続いては、丸山さん、宮城さん、完熟フレッシュさん、Hikari Kizuna TVさん一家、おりおりんTVさんを交えたトークセッション。小倉大臣に加え、岸田総理も登場し、参加者らと同じ目線の横一列に並んで座り、話に耳を傾けていました。
トークテーマは子育て当事者の親子による「子育てあるある」。
その中で丸山さんは「新幹線で子どもが泣き出すと申し訳ないから、長距離移動時は車を使っている」、Hikari Kizuna TVさんは「見た目では分かりづらいが、息子が自閉症で突然騒ぐこともあるので、今日は北海道から個室のあるフェリーで来た」、おりおりんTVさんは「商業施設を利用時にベビーカーを使っていると、満員のエレベーターになかなか乗れず何度も見送っている」といった、あるあるエピソードを披露。どの家庭も、特に公共交通機関や商業施設の利用時に、周囲の目を気にしたり、肩身の狭さを感じたりしているようでした。
こうした声に対し、岸田総理は「20年前は3人の男の子を育てていて、家の中はひっちゃかめっちゃかでしたから、私にも重なる部分があった」と大いに共感した様子。
続けて「支援や制度も大事だが、社会全体として子育てへの理解がなければ、本末転倒。ぜひみんなでバックアップできる、こうした社会を作っていきたいと改めて思いました」と、コメントしました。
小倉大臣は「先日新幹線を利用していた際、おそらく旅行で新幹線を利用しているようであったご家族が同乗していて、お父さんお母さんと一緒に居られるのが楽しくてはしゃいでしまっている子どもたちに対して、『静かにしなさい!』と常に注意しているのを見て、ご両親もたまの休日を家族で楽しみたいはずなのに、ずっと肩身の狭い思いをして子供に注意し続けなければならない光景に、『これでいいのかな』と考えるようになった」
「そんな時に周囲の理解があれば、気持ちが救われるようになるんじゃないかなと思う。そのためにこれから取り組みを展開していく」と活動の意義について改めて言及しました。
■ 「こどもまんなかアクション」事例紹介 熊本博物館とJリーグの取り組み
続いてのセッションでは、すでに「こどもまんなかアクション」を実行している事例として、熊本博物館とJリーグの取り組みを紹介。熊本博物館館長の竹原浩朗さんと、Jリーグ執行役員の辻井隆行さんが登場しました。
熊本博物館では、独自に「こどもまんなかプラネタリウム」というイベントを開催。これは従来のプラネタリウムにおける「真っ暗にする」「静かにする」「途中入退出原則不可」という3つの約束を撤廃し、より親子連れが利用しやすいように変更を行ったものです。
具体的には「照明は薄暗い状態に留め、顔が良く見えるようにする」「泣いてしまってもOK」「途中入退室OK」といった内容に。
あわせて熊本市の子ども局と連携した「キッズコーナー・育児相談対応」「子育て支援施策・施設の紹介コーナー」を併設し、行政の取り組みを知ってもらう機会としても活用したそうです。
平日、週末それぞれで開催されましたが、利用者の満足度はなんと96%。開始前にすでにチケットが完売したため、参加できなかった方も多くいたことや、平日、週末で利用者層が異なるといった気付きも多くあったとのこと。次回以降の開催にいかしていくとのことでした。
続いては、Jリーグ執行役員の辻井隆行さんが登壇し、取り組みを発表。Jリーグは基本理念として「国民の心身の健全な発達」を掲げており、今だけでなく未来の方々の幸せに繋げるための活動を以前から積極的に行っています。
その中に、全国各地に存在する60のクラブチームによる「ホームタウン活動」があり、子どもと触れ合う活動や出張授業などを実施。「シャレン!」と呼ばれる社会連携活動において、ガイナーレ鳥取による休耕地で芝を育てる「しばふる」や、水戸ホーリーホックの「新しいフツウを子どもたちからプロジェクト~大豆ミートバーガー編~」、松本山雅FCの「ママサポ企画実施!」といった一部取り組みを紹介しました。
「スタジアムの中で今のお子さんやお父さんお母さん、多種多様な立場の方々が安心して安全に競技を見られるような運営に力を入れるのはもちろんだが、スタジアムの外でも地域社会、気候変動に対してもお子さんたちの声を真摯に聞いて、今後もプログラムを作っていきたい」と辻井さん。サッカーに限らず、積極的に地域振興に努めていく意向を示しました。
■ 岸田総理が総括「政策も大事だが社会も同時に変わっていく必要がある」
上記2事例の他にも、こうした「こどもまんなか社会」に賛同した団体や企業は多く、その一部がビデオメッセージで紹介されました。
最後に岸田総理は今回のイベントを通して「改めて子どもと共に過ごす時間が、私たちにとっていかにかけがえのないものであるかを強く感じさせられた」と総括。
「さまざまな給付を行うとか、保育の制度を充実させるとか、政策はもちろん大事だが、こういった政策を皆さんに気兼ねなく利用したり、活用したりしてもらうために、社会も変わっていかなければならないと思います。『こどもまんなかアクション』をスタートするが、これを機に子育てに優しい社会の輪が全国に広がっていくことを期待したいと思います」と、締め括りました。
スウェーデンやフランス、ドイツでは「自国が子どもを産み育てやすい国だと思うか」の問いに、「そう思う」と回答した方は8割にのぼりますが、日本では4割程度と大きな乖離があります。今後の施策を通して、こうした基準に近付けることが期待されます。
取材協力:こども家庭庁
(山口弘剛)