
シンガポール国立大学(National University of Singapore、以下NUS)の起業活動の中核を担うNUS Enterprise(NUSエンタープライズ)は2025年9月16日、シンガポールにおけるディープテックのグローバルイノベーション拠点としての役割を強化するため、2つの主要な共同投資パートナーシップと国際教育イニシアティブを発表しました。
本発表は、同日オープンした新たなイノベーション拠点「i3ビル」の開所式において行われました。
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■ディープテック・ベンチャー向け資金と連携を拡充
NUSエンタープライズは、シンガポール経済開発庁(EDB)およびEnterprise Singapore(ESG)の戦略的投資プラットフォームである SG Growth Capital と新たな共同投資枠組みを立ち上げました。
これにより、ディープテック・スタートアップや選定VCファンドへの資金流入が拡大されます。VCファンドへの投資額は、SG Growth Capitalの評価に基づき、NUSエンタープライズの投資にマッチングする形で実施されます。
さらに、NUSエンタープライズは Lotus Singapore Group 傘下の Lotus One Investment と総額2,000万シンガポールドル(約23億円)の共同投資契約を締結しました。両者はNUS発スピンオフやVCファンドを共同で支援し、スタートアップへの共同投資による利益は、NUSエンタープライズのイノベーションおよび起業家支援プログラムの強化に再投資され、インパクトをさらに拡大します。
これらの取り組みにより、BLOCK71東京や名古屋を含むNUSエンタープライズのグローバル・ネットワークに属するスタートアップへの支援が拡充されるとともに、VCファンドへの共同投資も広がります。
■NUS VCプログラムについて
今回の発表は、2025年7月に始動した総額1億5,000万シンガポールドル(約170億円)の「NUS VCプログラム」を補完するものです。同プログラムは、NUSエコシステム内の有望なスタートアップ、とりわけ「National Graduate Research Innovation Programme(National GRIP)」から生まれたスタートアップを含むチームを対象に、初期段階のテックイノベーション支援を強化することを目的としています。
NUS VCプログラムは、以下の2つの柱で構成されています。
1.VCファンドへの投資
初期段階のディープテック投資において優れた実績を持つVCに対し、NUSは総額5,000万シンガポールドル(約39百万米ドル)を投資。スタートアップは、時間・専門知識・ネットワークアクセスを含む体系的かつ実践的な支援を受けることができます。初期のパートナーには「Granite Asia」と「4BIO Capital」が参画しています。
2.スタートアップへの共同投資
NUSは、NUS関連のスタートアップに特化した独立運用型の投資ファンドに総額1億シンガポールドル(約78百万米ドル)を拠出し、有力VCパートナーとの柔軟な共同投資を実現します。
NUS学長 タン・エンチェイ教授(Professor Tan Eng Chye) コメント
「NUSは、ディープテック・スタートアップが成功するための強固な道筋をつくることに尽力しています。今回のパートナーシップにより、スタートアップは資金、ネットワーク、専門知識へのアクセスを一層拡大でき、ディープテック・イノベーションを推進するNUSの役割が強化されるとともに、シンガポール、地域、そして世界のスタートアップ・エコシステムの活性化に貢献できると考えています。」
NUSシニア・バイスプレジデント(イノベーション&エンタープライズ) タン・シアン・ウィー博士(Dr Tan Sian Wee) コメント
「SG Growth CapitalとLotus One Investmentの支援を受けることで、NUSのエコシステムに属するディープテック・ベンチャーは、グローバルな専門知識、質の高い資金、そして広範なネットワークへのアクセスを得られます。教育・研究・事業化を統合するNUSのエコシステムがさらに強化され、優れた人材を惹きつけ、持続的なグローバルインパクトをもたらすスタートアップを育成していきます。」
■スタンフォード大学との国際教育連携
NUSエンタープライズは、スタンフォード大学 と共同で、Khetan財団の寄付により総額200万シンガポールドル(約2億3,000万円)のパイロットプログラムを開始しました。
「NUS-Stanford Khetan Foundation Launch Pad」と名付けられたこの取り組みでは、NUS工学系学生が国際チームに参加し、実際の産業課題に対するソリューションを共創・試作する機会を提供します。学生は両大学の教授陣の指導を受けながら、MetaやVenture Corporationなどの企業パートナーと連携し、実践的な経験を積み、国境を越えたイノベーションスキルを磨きます。
■NUSエンタープライズの「フライホイール」モデル
NUSエンタープライズは、教育・研究・事業化・資金を結びつける「フライホイール」を構築してきました。優れた人材を育成し、スタートアップを加速させることで、投資を呼び込み、雇用を創出し、社会に実際のインパクトを与える。こうして得られた成果がさらなる人材や資源を引き寄せ、次のイノベーションを推進する循環を生み出しています。
今回開所した「i3ビル」は、このフライホイールの中核を担う拠点であり、エコシステムのあらゆる要素を結集させ、シンガポールの起業家精神を世界へと発信していきます。
■シンガポール国立大学(NUS)について
シンガポール国立大学(National University of Singapore、NUS)は、シンガポールを代表する総合大学であり、アジアの視点と専門性を重視しながら、教育・研究・起業支援においてグローバルなアプローチを展開しています。シンガポール国内の3つのキャンパスに15のカレッジ・学部・スクールを有し、100か国以上から集まる4万人超の学生が多様性豊かなキャンパスコミュニティを形成しています。また、世界各地に20以上の「NUS Overseas Colleges」起業家教育拠点を設置しています。
NUSは学際的かつ実践的なアプローチを通じて、産業界・政府・学術機関と緊密に連携し、アジアおよび世界が直面する重要かつ複雑な課題に取り組んでいます。学部や卓越研究センター、企業ラボ、30を超える大学レベルの研究所に所属する研究者たちは、エネルギー、環境・都市の持続可能性、疾病の予防と治療、高齢化社会への対応、先端材料、金融システムのリスク管理とレジリエンス、アジア研究、そして人工知能、データサイエンス、オペレーションズ・リサーチ、サイバーセキュリティといった「スマート・ネーション」関連分野に注力しています。
公式サイト:https://nus.edu.sg
■NUS Enterpriseについて
NUS Enterprise(NUSエンタープライズ)は、シンガポール国立大学(NUS)の起業支援部門として、NUSを人材の集積地かつグローバルイノベーションの原動力とすることを使命としています。2001年の設立以来、約4,300人の学生を育成し、3,000社以上のスタートアップを支援、その中から10社のユニコーン企業を輩出するなど、世界中のイノベーション・エコシステムの発展に寄与してきました。
実践的な学び、エコシステム構築、技術の社会実装と商業化、戦略的なグローバルパートナーシップを通じて、次世代のチェンジメーカーが人類の喫緊の課題に取り組めるよう支援しています。NUSエンタープライズの目標は、今後10年間で10億人の生活を改善することです。
公式サイト:https://enterprise.nus.edu.sg
■BLOCK71について
BLOCK71は、NUSエンタープライズが有力企業や政府機関と連携して推進する取り組みであり、テクノロジー分野に特化したエコシステム構築とグローバルな接続拠点として機能しています。スタートアップコミュニティを結集・活性化するハブとして、シンガポールをはじめ、地域・世界の主要市場において新たな取り組みを主導し、メンタリングや成長機会を提供しています。
公式サイト:https://block71.co
■Annexe:パートナーコメント
SG Growth Capital CEO チュー・ヘントン氏(Mr Choo Heng Tong)
「SG Growth Capitalは、シンガポールのディープテック・エコシステムを強化するという共通の使命を実現するために、NUSエンタープライズと提携できることを誇りに思います。当社のグローバルなVC、起業家、ベンチャービルダーのネットワークを活用し、潜在力の高いスタートアップを創出し、シンガポールから世界舞台へと事業を加速させることを支援していきます。」
Lotus One Investment 会長 ニルマル・シン氏(Mr Nirmal Singh)
「私たちは『今日のテックスタートアップが明日のチェンジメーカーになる』という信念に基づいて活動しています。今回の貢献はこの信念に根ざすものであり、イノベーションと起業家精神の発展に対する強いコミットメントを反映しています。シンガポールのエコシステムを育成することこそが、テクノロジー、人材、持続可能な成長の未来を形作ると信じています。」