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偽ファッション広告がGoogle広告に大量出現 サポート詐欺被害に注意

 Googleはいったいいつになったら、詐欺広告の排除に本腰を入れるのだろうか。そう疑問を抱き始めてから、すでに数年が経ちました。

 世間で大きな話題になると、一時的に対策を強化するものの、それも長くは続かず、しばらくするとまた元通り。ため息しか出ません。

  • ■ 再び目立ち始めたファッションサイトの偽広告

     そんな中、2025年9月上旬頃からサポート詐欺サイトへと誘導する偽広告が、再びGoogle広告上に大量に出現し始めました。

     今回確認された入り口は、ファッションサイトを装った広告です。

     ファッションサイトを装った偽装広告は昨年頃から目立つようになっており、一時期はGoogleの対策が奏功したのか、ほとんど見かけない時期もありました。

     しかし9月16日時点で記者が調べたところ、最低でも100件近い類似広告の存在を確認しました。掲載先は、大手ニュースサイトから、小規模サイトまで。Google広告を入れている全サイトが今回もターゲットになっています。

     手口自体は従来のサポート詐欺と同じです。広告をクリックすると、まずは偽のファッションサイトに遷移。

    偽のファッションサイト

     同時に、クッキーの許諾を求めるボタンが表示されますが、これは押しても押さなくても結果は同じ。数秒のうちに、サポート詐欺へと導く偽の「警告画面」へと切り替わります。

    クッキーの許諾を求めるボタン

    ■ 「Windows Defender」を装う偽警告画面

     表示される画面には、いくつかの特徴があります。まず、大音量の警告音が鳴る場合と鳴らない場合があること。次に、画面がロックされ、操作ができなくなることです。こうした状況に初めて遭遇した人は、この時点で強い驚きを覚え、冷静な判断を失いやすくなります。

    警告画面

     さらに「Windows Defender セキュリティセンター」を装った偽のポップアップが現れます。そこには存在しないエラーコードや、サポート窓口を名乗る電話番号が大きく表示され、ユーザーを一層強烈な不安へと追い込みます。

     もちろん、正規のMicrosoftが電話番号を掲示してサポートを促すことは決してありません。

    ■ 右上の小窓が生む“リアル感”

     さらに今回記者が見たものの中で、特に目を引いたのは、画面右上に常に動いている小さな黒いウィンドウです。

    偽コンソール画面

     一見するとWindowsのコマンドプロンプトのようで、ディレクトリ一覧やファイル情報が流れているように見えます。実際にはHTMLやJavaScriptで作られた「偽コンソール画面」にすぎず、ユーザーのPCが本当に操作されているわけではありません。

     こうした視覚的演出は、パソコンに詳しくない人ほど「ファイルが勝手に操作されている」「個人情報が流出している」と錯覚させ、不安を極限まで高めます。

     そして、最終的には画面の電話番号に誘導し、遠隔操作ソフトのインストールや金銭の支払いを迫るのが常套手段です。

    ■ 遭遇しても慌てない 安全な離脱方法

     では、こうした画面に入り込んでしまった場合、どうすればよいのでしょうか。

     何よりも重要なのは、表示された番号に絶対に電話をかけないことです。表示内容はすべて虚偽であり、実際にウイルス感染や遠隔操作が行われているわけではありません。

     離脱する方法としては、通常の「閉じる(×)」や「キャンセル」ボタンではなく、ブラウザそのものを強制終了するのが基本です。

     Windowsなら Alt + F4、Macなら Command + Q が有効です。閉じられない場合は、タスクマネージャー(Ctrl + Shift + Esc)やアクティビティモニタから強制終了してください。

     また、ESCキーを長押しして全画面を解除し、ブラウザタブを閉じて抜けられる場合もありますが、最近はこの方法が通じないケースも増えています。確実なのはブラウザごと、あるいはタスクごと終了する方法です。

     終了後は、キャッシュや閲覧履歴を削除し、再度同じサイトに誘導されないようにしておくと安心です。さらに、正規のセキュリティソフト(Windows Defenderを含む)でフルスキャンをかけておくと、二重の安全対策になります。

     繰り返しになりますが、こうした画面は「心理的に電話させるための罠」にすぎません。冷静に強制終了することこそ、最も有効な対処法です。

    ■ 「復元」ボタンに潜む落とし穴

     余談ですが、ブラウザを強制終了して再起動した際、「前回のページを復元しますか?」と表示される場合があります。つい便利だからと押してしまうと、また同じサポート詐欺ページが立ち上がり、再び強制終了するはめになります。

    「復元」ボタンに注意

     再起動直後は「復元」を選ばず、新しいタブから利用を始めるのが安全です。もし誤って復元してしまっても、落ち着いて再度終了し、今度は復元せず立ち上げ直せば問題ありません。

    ■ Googleよ……社員食堂の充実より先にやることがあるはずだ

     Googleはこれまでも「不正広告の排除に取り組んでいる」と繰り返し説明してきました。しかし現実には、対策が一時的に強化されても長続きせず、気がつけば再び同じ詐欺広告が氾濫しています。これでは“いたちごっこ”という言葉すら生ぬるい。もはや放置に等しい状態です。

     利用者が安心してネットを使える環境を整えることは、広告で莫大な利益を得ているGoogleの最低限の責務です。それを果たさず、詐欺広告が大手ニュースサイトにまで堂々と出現している現状は、怠慢を通り越し、社会的に許されざる不作為と言わざるを得ません。

     もちろん、利用者自身も「ネット上の警告画面はまず疑う」「電話番号にはかけない」「慌てず強制終了する」といった基本的な心構えを持つ必要はあります。ただし、それを口実に責任を利用者側へ押し付けるのは筋違いです。プラットフォーム運営者としてのGoogleの責任は、そんな言い訳で免れるものではありません。

     その一方で、社員のブログやSNSには「食堂で三食無料!」「種類豊富で最高!」といった浮かれた声があふれています。福利厚生を充実させるのは大変結構なことですが、詐欺広告が氾濫する現状で「社員は豪華な食事を無料で満喫」と胸を張る姿は、利用者を愚弄しているようにしか映りません。

     詐欺でお金を失い、今日食べる分にも困る人がいる。片や社員はタダ飯を楽しむ――この残酷な対比を、いつまで放置し続けるのか。

     Googleよ、口先だけの「対策しています」ではもう済まされない。利用者を犠牲にして利益を守るのか、それとも社会的責任を果たすのか。

     社員の胃袋を満たす前に、ユーザーの安心を守ることにこそ、そろそろ本気を出してほしい――。そう強く願います。

    (宮崎美和子)

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  • 宮崎美和子編集長

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    鹿児島県産。放送関連、印刷、ソフト開発会社を渡り歩きさまざまな職種を経験。ライターデビューもこの頃。その後ゲーム会社に転職しMD(主にサブライセンス管理)、マーケを経験。運営・システム関連では管理職も務める。2008年にWEBライターとして独立。得意分野はオカルト、ネットの話題、過去職の経験から著作権と雑多。趣味は読書。40才すぎてバレエを習い始めました。

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