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性暴力は抵抗すれば防げる?被害者も悪い? その時被害者はどう行動しどう感じるのか

NHKで放送されている『あさイチ』の6月21日回にて「無関係ですか?性暴力」という特集が放送されました。

放送内容は衝撃的なもので、ネットでは放送中から高い関心を集めていました。

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    特に関心を集めたのが番組によせられた一般からの意見。
    「被害に遭ったときに激しく抵抗し大声を出せば避けられるのではないかと思う」(60代)
    「死ぬ気で抵抗すれば防げる。性交が成し遂げられたのは女が途中で諦め許すからである」(70代)
    いずれも男性からの意見でした。

    この意見については番組内で、タレントのジョン・カビラさんが一蹴。「ありえないですね」と断言し、「娘さんや奥さんが被害に遭ったとしてそれと同じ言葉を言えますか?」と語りかけました。男性2人の意見には放送中から、反論する意見がネットにはあがる一方、カビラさんのこの言葉に賛同する声も同時にあがり、大きく注目を集めることに。

    私は後から録画でこの番組内容を確認しましたが、カビラさんの言葉でほっとすると同時に、一般からの意見には「まだこういう考えがあるのだ」と思わずため息がもれてしましました。そうか、まだ「被害者も悪い」という考えは根強いのだなと。

    あくまで私が経験したこととなりますが、性暴力とはどんな時に行われるのか、女性は本当に抵抗できるのか……を少しだけお話したいと思います。

    【編集部注】
    本稿以下には、人によりショッキングと受け取る内容が含まれています。また、記載される警察対応は今から30年ほど前の話であり現在の出来事ではありません。その点ご了承ください。

    ■「ずっと見てました」

    中高の頃の私は内気で、眼鏡をかけ、クラスに一人はいるあまり目立たない存在でした。しかもブスの類。中学時代に周囲につけられたあだ名も「ブス」というものでした。

    ところがそんな私ですが、高校入学と同時にストーカーが現れました。
    当時通っていた高校が遠く、朝始発のバスに乗り、夕方は入学してすぐ部活に入ったこともあり、辺りが暗くなる頃に帰宅のバスを降りていました。

    日々の帰り道特に気にしてはいませんでしたが、バス停から家まで15分の道の間にある日突然、その人物が姿を現しました。

    その日も何気なく家へ向かい歩いていると、突然後ろから手を握られました。なにが起きたのかわからなくて驚いている私をその人は抱きしめて「ずっと見てました」と言って立ち去っていきました。勿論私は呆然。

    握られた手が気持ち悪くて、震えが止まりません。でも、そこは田舎の通り。他に人なんか通ってなんていません。急に怖くなった私は急いで走って帰りました。

    そしてその日から、毎日姿を見せるようになりました。翌日も、またその翌日も……。当時はまだ「ストーカー」なんて言葉もない時代。自分に起こっている出来事すらよく理解できていませんでした。とにかく日々逃げたいの一心。またそんなことを親に打ち明けるのも躊躇われ。一人その恐怖を抱えてただ逃げることで戦っていたのです。

    しかしそんなことも限界がやってきます。自分の身により危険を感じることがあり、高校の先輩に相談すると帰宅ルートの変更を教えてくれました。よくよく考えれば当たり前に思いつくことですが、恐怖に包まれ誰にも相談できぬままの私には、そんなことすら当時思いつかなかったのです。そして言われたとおり帰宅ルートを変更するとそのストーカーと会うことはなくなりました。「なくなったと思っていた」というのが正直なところです。

    その後事情があり、引っ越しをし、自転車通学もはじめたことでより安心したことを覚えています。それからの日々は穏やかなものでした。また高校生活も楽しくなった時期。ストーカーのことなどすっかり忘れていたのです。

    そんなある日曜日、学校の授業で使うものを探しに街の中心に出てエスカレーターに乗った時でした。後ろからお尻を触られて、スカートの中に手が入ってこようとしているのです。日曜の、人のいるところでのことにパニックになった私は、とっさに手で払いのけようとしましたが、その手をつかまれて、今度は指を絡めるようにして握ってきたのです。流石に驚いて振り返ると、そこにいたのは”あの時のストーカー”。驚きのあまり声も出ませんでした。出てきた思考は「見つかってしまった」という焦り。次に「なにをされるか分からない」という恐怖も襲います。

    でもなんとか手を振りほどきエスカレーターを駆け上がり、男の人が入りにくい手芸ショップに逃げ込みました。でも、待ち伏せされているかもしれない。買い物せずにここにいるのも……そう思っていた時、隙間から高校の先生の姿が見えたため一気に走りだしました。

    先生も日曜にこんなところで生徒がいきなり泣きながら現れると思っていなかったと思います。でも、先生は私が話はじめようとすると黙って安いランチを奢ってくれました。そして私の話を聞き終わると「今日は早く帰りなさい」とだけ言ってくれたのでした。

    もしもここで先生から「お前がもう少し長いスカートを穿いていたら」だの「注意力が」だの言われていたら、自分を責め相当落ち込み、学校にも行けなくなっていたかもしれません。男の先生でしたが、あの時なにも言わず話を聞いてくれたことで、この件は私の中で綺麗に昇華されたような気がしています。

    ■言葉に出さない行動での配慮

    その後は特に何も無く再び平穏な時間を取り戻すことができました。周囲の配慮があったのかもしれませんが、あの人とはもうそれ以来会うことは二度とありませんでした。

    そして受験を間近に控えて予備校に通い始めた頃。今度はまた違う人に付け狙われるようになったのです。私は先にも書いたように、クラスに一人はいる目立たない存在でした。しかし今度の相手は、同じ予備校のクラスメイト。授業中ずっと後ろを振り向いて私をみていたり、家の前に現れたりする行動に、友人たちもさすがに気がつき始め誰かかならず寄り添ってくれるようになりました。

    予備校の方も相手の様子を知っていたようで「もうすぐクラス替えだから待ってて」と言ってくれました。結果的にその人とは大学が全く違う場所になったため、それ以上の行為はありませんでしたが、手紙は家へ届いていました。ある時その手紙を目にして破り捨てたところ母から叩かれました。相手がストーカーだと告げてもそもそも「ストーカー」という存在がまだ広く周知されていない時代。一般認識そのままに「人からもらった手紙を破るなんて失礼な行為」だと言われました。でも、その人の名前さえ見たくなかったのです。この一件で私は親には絶対に相談してはいけないと思うようになりました。

    ■見過ごさずに助けてくれた人

    大学に入り寮で生活を送るようになると、防犯がしっかりしていること、学校の敷地から出ることがない、などのことがあって過去のことはすっかり忘れていました。そして大学3年に入った冬、事件が起こりました。

    当時まだ交際前の大学の先輩とクリスマスに会う約束がありました。そして訪れた当日、生まれてはじめてゲームセンターに連れて行ってもらい、食事をし楽しい時間を過ごしたことを覚えています。そして先輩と別れて、取ってもらったぬいぐるみを片手にウキウキと電車に乗り込みました。

    当時は事情があり寮から一時、祖母の家の近くにある、取り壊し予定の木造アパートに身を寄せていました。取り壊し予定ということもあり、建物には私以外住んでおらず、しかも周囲の家とは少し離れた場所に建てられていました。でも寮生活よりも自由な分快適。先輩に取ってもらったぬいぐるみを手に駅を出てからも楽しい気分のまま、ぼろい我が家へと歩いていたのです。しかし、駅をでてしばらくすると違和感に気づきました。自分が立ち止まると少し後ろで自転車が止まる音がするのです。怖くなりましたが、当時は近くのお店が駆け込めば助けてくれるシステムもなく、24時間営業のコンビニもないところでした。

    少し足早に歩き進めていると、公衆電話(まだ携帯電話は普及していなかったので)が目につきました。でも、もう少し歩けば、国道に出ます。家は一度国道沿いを歩き、陸橋を渡らなければならないのでそこから先自転車が追ってくることはないと思って国道沿いの道へ必死に出ました。

    車がたくさん通る道に出た時にはホッとしました。後はこのまま真っすぐ帰るだけ、そう思った時不意に後ろから自転車の急ブレーキが聞こえたかと思うと、強い力に引っ張られ気がつくと私はすぐ脇の路地へ連れ込まれていたのでした。

    地面に押し倒され、スカートの中に知らない男の人の手が入ってきました。「ここか!?ここか!?」そう怖い声で聞いてきたことも覚えています。私は必死に相手の急所を蹴ろうともがきますが、もがいた瞬間目に火花が散ったのを覚えています。顔を何度もなぐられ、押さえつけられたのです。どうしようもない程の力。これ以上もがけば命の危険さえ……抵抗する気力は失せていました。

    「もうダメかな、最初は好きな人が良かったなぁ」と諦めかけた時でした。「おい!そこでなにをしてる!」不意に男の人の声が聞こえて、私の上に覆いかぶさっていた人は走り去っていきました。

    声をかけてくれた人は私が路地に連れ込まれたところを見て、心配になり、慌てて戻ってきてくれた人でした。車を降りて覗き込んで痴話げんかじゃないと思い声をかけたと話してくれました。世の中には、こんな風に見過ごさず助けてくれる人もいるんだなぁと心からホッとしたのを覚えています。

    でもその後の私は頑なでした。助けてくれた人は、同じ人が犯罪を行わないよう今すぐ警察に行こうと声をかけてくれました。車があるから警察まで連れて行くという言葉に、私は首を縦に振れませんでした。なぜなら助けてもらったけど、この人の車に乗って本当に警察に連れて行ってくれるのか、という不信がその時は強かったのです。今思えば申し訳ないことですが、力でねじ伏せられ散々殴られ脅された後。いくら助けてくれたとはいえ、怖かったのです。

    結局、私はその人が心配する中、徒歩でアパートに帰りました。でも悪夢はそこで終わりではありませんでした。部屋に戻って、「ぬいぐるみ無くしちゃったなぁ」とぼんやりしながらお風呂に入っていると、玄関がガチャガチャと音を立てはじめたのです。そして次に風呂場の横の壁をドンドンと叩く音が。木造でできた家は物音が丸聞こえだったのだと思います。助けてくれた人が家に着くまで一緒に徒歩で見送ってくれていましたが、多分その後ろを誰かがつけていたのでしょう。恐らく犯人ではないでしょうか。

    さっきの犯人の顔が浮かびます。怖くて風呂場を飛び出すと、また玄関をガチャガチャと回す音が。住んでいたアパートには取り壊し間近ということもあり、電話はひかれていませんでした。もし電話が必要な時は、家を出て向かいの公衆電話に行かなければなりません。息を殺して私は耐え続けました。布団をかぶり、一人じっと祈ることしかできなかったのです。そしてその何者かは明け方までドアを壊しそうな勢いでドアノブを回し続けました。やっと明け方になりいなくなってくれた時には、心からほっとしたことを覚えています。

    そしてその日の朝、近くに住む祖母の家を訪れると自分の顔に痣があることを知りました。靴も壊れていたので、適当なものを借りて交番に行くと、警察署まで行って調書を作る必要があるからと言って警察署へと連れて行ってもらいました。

    ■調書という名のセカンドレイプ

    その時、調書を取ってもらいながら、何度も「どうして助けを呼ばないの」「どうして電話しなかったの」とずいぶんと言われました。そして「クリスマスにスカートで出かけると、彼氏としてきたと思って誤解されるんだよ」と言われて黙るほかありませんでした。

    最後に調書を取り終わったところで、警察の人から「ところで、あなたは未成年だからこのことを捜査をすると、親に連絡を入れなきゃいけなくなるけどいいのかな?」と言われました。「どうして親?」というのが一番の疑問でしたが、続けて更に「犯人が捕まったら、あなた証言が必要だけど大勢の前で証言できる?」と言われた上で「どうする?」と問われたのです。つまり事件にするのかしないのか、ということでした。

    当時は性犯罪被害者に対する配慮はあまり徹底されておらず、裁くためには証言台に立たなければなりませんでした。「女の子が自ら証言するケースはないよ。」担当警察官はこんなことも言いました。

    そして続けての言葉に驚愕したのです。「あなたの場合傷害だけで済むし」と。どうして昨日、助けてくれた人の言う通りその場で警察に行かなかったのだろうと後悔しました。彼がいたら、もう少し話は違っていたかもしれません。

    私は調書をとり下げ、代わりに犯人に家を突き止められているかもしれないことを伝えました。警察の答えはパトロールするという返事でしたが、顔の痣が消え、年末に実家に帰省するまでの数日、毎晩10時から翌朝までドアノブを壊そうとしている間に警察がきてくれたことはありませんでした。

    ここまでくると、大体もうこういう被害に遭わないと思われがちですが、友人曰く「大人しいから狙われやすいのかも」ということらしいのです。それを裏付けるよう、より酷いことが私の身にふりかかります。

    ■「処女膜破られたわけでもないから傷害にもならないよ」

    大学生の終わり際、授業も少ないため実家から週に一度新幹線で通学するようになりました。
    朝早くに新幹線に乗り、自由席に陣取り課題をして午後からの実習の手順を頭に叩き込み……でも毎回そういうわけにもいかず眠ってしまうことがあります。その日も脚にコートをかけ、バイトの疲れからぐっすり眠っていました。

    違和感を覚えたのは、下半身で何かが動いているという感覚ででした。残念なことに疲れ切って爆睡していた私はコートの中に入った手が下着に触れるまで全く気づかずいたのです。

    ビックリして目を覚ました私に、相手は「あ、本当に寝てたんだ」って笑いました。起きたところでやめてくれる様子はなく、より身体を触ってこようとします。

    「やめてください」とどうにかの思いで言うと、「おじさんを気持ちよくさせてくれたら」と言って強引に手をつかまれ新幹線のトイレに連れ込まれてしまいました。周囲に人はいたのに見て見ぬ振り。

    連れ込まれてすぐやっと我に帰ります。でも心の中はパニック。声も出ないし、身体も動かない。硬直したまま体中を触られてしまいました。そうこうしているうちに男は身支度を調え、私の荷物を持つと「●●駅で降りよう、ホテルでしようよ」そう言い出しました。

    恐怖で逃げようにもドアは相手の向こう側。とにかく怖い以外の感情が湧き上がらない状況の中、出てきた言葉が「とにかく授業を受けないと卒業が出来ないんです!」。必死にこればかりを繰り返していました。でも言い続けるうちに段々声が出始め、最初かすれていた声もハッキリ出るようになり、相手は騒ぎになると思ったのか「仕方ないなぁ」と言って男は私を降車駅で解放してくれました。「次はセックスしようね」と言って。

    私はそのまま駅の事務所に向かい、事情を話しました。直ぐに鉄道警察が人相などで相手を探したようですが逃げられていました。

    そして、鉄道警察での調書が始まりました。全部話をして、調書を書き終えました。もう、当時は成人していたので、以前のように親に言うから諦めなさいと言われることもないと思っていました。でも、そこで言われたことは一生忘れられない出来事になりました。

    「あなた処女?違うなら、処女膜破られたわけでもないから傷害にもならないよ」
    「中に出されたわけでもないんでしょ?」

    警察の方は男性2人でした。
    これほど恥ずかしい言葉を駅の事務所で、しかも男性2人に言われるなんて思いもしませんでした。あまりの言葉にそのまま「もういい」と言って駅を出て、大学に向かったことを覚えています。

    当然授業にも間に合いませんでした。遅れて研究室に顔を出すと、教授が「あらあら」と私の顔を見て心配そうにしてくれました。「ちょっとトラブルで、授業出れませんでした」、と言うと先生はなにも言わずに「あらあら」と笑って問い詰めることはしませんでした。でもその時はそれだけで十分でした。

    その後、同じ新幹線でその人と会うことはありませんでした。会わないよう乗る時間をずらすなど自衛をしたからかもしれません。ですが時間をずらそうにもずらせるのはせいぜい前の時間ぐらい。卒業するまで、ずっと緊張の中新幹線通学を続けたのです。そして社会人になる頃、痴漢専門で女性の警察官が配属されるようになったと聞きましたが、私が抱いた不信感は未だ当時のまま心の中に残っています。

    ■知人からの被害、軟禁、罵倒

    そしてここまでは全く見ず知らずの人からの被害。性犯罪は知り合いからされることもあるのです。私の中で最大の性犯罪被害は知り合いからのもでした。

    大学時代、一時アルバイトをしていました。
    その時、商談会がありその場に販売員として来ていた男性と知り合いになりました。バイト先の親会社に営業に来ていた人で、話の上手な人で面白い人でした。

    バイトが終わりタイムカードを切る時に向こうも商談が終わり出口にいたということがきっかけで食事に誘われました。
    以降、時々食事に誘われるようにもなりましたが、私にとっては取引先の人の感覚。それに当時は遠距離ながら彼氏もおり、そのことはバイト先にも相手にも話のついでに伝えていました。また、食事の会話は特に恋愛発展を望むようなものではなく、仕事やごく普通の雑談ばかり。あくまで仕事仲間、取引先との食事ぐらいの感覚だったのです。

    そんなある日、食事の後夜景を見に行こうと誘われました。当時は既に実家に帰っていたので、「家は門限が厳しく帰宅時間がある」と告げると、「それまでには帰す」と言われたため、そのまま相手の車に乗り込みました。

    その後、車の中でいきなり襲われてしまったのです。その時も激しく抵抗しましたが、「今まで食事を奢ってきたんだからこれぐらい」「直ぐに気持ちよくしてやるから」そんなことを言われたような気がします。そして「セックスしたからもうこれで恋人同士」だと言われてしまったのでした。

    お付き合いの予定のない人と突然こういうことになってしまいましたが、相談する相手はいませんでした。警察への不信は大きかったですし、親になんて言えません。

    私の親は異性関係に関しては昔からとてもうるさく、大学生になっても男性関係が少しでもわかるようならば「ふしだら」とののしるほどでした。それもあり、レイプ被害にあったとはやはり言えなかったのです。なにより、自分に隙があったのだと自分を責めることしか出来ませんでした。

    更に、遠距離だった彼氏に別れの手紙を目の前で書くよう言われ、身体の関係を持ちたいときに会社の前で待ち伏せされる。とてもじゃないけど会社にも言えません。そんなある日、待ち伏せされていた日に月経が来ていたため断ると、相手の家に連れていかれて「今なら妊娠しないからいいよな」と言われてしまったのでした。今までだって避妊してきたことないくせにと思うのですが、怒ると手をあげるため言えません。そしてその行為の後、部屋から出ないように言われてしまいました。洋服も全て取り上げられ、実質の軟禁状態。

    バイトも行けず、服もなく、月経の気配でトイレに行く。そして夜になって相手が帰ってくると相手をする。相手は私の住所も名前もバイト先も知っていて逃げることが出来ません。更に月経が終わっても解放されず、今度は「早く妊娠しろ」と言い出します。そんな時、助けてくれたのはたまたま訪れた相手のお母さんでした。

    事情を知ると服も探してくれ、「息子が迷惑をかけました。あなたは逃げなさい、もう関わっちゃダメ」と言ってくれたのでした。
    その時にはじめて、相手が独身と偽っていたこと、離婚係争中で親権を得るために母親になれそうでかつ母親の面倒をみてくれそうな人を探していたことを知りました。何度も謝るお母さんに、謝って欲しいのはあなたではないのだけれど、と思ったのも事実です。

    お母さんも、今まで甘やかしてきた自分の責任なので、きちんと叱ると言ってくださったこともあったので、その場を逃げ出すことが出来ましたが、やはり警察には通報する気持ちになれませんでした。そして数日ぶりに家に帰ると部屋に「ふしだらな子供に育てた覚えはない」という母の走り書きが置かれていて、深く傷つきました。

    ■コップから零れたミルクは元に戻らない

    今、ここまで色々なことを書いてきたのですが、別に「大変だったね」とか言われたいわけではありません。

    今ではあったことはきちんとこうして話すことも出来ますし、今や人の親となり、子供は既に大学生。
    子供にはこう話しています。「お母さん性犯罪にあったことあるから、そういうのをもし見かけたらまず”なにしてるんだ”って大声を出してあげてね」と。(複雑な顔はしてましたが)

    時代がかわり、性犯罪を裁きやすくなったとはいえ、自分の被害に未だに苦しむ人の姿を知っています。私も克服できたと自分が思っているだけかもしれません。未だふと思い出すことはあります。

    この痛みは誰にも伝わらないかもしれません。けれど、こういう被害を受けている人が必死に生きているということも覚えていてくれたらいいなと思います。

    「被害にあったことを責めてはいけない」
    「相手の気持ちを思いやらない言葉をかけない」

    と番組では取り上げていたそうです。でも実際自分が被害に遭った時に誰にどうして欲しかったのかと言えば、今もよくわかりませんし、ここまで書いてもみつかりません。

    こうして吐きだす、そしてこういうケースがあるから気を付けてねと言える機会を持つ私は良いのかもしれません。だってコップから零れたミルクは元に戻らないのと同じで被害者の心に出来た傷は塞がる方法をまだ持たないのです。せめてそのことだけでも知っていただけたら、幸いです。

    (天汐香弓 / 画像・写真AC)

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