近頃性描写については色々と制約があったり、その反面で「性の多様性」については社会的な認知が広まってきたり……という感じですが、人間とは比べものにならないほど多様なのが昆虫の世界。
普段あまり知られることのない昆虫の性について、イグノーベル賞を受賞した昆虫学者の上村佳孝さんも推薦する本が2018年6月25日に発売されます。
普段は分子生物学などの図書を手がける株式会社一式出版が、本格的な「虫取りシーズン」である夏を控えてリリースしたのが「昆虫たちの不思議な性の世界」(税抜3800円)。
上村さんらの研究グループがイグノーベル賞を受賞したのは、オスとメスが持つ交尾器(動物でいう性器)の構造が通常の生物と逆になっている昆虫(トリカヘチャタテ)の発見によるものでしたが、昆虫の世界はこの例をはじめとして、様々な「性の形」があるんです。
たとえば、アニメ「マジンガーZ」に出てきた「あしゅら男爵」のように、体の左右で性別が異なる「雌雄モザイク」が発生するノコギリクワガタ(片方だけ大アゴが発達する)や、幼虫の段階で産卵する幼妻のような「幼生生殖」や「処女生殖」なんていうものも。また、交尾に至るまでに交わされる「愛のコミュニケーション」も様々です。ホタルのような光の明滅、セミやコオロギ、スズムシに代表される音にも、様々な方法が存在します。
交尾の方法も様々です。双方の交尾器がある位置にもよるのですが、「どうしてこうなった」的なありえない姿勢で交尾する昆虫や、時間も一瞬から長々とかかるものまで。交尾が終わったらオスが食べられてしまうカマキリのような昆虫もいれば、オスの体に卵を産み付けてオスが子育てをするタガメなどのコオイムシの仲間、群で共同して子育てを行うハチやアリの仲間など、産卵や子育ての仕組みも多種多様。これは昆虫たちが生息する環境に適応して進化した結果なのです。
この本では、様々な昆虫の性の形を通して「性とは何か」を考えられる作りになっています。さらに本に記載されているQRコードを読み取ると、映像や音声などが再生され、文章だけでは伝わらない情報が得られるという仕掛けも。あんなことやこんなことまで、知られざる昆虫の繁殖戦略、のぞいてみませんか?
情報提供:一式出版株式会社
(咲村珠樹)