ある日帰還した我が家の猫の首輪に、知らないだれかからの手紙がついていたら……。まるで小説や漫画が現実になったようなシチュエーションが現実に起ったというTwitterの投稿にネットから反響が相次いでいます。

 投稿者はキャットクリニックさん(@catsclinic)です。2019年4月3日開院に向けて準備中の獣医師さんで、これまで動物病院に16年勤務していました。2012年頃から2015年ごろまで3年ほど遊びに来ていた猫(大豆ちゃん)が、初夏(6~7月ごろ)にノミ除けの首輪をしていたのでお手紙をくくりつけてみたところ、翌日に飼い主さんからの別紙で返信が来ました。それに対してさらに返信をしましたが、次の日に大豆ちゃんが来なかったため2通目の返信があったかは不明のまま。飼い主さんや大豆ちゃんの迷惑がかからないようにとの配慮もあり、実際のやり取りからは年数を空けてツイートしたそうです。

 ネットでは「感動した」など反響も大きかったのですが、その中に思いがけない人からのリプライが……。なんと大豆ちゃんの飼い主で大学3回生のこんぼさん(@combo1212)からでした。大豆ちゃんの首輪についている手紙を見つけたのも、当時中学生だったこんぼさんです。大豆ちゃんがどこかでお世話になっているみたいだと話し合っていたご家族は、手紙を読んで予想が確信に変わり大変盛り上がりました。

 こんぼさんは早速、返信を書くことにしました。大きい紙は大豆ちゃんの邪魔になってかわいそうと思い極力小さな紙に小さい文字でたくさんの思いをつづりましたが、その手紙は届かず、雨に濡れた大豆ちゃんがそのまま持ち帰ってきてしまいました。ヨレヨレになってにじんでしまった手紙と同じものをもう一度書くのは大変だったため、キャットクリニックさんからの質問に端的に答えることにしました。お礼の言葉とこんぼさんからの質問をひとつだけ書き足しました。「いつごろからそちらに行ったりしてるんですか」

 大豆ちゃんとの最初の出会いは、こんぼさんと弟さんが訪れた近くのペットショップでよく通る猫の鳴き声を聞きつけ2人で声の主を探したところ、お店の入り口の外側に置いてあったケージの中に貰い手募集中の仔猫の頃の大豆ちゃんを見つけました。そのお店ではほかの猫ちゃん達はガラスケージに入れられていたため鳴き声がほとんど聞こえなかったのだそう。

 耳かきの梵天(ぼんてん)が大好きでよく玩具にしていました。夏になるとセミを家の中や手提げバックの中に運び込んできたり、ヤモリを机の下やこたつの中に入れていたりと猫の本能の狩猟もかなりお得意だったようです。大豆ちゃんは褒めて欲しかったのかもしれませんが、飼い主のこんぼさんにしてみれば驚きと笑いを運んできてくれたのでした。いたずらっ子で、それでいて警戒心も強く来訪する人にはなつかなかったという大豆ちゃんは一昨年に虹の橋を渡り天国へと旅立っていきました。

 Twitterを通して、不思議な縁が再び繋がりました。キャットクリニックさんは、手紙のやり取りのあとも2年くらいはご自宅の周辺で大豆ちゃんを見かけていました。別のおそらく生粋の野良猫と思われる猫が毎日遊びに来るようになり、大豆ちゃんが近寄れなくなったのではと推察していたそうです。大豆ちゃんの安否はずっと気になっていて、ツイートが影響して誘拐されたりなどの被害がないかも心配していたそう。虹の橋を渡ったこともふくめ大豆ちゃんのその後の消息も分かり、大きな問題が起こることもなく、飼い主さんにも喜んでもらえたことが何よりだったとのこと。

 一方でキャットクリニックさんのツイートの画像を見て、大豆ちゃんにそっくりだなと思ったというこんぼさんは、手紙とツイートの文章から大豆ちゃんに間違いないことを確信したときは、手紙を書いた人だったのかという驚きとともに虹の橋を渡った大豆ちゃんに再会したような思いで手が震えていたそうです。もう一軒大豆ちゃんが立ち寄っていたお家との交流も続いており、大豆ちゃんが結んでくれた繋がりをこれからも大事にしていきたいそうです。

 猫を外飼いすることに関して、キャットクリニックさんとこんぼさんの意見は現時点で一致をみています。空豆から命名した空ちゃんを飼っているこんぼさんは、この猫は絶対に外に出さないと決めたそうです。怪我や異変にすぐ気づけるという利点にも気づきました。たまに外に出たがるときは、2階の外には降りられないベランダだけ解放してあげるそう。

 キャットクリニックさんは獣医師として、「これからの時代は飼い猫は外には出さない方がいいと言う他ありません。事故や感染のおそれ、何より周囲の住民に迷惑をかけるからというのが主な理由です」と話してくれました。家猫がふえたことで別の大きな問題も……。「家飼いの猫の生活環境が劣悪なことが多々あります。柔軟剤、ファブリーズ、香水などの香害は肝臓障害、神経障害などを引き起こす原因になり、死に至ることもあります。キッチンなどですぐに使ってしまいがちの塩素も身体の小さいペットには毒です」言葉が交わせない相手だからこそ人が寄りそって解決していくしかない問題は多いのかもしれませんね。

<記事化協力>
キャットクリニックさん(Twitter:@catsclinic / HP:catsclinic2018.com
こんぼさん(Twitter:@combo1212)

(山口さゆり)