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一周回って最先端?2002年のホームページ・ビルダーで作ったWEBページが新鮮

 ファッションや音楽、食の世界などでは、一定期間ごとに以前流行したものが再燃することがあります。最近の例だとタピオカブームが代表的なものですが、ひょっとするとネットの世界でも同じことがいえるかもしれません。2002年版の「ホームページ・ビルダー」を使って作成したWEBページの画像がTwitterに投稿され、話題となっています。

  •  2002年版の「ホームページ・ビルダー」を使い、当時を知る人にとっては懐かしく、知らない人にとっては新鮮なWEBページを作成したのは、TwitterユーザーのLo-Fi Clubさん。スカイラインのCM曲で知られるBUZZのようなハイトーンボイスのボーカルで、1970年代を思わせるサウンドが印象的な「ヨットヘヴン」というバンドのキーボード奏者として活動するミュージシャンでもあります。

     ここで「ホームページ・ビルダー」を知らない方に軽く説明すると、1994年に初めてリリースされたWEBページ作成ソフト(今の呼称では「アプリ」)。WEBページはHTMLという記述言語を使って作成されているのですが、このHTMLに関する知識を必要とせず、比較的簡単にWEBページを作れるようになっています。

     Lo-Fi Clubさんは「昔っぽいホームページが作りたくなり2002年のホームページビルダーをメルカリで購入(500円)したのですが、これ一生遊べますね…デザインが良すぎる」という言葉とともに、2002年にリリースされたホームページ・ビルダー7で作成したWEBページの画像をTwitterに投稿。「Welcome to my homepage」の共通する言葉が、当時の様子を思い出させますね。

    2002年版の「ホームページ・ビルダー7」で作成したWEBページ(Lo-Fi Clubさん提供)

     筆者が最初に感じたのは「2002年のバージョンだと、19年経った現在のPC環境では正常に動作しないのでは?」ということ。この点をLo-Fi Clubさんにうかがってみると「Windows10 Homeで通常通りのインストール手順で使えました。今の所、特定の動作によるクラッシュなども皆無です」とのことで、意外としっかり動作するようです。

     Twitterに投稿した4つのWEBページはLo-Fi Clubさんによると、あらかじめ用意されていたテンプレート。「どれも懐かしさマックスのレイアウトと、可愛げのある題材・イラストが素敵でした。個人的には炒飯を炒めるイラストがシュールで最高でした」と語ってくれました。

    2002年版の「ホームページ・ビルダー7」で作成したWEBページ(Lo-Fi Clubさん提供)

     このツイートのリプライには「懐かしいです~!」といった、当時を知る人からの反応のほか、音楽ファンと思われる方からは「これはポストヴェイパーウェイブを感じさせますね」という感想も。ヴェイパーウェイブ(Vaporwave)とは、1980年代~1990年代にかけてのポピュラー音楽をサンプリングし、それにさまざまなエフェクトを重ねてパッチワークのように切り貼りして作られる音楽のジャンルです。

     Lo-Fi Clubさんは、この2002年版ホームページ・ビルダー7の魅力を「レトロな素材集とロゴだと思います。最近は『いらすとや』のイラストが大流行していますが、ホームページ・ビルダーの素材からは『いらすとや』のさきがけと言えるような親しみやすさとユニークさを感じます」と語ります。確かに、素材の持つ一種の「ゆるさ」が、ノスタルジーを感じさせるのかもしれません。

    2002年版の「ホームページ・ビルダー7」で作成したWEBページ(Lo-Fi Clubさん提供)

     また「ツイートに対する反応の中にも『ヴェイパーウェイブっぽい』というコメントがありましたが、ある種のダサさが一周して最先端のむしろ洗練されたデザインに化ける現象は、まるでファッションや音楽の流行のようで。非常に面白い現象のように感じました」ともLo-Fi Clubさんは語ります。

     WEBページと共通性の高いグラフィックデザインの世界でも、アール・ヌーボーやアール・デコ、ロシア構成主義のような昔のデザイン手法が、新しさをもってリバイバルされる「一周回ったクールさ」というものがあります。ひょっとしたら、2002年のホームページ・ビルダー7が有するテンプレートや素材も、ダサいという時期を通過して、新しさを発見されるようになっているのかもしれません。

     ホームページ・ビルダーで作成されたWEBページは、かつてマイクロソフトのインターネット・エクスプローラー(IE)がブラウザの主流を占めていた頃、ほかのFirefoxといったオープンソース・ブラウザで表示すると表示できないものがある、という事象がありました。しかし、今のブラウザは互換性を最大限担保するように作られており、昔のようなことは起こりにくいのではないか、ともLo-Fi Clubさんは話しています。

     ちなみに、ホームページ・ビルダーは今でもバージョンアップが続けられており、最新版は2020年4月にリリースされた「ホームページ・ビルダー22」。スマホ向けのページも作成可能で、昔ながらの使い勝手で操作ができるようになっています。

     ブラウザ側の進化により「ホームページ・ビルダー的なアプローチでレトロなホームページを作成するのもこれからはアリな時代になりそうです」と語るLo-Fi Clubさん。今、あえて凝ったデザインにせず、初心者感あふれる「レトロなWEBページ」を作ってみるのも、クールなことかもしれませんね。

    <記事化協力>
    Lo-Fi Clubさん(@kukkuru)

    (咲村珠樹)

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