ジオラマの楽しみは、実際の風景を可能な限り再現することのほか、架空だけども「どこかで見たような」風景を自由に作り出せることにもあります。

 Twitterに投稿された、都内のどこかを思わせる風景ですが、これはフィクション。いかにもどこかにありそうと思わせる、リアルな街並みのジオラマです。

 作者のJunichiさんは、ジオラマ歴12年とのこと。実は「田舎や山岳地帯および海や渓谷沿いの水のある風景が得意で、都会は正直得意ではありません」と意外なお答えが返ってきました。

 今回、都会をモチーフにしたのは「ひっきりなしに行き交う電車とゴチャゴチャした電線類をテーマに、都会の喧騒を意識して」。新幹線と複数の電車が高架線を走る、東京の有楽町駅~田町駅あたりを念頭に作り始めたそうです。

 鉄道模型のジオラマといえば、線路を走る車両と風景の広がりを楽しむことが多いので、線路が伸びる横方向に長くなりがちですが、この作品は横500mm×奥行600mmと、むしろ奥行きが長いサイズ。これにより、ビルの隙間の跨道(こどう)橋を電車が行き交う、都会の重層的な街並みがうまく圧縮され、視線を奥へと誘導する形になっています。

重層的な奥行きのある街並み(Junichiさん提供)

 街並みを構成している建物は既存のストラクチャーだそうで、時に組み替えて別の風景にすることも可能。線路は在来線側が4本の複々線、新幹線側が2本の複線となっていますが「走行シーンの撮影では3本の楕円エンドレスにしています」とのこと。

配置された線路は6本(Junichiさん提供)

 走行シーンの動画ツイートでは、新幹線N700A、湘南(黄かん色とダークグリーン)色の帯を巻いたE233系3000番台(上野東京ライン)、京浜東北線のE233系1000番台が、次々と上路デッキガーダーの跨道橋を渡っていきます。確かに、東京で見慣れた風景。雑踏の音も聞こえてくるようです。

走行動画の1場面(Junichiさん提供)

 ジオラマというより、まるで特撮のミニチュアセットのようにも見える「大都会ジオラマ」。見る角度を変え、光線の具合を変えてみると、様々な光景に見えてくるから面白いですね。

京浜東北線が通り過ぎる(Junichiさん提供)

 Junichiさんは自身のTwitterで、色々なジオラマ作品の写真をアップしています。いつか訪れたことのあるような、でもどこにもない風景に、ジオラマの楽しみが凝縮されているようです。

<記事化協力>
Junichiさん(@jun1163)

(咲村珠樹)