おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

TwitterのDMでよく見る「アマゾンのバイト募集」の実態とは 詐欺グループとの一部始終を公開

 TwitterでDM欄を開放している方であれば、間違いなく一度は見たことがあるであろう「怪しいDM」。これまでに「出会えない系悪質サイトへの誘導」や「ネットショップ登録詐欺」など、その実態を探ってきましたが、今回は大手通販サイト「Amazon」の名を騙るアルバイトを調査してみました。

 結果から言うと、今回ももちろん怪しさ満点。高確率で詐欺グループの一員であろう相手とのやり取りの、一部始終を公開します。

  • ■ 内容はおいしい……が、早くも不穏な空気が

     今回、弊「おたくま経済新聞」サブアカウントにDMを送ってきたのは、「ひらがなのみで書かれた女性の名前」のアカウント。アイコン画像はかなりの美女というお決まりのパターンですが、これも十中八九他人の物でしょう。

     内容を見てみると、そこには「アマゾンのアルバイト、定員は10名のみ。PayPay+携帯電話=報酬です」「15分20000円~50000円の報酬を得ること日本からの参加者のみ募集」という文面が。これだけ高額報酬な割に、日本語の使い方が非常にお粗末ですよね。

     早くも不穏な空気を感じつつ、末尾に記載されているLINEのIDを登録してみると、今回は「T」と名乗る人物とつながりました。そして画像のアイコンは「PayPay」のロゴ。

    Tのアカウント

     Amazon業者のなりすましかと思いきや、PayPayのなりすましなのかな?この手の詐欺アカウントあるある「設定ガバガバ」というのはここでも健在です。それにしても無断でブランド名使用、さらにはロゴ使用とは……。

     なお、本稿ではリアルに全てを伝えるため、出てきた社名はそのまま掲載しますが、AmazonやPayPayはこのアカウントと無関係なことを念をおして先にお伝えします。勝手に騙られているだけの被害者側です。また、記事中掲載する画像では無断使用されたと思われるPayPayやAmazonのロゴ部分をはじめ、編集部が必要と判断した箇所にはぼかし加工をほどこします。その点、あらかじめご了承ください。

     とりあえずまずは、油断も狙って方言で挨拶をしてみると……。

    「こんにちは」「以前にオンラインでアルバイトをしたことがありますか?」

     と、気にする様子もなくスルー。淡々と仕事内容の説明をされました。日本人を名乗るなら、もう少しこう……反応がほしいところです。

    Tからの最初の返事

    ■ 必要なものはPayPayのスクリーンショット どう考えてもおかしい

     ざっくりまとめると「PayPay」の画面スクリーンショットを2枚送信するだけで報酬がもらえるとのこと。相手から提示された「マニュアル」と思われる画像には、アカウント名やIDが表示された画面と、ウォレット(残高や取引履歴)の画面が載っていますが……これはなんだか危険な香り。

    スクリーンショットで報酬が発生するのはどう考えてもおかしい

    相手から提示された画像

    あやしすぎる

     さすがに「はい、そうですか」とは従えないので、少し抵抗をしてみることに。「スクリーンショットは何に利用されるのか」「送信による報酬はいくらなのか」聞いてみると……。

    「報酬はアカウントのステータスに基づいて計算されます。そして自分の仕事を割り当てます」

     と、良く分からない回答が。要求に応じなければ、質問に答える気もない、といったところでしょうが、スクリーンショットの内容に応じて、報酬が決まるとは……一体どういう仕組みなのでしょう。

    質問開始

    ■ 「犯罪ではないか?」問い詰めると態度が一変

     こちらだって仕事の詳細が分からないのに、個人情報を提供するつもりはさらさらありません。これ以上は押し問答になりそうなので、「これは犯罪ではないですか?」とストレートに伝えると……。

    「これは合法アルバイトです」「多くの人がやっている」「心配ならこのバイト辞めろよ」

     と、やや口調を強めて反論してきました。

    回答が回答になっていない

    ついに切れた

     いやいや、どうみてもおかしい。色んな犯罪行為が想像できますし、相手にも明らかに焦りが見えるので、足を洗うようにさとしてみると……。

    「クソ病気ですか?」「あなたの母親を****してください」「愚か者」

     と、暴言を浴びせるだけ浴びせ、最後は既読無視。(以降掲載のTとのやりとりは、T退会後に撮影したものです)

    暴言開始

     初めから調査のためではありましたが……やはりまともな相手ではなかったようです。こんな人物や会社が高額報酬のバイトを斡旋しているとは、到底考えられません。

    ひどい暴言も

    ■ 同一グループと思われる「R」とも接触

     ここまで触れてきませんでしたが、実は「T」とは別に「R」というアカウントとも同時にコンタクトをとっていました。

     「R」はTよりもビジネスアカウントらしく、やり取りもシンプル。アイコンは女性のものが使用されています。

    Rとのやりとり

     そして恐らくこの「T」と「R」は仲間だと思われます。理由は途中で提示してきた「マニュアル」が共通であること。

    比較

     Tは部分的な切り抜きを提示してきましたが、Rは全画面をだしてきました。これから両者が同じグループであることが分かります。

     Rが出したマニュアルに書かれていた内容は、「Amazonにてマーチャント(出店者)の売り上げを伸ばすことを手伝う」お仕事でした。全文日本語が微妙すぎたので編集部で以下に整理してみました。ただし、意味がわからなかった部分もあるのでその箇所には「」の後補足をいれています。

    ○仕事内容:
    ・Amazonで指定商品を購入すると、相殺分のクーポンが得られる。
    ・タスク完了ごとに8000~15000の手数料がPayPayウォレット経由で送金される。
    ・タスクには10~20分かかる。完了後5~7日以内に、受領確認と良い評価をする必要がある。

    ○ミッション要件(多分、参加できる条件):
    ・PayPayアカウントの口座残高に5000の「証拠金」があること。
    ・Amazonアカウントを持っていること、アカウントは2つ以上の履歴があること。
    ・マーチャントと注文の安全を確保するため、タスク開始まえに「カットオフ国」(ここは意味不明)を指定する必要がある。PayPay履歴のスクショを送ること、「PayPayアカウントが銀行カードと結び付けられ検証が完了」(ここも意味不明)。

     まとめると、Amazonで指定の商品を購入すると、相殺分のクーポンが貰えるわ、手数料が貰えるわの楽なお仕事のようです。もちろんこれは嘘。

     調べたところこの詐欺の結末にはいくつかあるようです。

    ■ PayPay公式からは注意喚起も SNS経由のおいしい話は絶対にない

     PayPayの公式HPからも注意喚起が出ていますが、「アカウント情報をだまし取る」「残高を送らせたり、ログインに必要な情報を騙し取ろうとする」といった行為が実際に確認されているそうです。

     スクリーンショットを送ることはあくまで入り口にしかなりませんが、送ることで「いいなりになりやすい人」という判断が下されます。その後は、次々と要求が来るはずです。

     「これくらいなら大丈夫」と思っていても、相手はあらゆる手段を用いて金銭をだまし取ろうとしてきます。少しでも変だなと感じたら、最初の段階で辞めるようにしましょう。

     さらに調べると、「Amazonの商品をPayPayで購入し、品物は届かないけど報酬がもらえる」という内容で、高額商品の支払いをさせるというケースもあるようです。「Amazon」の名を語ったり、「PayPay」を使わせるアルバイトに、まともなものはないと思った方が良いでしょう。

    ■ 最後に……既読無視された程度でへこたれてはいられない

     既読無視で終わったTとのやり取りについても最後紹介しておきます。既読無視されたからといって「そこで終わり」、というわけにもいかないのが筆者の職業。RとTを同じグループに招待し質問することにしました。

     するとすぐにグループ退会。しかもRは完全無反応になってしまったので、Tを徹底的に招待しまくったところ……すぐにアカウントが消失。「メンバーがいません」とでたので、アカウント削除を行ったようです。色々聞きたいことがあったのに。

    グループに招待しまくった

     と思った次の日、なんと同じIDで別の名前で復活していました。一時消したとしてもIDはどうしても捨てきれないようです。Twitterでかなりの数DMを送りまくっているので、恐らく窓口としてはなかなか閉じきれないのでしょう。

    復活したT

     なお、新アカウントでは「D」を名乗っています。もちろん速攻フレンド申請!挨拶もしてみたのですが……無反応。どうも最初からブロックされたようです。これ以上は無理だと判断し今回の調査は終了。

     そもそもですが、実体のない相手とのやり取りは、常に個人情報や金銭が狙われている、と自衛の心を持ちましょう。収入を目的に副業を行う場合も、小さいことからコツコツ、100%クリーンな方法で行うよう慎重に。うまい儲け話などはこの世にない、という気持ちが一番大事です。

     最後に、今回は調査のために接触を試みましたが、安易な気持ちで真似をしないでください。詐欺の手口はどんどん巧妙化、複雑化しています。また、詐欺師は人を取り込むことを得意としています。編集部でも複数人でチェックをしながら互いのメンタル面など危うくならないよう、十分な準備を行い取り組んでいます。重ねてとなりますが「絶対に真似をしないよう」。

    <参考・引用>
    PayPay公式HP「SNSでのトラブルにご注意ください

    (山口弘剛)

    あわせて読みたい関連記事
  • Xで「ブロック確認サイト」装うフィッシング投稿拡散 Twilog公式が注意喚起
    インターネット, 社会・物議

    Xで「ブロック確認サイト」装うフィッシング投稿拡散 Twilog公式が注意喚起

  • Skebがクリエイターへのチャージバック詐欺に警鐘 海外ユーザーからの前払い申し出に注意を
    インターネット, 社会・物議

    Skebがクリエイターへのチャージバック詐欺に警鐘 海外ユーザーからの前払い申し…

  • 「私はロボットではありません」に偽装しウイルス感染 警視庁が注意呼びかけ
    インターネット, 社会・物議

    「私はロボットではありません」に偽装しウイルス感染 警視庁が注意呼びかけ

  • キャラ画像の誹謗中傷利用に懸念、「ワタシってサバサバしてるから」公式が注意喚起
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    キャラ画像の誹謗中傷利用に懸念、「ワタシってサバサバしてるから」公式が注意喚起

  • アニメ公式サイトを装う偽装サイト出現 「怪盗レーニャ」ドメインが悪用
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    アニメ公式サイトを装う偽装サイト出現 「怪盗レーニャ」ドメインが悪用

  • ちょ、まてよ。それ何のドラマだよ!「勇者」出演の偽キムタクとLINEで対峙した一部始終
    インターネット, 社会・物議

    ちょ、まてよ。それ何のドラマだよ!「勇者」出演の偽キムタクとLINEで対峙した一…

  • X、AI会話に“キャラ性”を追加 美少女モデル「Ani」などが登場する新モード
    インターネット, サービス・テクノロジー

    X、AI会話に“キャラ性”を追加 美少女モデル「Ani」などが登場する新モード

  • ウマ娘プロジェクト公式アカウント(@uma_musu)
    ゲーム, ニュース・話題

    「ウマ娘」公式が牧場見学のマナー徹底求める 無断立ち入り、無断撮影も

  • ファイル共有ソフトで思わぬ違法行為 開示請求や高額示談も
    インターネット, サービス・テクノロジー

    ファイル共有ソフトで思わぬ違法行為 開示請求や高額示談も

  • Jリーグ「横浜ダービー」でマリノスサポーターが花火・発煙筒 挑発行為にクラブ謝罪
    社会, 経済

    Jリーグ「横浜ダービー」でマリノスサポーターが花火・発煙筒 挑発行為にクラブ謝罪…

  • 山口 弘剛‌Writer

    記事一覧

    鹿児島出身・鹿児島在住。私生活では妻と共に2人の子どもを子育てしながら、地元のサッカークラブを熱烈応援中。仕事は元アパレル店長、元ゲームショップ店長を経験。現在はライター、イラストレーターとして活動。

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 待望の新作エピソードも 「あたしンちNEXT」、YouTubeで11月20日より配信決定
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    待望の新作エピソードも 「あたしンちNEXT」、YouTubeで11月20日より…

  • カービィのエアライダー、桜井政博こだわりの「酔い対策」が話題 アクセシビリティ配慮に称賛の声
    ゲーム, ニュース・話題

    カービィのエアライダー、桜井政博こだわりの「酔い対策」が話題 アクセシビリティ配…

  • Xで「ブロック確認サイト」装うフィッシング投稿拡散 Twilog公式が注意喚起
    インターネット, 社会・物議

    Xで「ブロック確認サイト」装うフィッシング投稿拡散 Twilog公式が注意喚起

  • 「ちいかわ」たちがリップのフタにちょこん キタンクラブの新作カプセルトイ「リップキャップマスコット」登場
    アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    「ちいかわ」たちがリップのフタにちょこん キタンクラブの新作カプセルトイ「リップ…

  • 実写映画「夜勤事件」、特報映像とキャスト情報が解禁 2026年2月20日公開へ
    ゲーム, ニュース・話題

    実写映画「夜勤事件」、特報映像とキャスト情報が解禁 2026年2月20日公開へ

  • 目指せ去勢マスター!「繁殖」テーマのローグライクゲーム爆誕
    ゲーム, ニュース・話題

    目指せ去勢マスター!「繁殖」テーマのローグライクゲーム爆誕

  • トピックス

    1. 目指せ去勢マスター!「繁殖」テーマのローグライクゲーム爆誕

      目指せ去勢マスター!「繁殖」テーマのローグライクゲーム爆誕

      海外の映画やゲームが日本向けにローカライズされる際、タイトルも和訳されることもしばしばですが、「あま…
    2. 実家の一室をレトロゲームショップ風に改造 本物の什器も揃えた昭和男児の夢空間

      実家の一室をレトロゲームショップ風に改造 本物の什器も揃えた昭和男児の夢空間

      一歩足を踏み入れると、そこはまるで平成初期のゲームショップ。ショーケースにはファミコンソフトがずらり…
    3. ケーキの上は只今工事中!3歳のわが子に作った「工事現場ケーキ」が楽しそう

      ケーキの上は只今工事中!3歳のわが子に作った「工事現場ケーキ」が楽しそう

      「はたらくくるま」が好きな人に刺さること間違いなしな「工事現場ケーキ」がXで話題です。説明がなければ…

    編集部おすすめ

    1. カービィのエアライダー、桜井政博こだわりの「酔い対策」が話題 アクセシビリティ配慮に称賛の声

      カービィのエアライダー、桜井政博こだわりの「酔い対策」が話題 アクセシビリティ配慮に称賛の声

      2025年10月23日22時より配信されたNintendo公式番組「カービィのエアライダー Direct 2」にて、ゲームクリエイター・桜井…
    2. 「なぜ誹謗中傷は起きたのか」 にじさんじ運営が加害者心理を公表

      「なぜ誹謗中傷は起きたのか」 にじさんじ運営が加害者心理を公表

      ANYCOLOR株式会社は10月22日、所属ライバーである甲斐田晴さんをめぐる極めて悪質な誹謗中傷・荒らし行為への対応結果を、加害者側の意識…
    3. 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」公開40周年 タイムサーキット型時計が登場

      「バック・トゥ・ザ・フューチャー」公開40周年 タイムサーキット型時計が登場

      株式会社Gakken(学研ホールディングスグループ)は、同作の映画公開40周年を記念して、劇中の「タイムサーキット」を再現した時計「バック・…
    4. 電気通信大学が注意喚起 京王線の車内広告に何者かが不審なQRコード“貼り付け”か

      電気通信大学が注意喚起 京王線の車内広告に何者かが不審なQRコード“貼り付け”か

      電気通信大学が10月21日朝、公式Xアカウントに声明を掲載。「京王線車内の本学の広告にQRコードは記載しておりません」と述べ、車内広告にQR…
    5. 特別災害対策本部車(国土交通省)

      消防車も自衛隊車もNERVも! 防災車両がずらり「ぼうさいモーターショー2025」10月26日開催

      東京臨海広域防災公園(東京都江東区有明)で、10月26日に「ぼうさいモーターショー2025」が開催されます。警察や消防、自衛隊をはじめ、通信…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト