旬なアニメを紹介する「新作アニメ操作網」。今回は前回に続き、2010年第4クールテレビアニメの纏めになります。
今回は各番組情報と、視聴感想を添えてご紹介。
ちなみに訳あって、『伝説の勇者の伝説』『薄桜鬼 碧血録』『屍鬼』『テガミバチREVERSE』については別の記事でコメントを加えたいと思います。ご了承戴ければ幸いです。
超常現象と、刑事による事件の捜査という、2つの要素を組み合わせたサスペンスアニメ。ストーリーは大団円とは言えないものの、登場人物の優しさが救いとなっています。
製作 | 日本放送協会 |
原作 | 神永学 |
シリーズ構成 | 川崎ヒロユキ |
キャラクター原案 | 小田すずか |
キャラクターデザイン | 芝美奈子 |
総作画監督 | 番由紀子/天﨑まなむ |
音楽 | R・O・N |
監督 | 黒川智之 |
アニメーション制作 | ビィートレイン |
出演者 | 小野大輔藤村歩/東地宏樹/川島得愛/関俊彦/小清水亜美/納谷六朗/他 |
『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』と同様に、竹達彩奈演じるメインヒロインが暴言を連発する作品。特に関東地方では、日曜深夜11時半から東京メトロポリタンテレビジョンで『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』、同12時から千葉テレビ放送で『えむえむっ!』が放送されたことから、両番組をセットで観る視聴者も多かった。
製作委員会 | メディアファクトリー/ティー・オーエンタテインメント/XEBEC/ランティス/AT-X |
原作 | 松野秋鳴(メディアファクトリー『MF文庫J』) |
シリーズ構成 | 小鹿りえ |
キャラクター原案 | QP:flapper |
キャラクターデザイン/ 総作画監督 | 堀たえ子 |
音楽 | 橋本由香利 |
監督 | 長澤剛 |
アニメーション制作 | XEBEC |
出演者 | 福山潤/竹達彩奈/早見沙織/佐藤利奈/田中理恵/他 |
2ちゃんねる用語で言うところのチバ重役枠の作品(チバ重役枠については、後に別の稿で改めて説明したいと思います)。物語の舞台は徳川幕府が政治を司っている21世紀初頭の日本で、登場人物は歴史上の武将と同名となっています。それらの人物は、元ネタが男性でありながら劇中では女性化されていることが多く、その点では『一騎当千』『恋姫†無双』『ストライクウィッチーズ』と同様の作品であると言えます。因みに最終回における敵キャラ・柳生義仙(声・水原薫)のモデルとなった人物は、『子連れ狼』の宿敵のモデルでもあります。
個人的に印象深かったのは、シャルル・ド・ダルタニアン(声・小清水亜美)のエピソードです。フランスから来日したダルタニアンは、徳川慶彦(声・櫻井孝宏)によって人体実験の道具とされ、尊厳を踏みにじられながらも、慶彦を守ろうとします。その健気な姿には落涙を禁じ得ません。
製作委員会 | ホビージャパン/ショウゲート/ランティス/ムービック/ジグノシステムジャパン/GENCO |
原作 | すずきあきら(ホビージャパン『HJ文庫』) |
シリーズ構成 | 金月龍之介 |
キャラクター原案 | Niθ |
キャラクターデザイン/ 総作画監督 | 宮澤努 |
音楽 | 加藤達也 |
監督 | KOBUN |
アニメーション制作 | アームス |
出演者 | 平川大輔/悠木碧/釘宮理恵/水原薫/櫻井孝宏/寿美菜子/小林ゆう/後藤沙緒里/他 |
2010年第2クールの『荒川アンダーザブリッジ』の続篇。前作に登場した荒川河川敷住人の面々の他に新キャラクターを加え(尤も前作の最終回のラストでチラッと顔を見せていましたが)、相変わらずのドタバタ喜劇を繰り広げました。特に中村悠一は声色を変え、『鉄のラインバレル』に続いて1人で何役も演じ、芸達者ぶりを見せました。最終回のラストでは河川敷の住人がずっと一緒に暮らしてゆくことを確信し、前作の終盤でも描かれた願いによって物語の幕を閉じました。
製作委員会 | 明記されず |
原作 | 中村光(スクウェア・エニックス『ヤングガンガン』) |
シリーズ構成 | 赤尾でこ |
キャラクターデザイン/ 総作画監督 | 杉山延寛 |
音楽 | 横山克 |
監督 | 新房昭之 |
アニメーション制作 | シャフト |
出演者 | 神谷浩史/子安武人/藤原啓治/杉田智和/大塚芳忠/中村悠一/坂本真綾/他 |
改暦した文明開化の時代(明治時代)を舞台に、陸軍軍人と妖怪の交流、そして悪しき妖怪との戦いを描いた作品。メインヒロインであるざくろ(声・中原麻衣)の母親の悲劇が描かれる一方、人間と妖怪の信頼、絆、愛情といったものも描かれ、未来への希望が開ける展開となりました。
ただ残念だったのは、明治という時代性をストーリーにうまく生かし切れていないように思えた点です。人間と同様に日本の住民であった妖怪の都合を無視し、明治政府が暦を西洋化したことに伴う社会の矛盾を鋭く抉ろうとした点は評価できるものの、科学文明を推し進める立場にある明治政府が、妖怪などという前時代的且つ非科学的な存在といかにして向き合うのかについてもっと描いてほしかったところです。
製作委員会 | アニプレックス/テレビ東京/NAS/ランティス/J.C.STAFF) |
原作 | 星野リリィ(幻冬舎『コミックバーズ』) |
シリーズ構成 | 岡田麿里 |
キャラクターデザイン | 長谷川眞也 |
音楽 | 杉本優 |
監督 | 今千秋 |
アニメーション制作 | J.C.STAFF |
出演者 | 櫻井孝宏/中原麻衣/日野聡/梶裕貴/近藤孝行/石住昭彦/小宮和枝/他 |
地上侵掠を企む謎のイカ娘と、海水浴場の人々が巻き起こす騒動を描いたギャグアニメ。中でも個人的に印象深かったのは第5話Cパート「飼わなイカ?」です。終盤以外殆ど日本語の台詞を用いず、情景描写のみで構成された本エピソードにおいて、四季が移り変わってゆく場面は、昭和49年の映画『砂の器』のクライマックスに匹敵する泣ける名場面でした。
製作委員会 | 明記されず |
原作 | 安部真弘(秋田書店『週刊少年チャンピオン』) |
シリーズ構成 | 横手美智子 |
キャラクターデザイン/ 総作画監督 | 石川雅一 |
音楽 | 菊谷知樹 |
監督 | 水島努 |
アニメーション制作 | ディオメディア |
出演者 | 金元寿子/藤村歩/大谷美貴/田中理恵/中村悠一/伊藤かな恵/生天目仁美/他 |
アメコミ風の絵柄を特徴とする、コミカルなアクションアニメ。下品なネタや性的なネタを豊富に含むものの、インターネット上の評判を見ると、本作を観ている女性視聴者は多かったようです。女性の主人公2人組が悪を蹴散らす爽快感が受けたのでしょか。
製作委員会 | 明記されず |
シリーズ構成 | ギークフリート |
メインキャラクター | 錦織敦史 |
音楽 | ☆Taku Takahashi &TCY Crew |
監督 | 今石洋之 |
アニメーション制作 | ガイナックス |
出演者 | 小笠原亜里沙/伊瀬茉莉也/石井康嗣/吉野裕行/中村たかし/小松由佳/藤村歩/槙口みき/千葉繁/他 |
2009年第4クールの『そらのおとしもの』の続篇。相変わらずやりたい放題のギャグ展開の嵐は痛快ですが、一方で、「愛」とは何かについて悩み苦しむカオス(声・豊崎愛生)の姿は視聴者の胸を打ちました。
製作委員会 | 角川書店/角川映画/クロックワークス/NTTドコモ |
原作 | 水無月すう(角川書店『少年エース』) |
シリーズ構成 | 柿原優子 |
キャラクターデザイン | 渡邊義弘 |
総作画監督 | 渡邊義弘/嘉手苅睦/石野聡 |
音楽 | 岩崎元是 |
監督 | 斎藤久 |
アニメーション制作 | AIC A.S.T.A. |
出演者 | 保志総一朗/早見沙織/野水伊織/福原香織/豊崎愛生/鈴木達央/高垣彩陽/美名/他 |
妖怪軍団同士の戦いを通じて、妖怪軍団の次期総大将・奴良リクオ(声・福山潤)の成長を描いた作品。良き仲間に恵まれたリクオは幸福であった。基本的に放送時間帯は深夜ですが、原作が『週刊少年ジャンプ』に連載されていることもあり、全日帯アニメとしての性質も持っているため、BS11では本放送が深夜、再放送が夕方に行われました。尚、続篇制作も決定しています。
製作委員会 | 集英社/東宝/読売テレビ/ポニーキャニオン/BS11/読売広告社/博報堂DYメディアパートナーズ |
原作 | 椎橋寛(集英社『週刊少年ジャンプ』) |
シリーズ構成 | 高橋ナツコ |
キャラクターデザイン | 岡真里子 |
妖怪デザイン | 田頭しのぶ |
音楽 | 田中公平 |
監督 | 西村純二 |
アニメーション制作 | スタジオディーン |
出演者 | 福山潤/大塚周夫/石田彰/森功至/中田譲治/堀江由衣/平野綾/前田愛/他 |
恋愛シミュレーションゲームを愛好する少年が、地獄よりの使者の依頼を受け、ゲーム的発想を現実世界に持ち込んで少女を口説くラブコメ。随所に主人公のゲームに対する情熱を表すエピソードが挿入され、単なるラブコメではない、ゲーマー魂溢れる一品となっています。尚、続篇制作も決定しています。
製作委員会 | テレビ東京/ジェネオン・ユニバーサル・エンターテインメント |
原作 | 若木民喜(小学館『週刊少年サンデー』) |
シリーズ構成 | 倉田英之 |
キャラクターデザイン | 渡辺明夫 |
音楽 | 松尾早人 |
監督 | 高柳滋仁 |
アニメーション制作 | マングローブ |
出演者 | 下野紘/伊藤かな恵/竹達彩奈/悠木碧/東山奈央/花澤香菜/他 |
2008年第2クール~第3クールの『To LOVEる』の続篇。前作はTBS系列で放送されたのに対して、本作は、製作委員会にTBSが出資してはいるものの独立UHF局で放送されました。主人公が多くのヒロインに囲まれるハーレムラブコメであることから、タイトルクレジットもそのような本作の特徴を如実に表しています。話数によってクレジット順の大改造が行われ、第8話と第11話ではメインヒロインのララ・サタリン・デビルーク(声・戸松遥)のクレジット順が6番目に表示されています(ララの妹であるナナ・アスタ・デビルーク(声・伊藤かな恵)よりも後)。このことが表しているように、多くの女の子が入り乱れて騒動を繰り広げる様子を楽しむ番組であったと言えましょう。
製作委員会 | ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント/TBS/XEBEC |
原作 | 矢吹健太朗/長谷見沙貴(集英社『ジャンプコミックス』) |
シリーズ構成 | 山田靖智 |
キャラクターデザイン/ 総作画監督 | 岡勇一 |
音楽 | 渡辺剛 |
監督 | 大槻敦史 |
アニメーション制作 | XEBEC |
出演者 | 渡辺明乃/戸松遥/矢作紗友里/名塚佳織/伊藤かな恵/豊崎愛生/他 |
この番組の粗筋は以下の通りです。「主人公・高坂京介(声・中村悠一)の妹・桐乃(声・竹達彩奈)は、アニメやゲームが大好きだが、ヲタクであることがバレると軽蔑されてしまうので、自分の趣味を隠していた。京介は、そんな桐乃が周囲に隠れて趣味を楽しむことに協力することになる。」このプロットのうち、“妹”という部分を“クラスメイト”に置き換えると、2008年のテレビアニメ『乃木坂春香の秘密』のプロットと同様のものになります。そして『乃木坂春香の秘密』も『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』も原作はいずれも電撃文庫であり、ヲタク趣味に反対するヒロインの父親役も両方立木文彦です。
ただ『乃木坂春香の秘密』と『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』が違う点は、前者は主に学校内及び家庭内でのヲタクを取り巻く状況を描いているのに対し、後者は世の中においてヲタクを取り巻いている状況を描いているという点です。例えば第5話「俺の妹の親友がこんなに××なわけがない」では、「ゲームやアニメは犯罪を誘発する原因であり、ヲタクは犯罪者予備軍である」とするマスコミの偏った報道が登場します。劇中の言説は現実世界における政治家や運動家、マスコミの言説と全く同一のものであり、本エピソードの描写は、マスコミがバイアスのかかった報道をしていると糾弾する、痛烈なマスコミ批判となっています。しかし『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』は全面的にアニメやゲームを擁護する訳ではなく、返す刀で現代のアニメの状況にも厳しい批判を加えます。第7話「俺の妹がこんなに小説家なわけがない」では、高坂兄妹の友人であり、黒猫と名乗っている少女(声・花澤香菜)が「アニメに限らずロリとエロを露骨に押し出してくる作品が多すぎるのよ。こんな低俗な駄作ばかりが売れてゆく状況は嘆かざるを得ないわねぇ。」と語っています。この台詞は現実の一面を突いています。女性キャラクターの露出が多いアニメのブルーレイディスクがよく売れているのは事実です。
この他、第7話ではライトノベルに対する諷刺も登場。何と桐乃が執筆したネット小説が雷撃文庫というライトノベルレーベルによって出版される運びとなるのです。黒猫は、次の第8話で桐乃の小説について「文法は無茶苦茶。なのにベストセラーですって?」と驚いています。ライトノベル業界は、未だ文章がこなれていない新人の作品を出版し、読者から著者の文章能力を酷評される事態がしばしば発生しますが、中学生が書いた、文法が無茶苦茶な小説があっさりライトノベルとして出版されてしまう劇中の状況は、そんなライトノベル業界への諷刺に見えます。とは言うものの、本作の製作委員会にはアスキー・メディアワークスが出資しているにも拘わらず自ら自社の商品を皮肉るというのは考えにくい。単なる偶然だとは思いますが、図らずもラノベ業界への皮肉になってしまったということなのでしょう。
更に第8話「俺の妹がこんなにアニメ化なわけがない」では、桐乃のライトノベルをテレビアニメ化する際、アニメスタッフが、スケジュールの都合だったり表現の都合だったり売り上げを伸ばすためだったりといった理由で原作を改変する様子が描かれます。劇中では、アニメスタッフが「コンテンツは最終的に利益を生まないといけない。(略)いいものにしないとお客さんは見てくれない、買ってくれないんです」と説明しています。アニメの作り手も商売でやっているから、大衆迎合的な作風が含まれてしまうことは、実際にあり得るかもしれません。この点において、第7話の黒猫の発言と根底で繋がっていると言えます。即ち、第7話で黒猫が言ったようなアニメは売れるが故に、アニメの作り手はその手のアニメを作っているという状況があり得るでしょう。以上のように『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』は現代アニメ界・ゲーム界・ラノベ界の病理を突く作品となっています(尤も、ライトノベルを改変してテレビアニメ化するというエピソードそのものが、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の原作を改変してアニメ用に作り出されたオリジナルエピソードであることは皮肉です)。
さて、本作は終盤において、小説原作のアニメというよりは、ゲーム原作のような展開を見せました。本作はゲームが物語上の重要な要素であることから、登場人物が決断を下す際、劇中にゲーム風の選択肢が登場することがありますが、第12話において2つの選択肢が登場し、どちらを選ぶかによってその後の展開が異なる(=パラレルワールドが発生する)という状況が発生しました。一方の選択を選んだ後の展開はテレビで放送され、もう一方の選択を選んだ後の展開(テレビ未放映の第13話~第15話)はネット配信されることになっています。本作の製作委員会にはアニプレックスが出資していますが、同社は、『化物語』でテレビ未放映の第13話~第15話をネット配信したり、『閃光のナイトレイド』でテレビ未放映の第7話をネット配信したりしたことがありました。
製作委員会 | アニプレックス/アスキー・メディアワークス/ムービック/バンダイナムコゲームス |
原作 | 伏見つかさ(アスキー・メディアワークス『電撃文庫』) |
シリーズ構成 | 倉田英之 |
原作イラスト | かんざきひろ |
キャラクターデザイン | 織田広之 |
総作画監督 | 石田可奈/川上哲也 |
音楽 | 神前暁 |
監督 | 神戸洋行 |
アニメーション制作 | AIC Build |
出演者 | 中村悠一/竹達彩奈/花澤香菜/生天目仁美/早見沙織/立木文彦/渡辺明乃/他 |
「ノイタミナ」枠の1本。フリーターのヲタク女性が集まって暮らすアパート・天水館を舞台にヲタク女性達の愉快な営みを描くと共に、政治家の息子・鯉淵蔵之介(声・斎賀みつき)を通じて政界の人間模様をコミカルに描きました。そしてクライマックスは、アパートに降りかかった土地買収騒ぎに対抗するエピソードとなります。住人達は天水館を逆に買収しようとし、同時期のドラマ『フリーター、家を買う。』と多少の共通点を持った展開をみせますが、結局、天水館を買収する必要はなくなり大団円となりました。
製作委員会 | フジテレビ/アスミック・エースエンタテインメント/講談社/ソニー・ミュージックエンタテインメント/電通/東宝/GENCO |
出演者 | 花澤香菜/斎賀みつき/諏訪部順一/麦人/千葉繁/子安武人/他 |
テレビゲーム的なパラレルワールドの発想をテレビアニメに持ち込み、1箇月ごとに異なるヒロインと主人公の交流を描いた作品。エピソードの描き方に不満を持つ視聴者もいるかもしれませんが、多くのヒロインを月ごとにメインヒロインとしてフィーチャーすることで、多くの視聴者を満足させようとした作り手の狙いは評価してよいでしょう。ただ、単純に各エピソードを並べただけでは、単純なオムニバスになってしまいます。本作は、クリスマスに発生した或る出来事における主人公のトラウマが物語の発端となっていますが、その出来事の真相を最終回に明らかにすることで、物語を収束に導きました。
製作委員会 | ポニーキャニオン/AIC/ムービック/TBS |
原作 | エンターブレイン |
シリーズ構成 | 平池芳正 |
キャラクターデザイン | 合田浩章 |
音楽 | 大森俊之 |
監督 | 平池芳正 |
アニメーション制作 | AIC |
出演者 | 前野智昭/伊藤静/佐藤利奈/今野宏美/ゆかな/新谷良子/名塚佳織/門脇舞以/他 |
前番組『会長はメイド様!』に引き続いてメイド喫茶を舞台にした作品ですが、こちらはギャグアニメ。第3話「猫省年」における、目玉が4つある自画像の謎を解くエピソードや、第9話「激突!大人買い計画」におけるSFチックな不思議な話など、バラエティー溢れる構成で視聴者を楽しませました。出演者の中の変わり種としては、櫻井孝宏が老婆の役と、4コマ漫画の劇中人物2名を演じています。かつて実写作品で青島幸男、天本英世、三谷昇といった男性が老婆役を演じたことがありましたが、櫻井もまた老婆役を巧みに演じました。BS-TBSで本作が放送された際、EPGに櫻井の名前がなかったのはフェイントのためだったのでしょうか?
製作委員会 | ポニーキャニオン/flyingDOG/ムービック/SHAFT/メモリーテック/TBS |
原作 | 石黒正数(少年画報社『月刊ヤングキングアワーズ』) |
シリーズ構成 | 高山カツヒコ |
キャラクターデザイン | 山村洋貴 |
総作画監督 | 山村洋貴/西田美弥子/岩崎安利 |
音楽 | ROUND TABLE |
総監督 | 新房昭之 |
アニメーション制作 | SHAFT |
出演者 | 小見川千明/悠木碧/櫻井孝宏/入野自由/矢澤りえか/杉田智和/他 |
『ちゅーぶら!!』『kiss×sis』に続く、スターチャイルドレーベルによるAT-X月曜深夜11時半のアニメ。但し本作は、東京メトロポリタンテレビジョンによる地上波放送も実現しています。
本作は、各ヒロインをそれぞれフィーチャーするパラレルワールドを展開しており、本連載の一篇「【新作アニメ捜査網】アマガミSS」(https://www.otakuma.net/archives/3474327.html)における恋愛ゲーム原作アニメの分類では、『アマガミSS』と同様にパターン3に該当します。但し『アマガミSS』は物語の冒頭からリセットするのに対して、『ヨスガノソラ』では物語の途中からパラレルワールドに分岐しています(この点では『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』と同様のパターン)。
例えば第4話ラストの次週予告では、「は~い、瑛だよっ。ねえねえ、もしもあの時ああしてたら今の自分は違ってたかもって思うことない?てな訳で、もっかい2話の終わりから続くぅ♪」と視聴者に告知しています。
ストーリーの最も重要な部分は、主人公・春日野悠(声・下野紘)と、病気がちで入退院を繰り返した妹・春日野穹(声・田口宏子)の間に生じた愛情と葛藤を描く部分です。例えば第11話「ソラメクフタリ」で妹との関係に苦悩する悠は、学校の図書室で、近親者の結婚について調べるため歴史書を読み漁りますが、学級委員長・倉永梢(声・峰岸由香里)から「考えられませんよね。きょうだいとかでそんな風になる漫画もありますけど。現実にあったらちょっと引きますよね。」と言われてしまい、苦悩は更に深まるのでした。結局最終回において兄妹は2人で海外に旅立ちますが、「本当に幸せになれるんでしょうか」という委員長の言葉通り、兄妹は安住の地を得られるかどうか分からない不安定な立場のままであり、単純な大団円ではなく切なさを漂わせたラストとなりました。尚、この際、解体された筈の黒兎の縫いぐるみが復活していたことから、視聴者の間では論争を巻き起こすことになります。
さて、『ヨスガノソラ』において最も話題になった点は、露骨な性描写でしょう。特に兄妹が一線を越える場面を含んだ第11話の最速放送日は12月13日、東京都青少年健全育成条例改正案が可決されたのが同月15日であり、不幸なタイミングとなってしまいました。
製作委員会 | 明記されず |
原作 | Sphere |
シリーズ構成 | 荒川稔久 |
キャラクター原案 | 橋本タカシ/鈴平ひろ |
キャラクターデザイン | 神本兼利 |
音楽 | 三輪学/Bruno Wen-li |
監督 | 高橋丈夫 |
アニメーション制作 | feel. |
出演者 | 下野紘/田口宏子/いのくちゆか/阪田佳代/小野涼子/峰岸由香里/中國卓郎/他 |
自らの正体を隠している吸血鬼の苦悩を、人間である主人公・支倉孝平(声・小野大輔)の視点から描いた作品。吸血鬼を描いた作品としては、同時期に『屍鬼』と『薄桜鬼 碧血録』、同年に『ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド』及び吸血鬼ではないが共通点を持っている作品として『おおかみかくし』がありますが、これらの作品を比べると非常に興味深い。『屍鬼』における吸血鬼は生きるために吸血し、それ故に人間側との抗争に発展しますが、『FORTUNE ARTERIAL 赤い約束』のメインヒロインである千堂瑛里華(声・神田理江)は吸血を拒否して輸血用パックで血液を得ていました。しかし同時に発作による苦しみに悩まされてもいました。そうした中で自分の意志を貫く瑛里華の姿は視聴者の胸を打ちます。『ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド』で人間を襲って吸血することを拒否して自身の牙を抜いた吸血鬼や、『おおかみかくし』で人間と共存するために厳しい掟を定めた人狼とも通じる、強い平和共存への願いが感じられます。
製作委員会 | 角川書店/角川映画/テレビ東京/NTTドコモ/クロックワークス/AMGエンタテインメント/ゼクシズ |
原作 | オーガスト |
シリーズ構成 | 長谷川勝己 |
キャラクターデザイン | 石原恵 |
音楽 | 安齋孝秋 |
監督 | 名和宗則 |
アニメーション制作 | ZEXCS、feel. |
出演者 | 小野大輔/神田理江/諏訪部順一/生天目仁美/田口宏子/鳴海エリカ/峰岸由香里/他 |
ゲームソフト、『スーパーロボット大戦ORIGINAL GENERATION2』をアニメ化した作品であり、2006年にテレビ東京系列で放送された『スーパーロボット大戦OG ディバイン・ウォーズ』の続篇。本作では、放送局を独立UHF局に移しました。描写は王道的ロボットアニメと呼ぶに相応しいもので、パラレルワールドとの繋がりも、視聴者の関心を強く引き寄せます。2011年第1クールも放送継続。
製作委員会 | 明記されず |
原作 | SRプロデュースチーム |
シリーズ構成 | 竹田裕一郎/八房龍之助、キャラクター原案・河野さち子/斉藤和衛 |
キャラクターデザイン | 江端里沙/浜崎賢一/大籠之仁/山根理宏 |
メカニックデザイン | 宮武一貴/守谷淳一/カトキハジメ/杉浦俊朗/明貴美加/安藤弘/山根理宏/小野聖二/ことぶきつかさ/金丸仁/斉藤和衛/土屋英寛/藤井大誠/大張正己/富士原昌幸/大河原邦男 |
キャラクター総作画監督 | 椛島洋介 |
メカニック総作画監督 | 山根理宏 |
音楽 | 寺田志保/栗山善親/湯村渉/岡田さとる/鶴山尚/花岡拓也/松島加代子 |
監督 | 大張正己 |
アニメーション制作 | 旭プロダクション |
出演者 | 森川智之/水谷優子/柴田秀勝/清水香里/杉田智和/高橋美佳子/神奈延年/他 |
1箇月に1話1時間ずつ、1年間に亘って放送され、主人公の長い旅を現実の時間をも利用して描いた本作も遂に完結。尾張幕府という架空の幕府の治世を描いているという意味では、『百花繚乱 サムライガールズ』と同様のパラレル幕府ものです。
物語の根本となる、大昔の占い師・四季崎記紀(声・森功至)の目的は、最終回において明らかにされました。四季崎記紀は、海外に目を向けない将軍及び幕府が支配する日本は、およそ百年後、諸外国から一斉に攻撃を受けて滅びると予言しました。そして日本のために未来の幕府の倒幕を試みたということです。この設定は、『百花繚乱』と比べると興味深い。『百花繚乱』では鎖国を解いた徳川幕府による治世が21世紀に至るまで続いています。そして『百花繚乱』に登場する武士は、たとえ百年後だろうが千年後だろうが日本を守る気満々なのです(最終回のクライマックスの台詞より)。両幕府の描かれ方は対照的でした。
さて話は変わりまして、『刀語』は、登場人物が次々と死ぬ凄惨な物語でもあります。メインヒロインも死ぬし、主人公の姉も死ぬという実にハードな展開を見せています。登場人物の口の中に銃口を突っ込んで殺害するシーンは特に視聴者にショックを与えました。死を描くことで、逆に生を描こうとした作り手の意図があった訳ですが、そうした中、最終回のラストにおいて、敵味方含め、更には生き残った人も死者も含めて登場人物をほぼ全員走馬灯のように画面に映し出したことは、しみじみとした後味を残しました。
製作委員会 | アニプレックス/講談社/フジテレビジョン/ランティス/ムービック |
原作 | 西尾維新(講談社BOX) |
シリーズ構成 | 竹田裕一郎/八房龍之助、キャラクター原案・河野さち子/斉藤和衛 |
監督 | 元永慶太郎 |
シリーズ構成 | 上江洲誠 |
キャラクター原案 | 竹 |
キャラクターデザイン/ 総作画監督 | 川田剛 |
音楽 | 岩崎琢 |
アニメーション制作 | WHITE FOX |
出演者 | 細谷佳正/田村ゆかり/戸松遥/池田昌子/他 |
第3次世界大戦によって荒廃し、無法地帯となった東京の都市トシマを舞台に、男達の激しい抗争と友情を描いた作品。頽廃した廃墟という恐ろしい雰囲気と、ほっと安心する男達の交流が、効果的なコントラストを生みました。
製作委員会 | アニプレックス/ランティス/博報堂DYメディアパートナーズ/ニトロプラス/ムービック/MBS |
原作 | Nitro+CHiRAL |
シリーズ構成 | 高橋ナツコ |
キャラクターデザイン | 紺野直幸 |
音楽 | 石川智久/飯塚昌明 |
監督 | 紺野直幸 |
制作 | A-1 Pictures |
出演者 | 鳥海浩輔/杉田智和/福山潤/緑川光/岡野浩介/他 |
2008年第4クール~2009年第1クールの『とある魔術の禁書目録』の続篇。実在する宗教と似た名前を持つ架空の宗教団体など、多くの勢力が複雑に絡まり合って激しい戦いを繰り広げるアクションアニメです。大胆な画面の構図とキャメラアングルで描かれるアクションシーンなど映像面では見せ場が多いものの、一方で、台詞回しについてはわざとらしく不自然な口調が多くなっています。2011年第1クールも放送継続。
製作委員会 | ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント/アスキー・メディアワークス/スクウェア・エニックス/J.C.STAFF/AT-X |
原作 | 鎌池和馬(アスキー・メディアワークス『電撃文庫』) |
シリーズ構成 | 赤星政尚 |
原作イラスト | 灰村キヨタカ |
キャラクターデザイン | 田中雄一 |
音楽 | I’ve sound/井内舞子 |
監督 | 錦織博 |
アニメーション制作 | J.C.STAFF |
出演者 | 阿部敦/勝杏里/谷山紀章/岡本信彦/佐藤利奈/井口裕香/他 |
カードゲーム製造会社として知られるブシロードが、満を持して放つメディアミックスプロジェクトにおけるアニメ作品。監督の森脇真琴は『おねがいマイメロディ』『ひめチェン!おとぎちっくアイドル リルぷりっ』といった週末朝の子供向けアニメを監督した人物で、例えば『リルぷりっ』ではカレーの具がプールで泳ぐなど素人の想像を超えたカオスなギャグシーンを描くことで知られていますが、『ミルキィホームズ』は深夜アニメということでこの傾向により拍車がかかりました。ギャグシーンのためには主役の女の子にも容赦なくダメージを与える描写は、ギャグアニメの鑑と言えましょう。
製作委員会 | ブシロード/ポニーキャニオン/ランティス/グッドスマイルカンパニー/ドワンゴ/創通/エモーション |
製作総指揮/原案 | 木谷高明 |
企画/原作 | ブシロード/クロノギアクリエイティヴ |
シリーズ構成 | ふでやすかずゆき |
キャラクター原案 | たにはらなつき/うさはらゆめ |
キャラクターデザイン | 沼田誠也 |
音楽 | 原田勝道 |
監督 | 森脇真琴 |
アニメーション制作 | J.C.STAFF |
出演者 | 三森すずこ/徳井青空/佐々木未来/橘田いずみ/明坂聡美/他 |
原作なしのオリジナル企画によるロボットアニメ。独特のポーズと共に発する合言葉「綺羅星!」や、「颯爽登場!銀河美少年!」という決め台詞は視聴者に強いインパクトを与え、大変な話題となりました。敵側にあたる綺羅星十字団のメンバーも愉快な個性派揃いで、作品を盛り上げています。
ところで本作のタイトルクレジットを見ると村木靖が特技監督という役職を務めています。村木は『絢爛舞踏祭ザ・マーズ・デイブレイク』(2004年、竹内志保と共同)『交響詩篇エウレカセブン』(2005年)『スカルマン』(2007年)でも特技監督を務めた人物です。他にアニメ作品で特技監督を務めた人物を探すと、『マクロスプラス』(1994年)『マクロスゼロ』(2002年)『鉄のラインバレル』(2008年)で板野一郎、『ゼーガペイン』(2006年)でわたなべぢゅんいち、『奏光のストレイン』(2006年)で川原智弘、『鴉 -KARAS-』(2005~2007年)『Fate/stay night Unlimited Blade Works』(2010年)で橋本敬史が特技監督、『戦闘妖精雪風』(2004年)で竹内敦志が3D特技監督を務めています。
なぜ私がこの肩書に注目したかを申しますと、特技監督という肩書は元々実写業界で使われていた肩書だからです。例えば、今までに『ゴジラの逆襲』(1955年)で圓谷英二、『ウルトラQ』(1966年)で川上景司、的場徹、有川貞昌、小泉一、『ウルトラマン』(1967年)で高野宏一、『シルバー仮面』(1971年)で大木淳、『日本沈没』(1973年)で中野昭慶、『さよならジュピター』(1984年)で川北紘一が特技監督を務めています。なぜ実写業界の肩書である特技監督が、平成時代に入ってからアニメ業界で使われるようになったのか、興味深いところです。
2011年第1クールも放送継続。
製作委員会 | アニプレックス/バンダイナムコゲームス/ボンズ/スクウェア・エニックス/電通/毎日放送 |
シリーズ構成 | 榎戸洋司 |
キャラクター原案 | 水屋美沙/水屋洋花 |
キャラクターデザイン/ 総作画監督 | 伊藤嘉之 |
音楽 | 神前暁/MONACA |
監督 | 五十嵐卓哉 |
アニメーション制作 | ボンズ |
出演者 | 宮野真守/福山潤/石田彰/早見沙織/三木眞一郎/新名彩乃/小清水亜美/他 |
■ライター紹介
【コートク】
本連載の理念は、日本のコンテンツ産業の発展に微力ながら貢献するということです。基本的には現在放送中の深夜アニメを中心に当該番組の優れた点を顕彰し、作品の価値や意義を世に問うことを目的としていますが、時代的には戦前から現在まで、ジャンル的にはアニメ以外のコンテンツ作品にも目を向けるつもりでやって行きたいと思います。そして読者の皆さんと一緒に、日本のコンテンツ産業を盛り上げる一助となることができれば、これに勝る喜びはございません。