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摂南大学(学長:久保康之)薬学部 医薬品化学研究室の佐藤和之准教授は、この度、公益社団法人有機合成化学協会関西支部(以下、有機合成化学協会関西支部)の、「第22回(2024年度)有機合成化学協会関西支部賞」を受賞しました。1月29日には、同支部主催のセミナーで受賞した研究題目についての講演を行いました。
【本件のポイント】
・薬学部 医薬品化学研究室 佐藤准教授が「有機合成化学協会関西支部賞」を受賞
・受賞した研究題目「ロジウム触媒 C-C 結合形成反応を鍵とした
ヘテロ環の構築と含フッ素ヘテロ環の薬学的応用」をテーマに受賞講演を実施
・ロジウム(Rh)錯体が介在する世界初の「Csp3-Csp3 ホモカップリング反応」の開発に成功
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/140284/101/140284-101-560a22cfeb94c95ce218fed1e229ac53-1070x521.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
「第22回(2024年度)有機合成化学協会関西支部賞」受賞講演を行う佐藤准教授
■「有機合成化学協会関西支部賞」とは
有機合成化学協会関西支部が、本部の60周年記念事業を機に2003年度より設立している本賞は、有機合成化学に関する研究・技術で顕著な業績を挙げた研究者を表彰する制度です。若手研究者による萌芽的な研究から、産学界における独創的な技術開発まで、幅広い研究成果を評価対象としており、関西・北陸地域を拠点とする研究者の活動を支援・奨励しています。
この度、本学の佐藤准教授の「ロジウム触媒 C-C 結合形成反応を鍵としたヘテロ環の構築と含フッ素ヘテロ環の薬学的応用」に関する独創的な研究成果が高く評価されました。
■「第22回(2024年度)有機合成化学協会関西支部賞」受賞講演
受賞した研究題目である「ロジウム触媒 C-C 結合形成反応を鍵としたヘテロ環の構築と含フッ素ヘテロ環の薬学的応用」をテーマに、1月に大阪科学技術センターで開催された「有機合成睦月セミナー」(主催:有機合成化学協会関西支部)で受賞講演を行いました。
▼講演概要
・研究の背景と概要
窒素や酸素を環内に含むヘテロ環は生物活性の発現に関わる重要な骨格構造であり、その合成は医薬品や農薬の創製に重要である。また、含フッ素化合物は生物活性の向上に寄与するため、創薬研究において重要な位置を占めている。しかし、ヘテロ環の特定の位置にフッ素(もしくはフッ素官能基)を導入する簡便かつ温和な反応は確立されておらず、その構築法や官能基変換反応は決して多くない。
・ロジウム触媒 C-C 結合形成反応の開発とヘテロ環化合物合成への展開
ロジウム(Rh)触媒とジエチル亜鉛から反応系中で発生可能なロジウムヒドリド(Rh-H)錯体を利用し、α,β-不飽和カルボニル化合物の C-C 結合形成反応の開発に成功した。また、用いる亜鉛試薬をジメチル亜鉛に変更するとロジウムアルキル(Rh-R)錯体が発生し、ハロゲン化ベンジルのホモカップリング反応が進行することを見出した(図1上)。本研究で見出したホモカップリング反応は、Rh 錯体が介在する Csp3-Csp3 カップリング反応の世界初の例となった。更には、Rh 触媒 C-C 結合形成反応を利用して、ヘテロ環をもつ生物活性物質や医薬品の新たな合成経路を確立することに成功した(図1下)。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/140284/101/140284-101-e08e7c9a54603e480c32b93ba3c9de14-2105x1130.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図 1. ハロゲン化ベンジルのホモカップリング反応 出展:エゼチミブ https://pharma-navi.bayer.jp/zetia/basic-docs イミプラミン(トフラニール錠) https://www.alfresa-pharma.co.jp/medical/iyaku/detail/172
・含フッ素ヘテロ環の合成とフッ素原子を足掛かりとした官能基変換
ヘテロ環の物理・化学的および生物学的な特性を変化させることを目的とし、創薬研究において重要な役割を果たしているイソキサゾールのフッ素化に着目。イソキサゾール4位への位置選択的なフッ素化では、引き続く N-O 結合の切断およびホウ素錯体化により凝集誘起型発光(AIE)特性を示す化合物の合成に成功した(図2)。
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/140284/101/140284-101-63422f0b2a5ce1f45c66f62230993ba3-720x232.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図2. 含フッ素イソキサゾールの合成とAIE特性を示すケトイミンホウ素錯体の合成
イソキサゾールから導いた含フッ素イソキサゾリンでは、ルイス酸(L.A.)による処理でヘテロ環上の特定の位置にあるフッ素原子を選択的に切断することが可能であった。その結果、強固な C-F 結合の切断を足掛かりとした官能基変換に成功した(図3)。
[画像4: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/140284/101/140284-101-fb0201a5fabda4a20df759554b75fc93-1455x332.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図3.含フッ素イソキサゾリンの合成およびC-F結合切断に含フッ素イソキサゾリンの官能基変換
・今後の創薬研究の発展に資する成果
C−C 結合形成反応は、有機合成化学の根幹を為す反応である。これらの成果は化合物合成などの基礎研究に留まることなく、創薬研究や生命科学研究への展開も可能であり、今後の有機化学の発展に資するものである。
■佐藤准教授のコメント 我々の暮らしの周りには医薬品や香料、液晶材料、プラスチック製品など、さまざまな有機化合物の製品があふれています。このような製品の素を小さな分子から作り出し、ヒトの豊かな暮らしに貢献するのが有機化学の魅力の一つです。
今回の受賞の報に触れ、有機化学に興味を抱く学生が増えること、またそれが新たな発見につながっていくことを願っています。
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■摂南大学 薬学部 医薬品化学研究室について
摂南大学 薬学部 医薬品化学研究室では、大学で学ぶ「有機化学」を生かして創薬研究を行っています。生物系の研究室との共同研究を積極的に進め、新たな生理活性物質を生み出しています。医薬品を創出するためには、活性だけでなく、薬物動態や安全性といった多くの課題解決が求められるため、薬学に関する幅広い知識や経験を化合物設計に反映することが必要です。
また、当研究室では、コンピュータを使ったインシリコ創薬研究も行っています。コンピュータは多様で大規模なデータを扱えるため、インシリコ創薬は医薬品研究の効率化につながる新しい技術として注目されています。有機化学とインシリコ技術の融合によるアカデミア創薬の実現という大きな夢を目標に研究を進めています。
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