
概要
2025年4月1日、順天堂大学医学部附属順天堂医院耳鼻咽喉・頭頸科は、「頭頸部がんセンター」を設立いたしました。順天堂医院耳鼻咽喉・頭頸科では耳鼻咽喉科診療全般に対応しながら特に頭頸部がん診療を得意としておりましたが、近年複雑化また高度化する頭頸部がん診療に、より適切に対応すべく注力していきます。
背景
頭頸部がんとは鼻腔、口腔、咽頭、喉頭また耳下腺などの唾液腺や甲状腺などに発生する悪性腫瘍です。頭頸部がんは悪性腫瘍ですので生命に関わる疾患であります。それと同時に人がいきいきと生活するための摂食・嚥下、発声・会話・視覚など重要な機能にも影響する疾患です。また、顔や頸部を中心とした病気のため、時には整容面にも影響することがあります。治療にあたっては、その根治性を高めると同時に治療後の後遺症を最低限におさえ生活の質(QOL)を維持する必要があります。そのため、その診療にあたっては、豊富な経験と高度な知識と技量が必要とされます。
近年ではロボット支援下の手術や光免疫療法などの新しい治療の開発導入や進歩する薬物療法により頭頸部がん治療は複雑・高度になってきています。そのため順天堂大学では頭頸部がんセンターを設立し、進化する頭頸部がん診療に対応していくこととしました。
内容
頭頸部がんセンターでは頭頸部がん指導医の資格を持つ、松本文彦教授、大峡慎一先任准教授、松本吉史助教を中心に診療を行っています。また、センター化に伴い放射線科、形成外科、食道胃外科、脳神経外科、消化器内科、口腔外科との連携をこれまで以上に強化します。具体的には各診療科より専門のスタッフを揃え、診療科間の枠を越えたよりスムーズな体制を整備しています。特に手術においては進行癌などで患部の切除範囲が広範囲になってしまう場合には形成外科による再建術が必要になります。形成外科と合同で行う再建手術の症例数は当院では近年着実に症例数が増加してきており、再建を担当する形成外科医との連携も向上してきております。形成外科とは術前に診療情報をもとに切除範囲の共有と適切な再建方法を協議検討して手術に臨んでいます。放射線治療は手術と並ぶ頭頸部がんに対する大切な根治治療です。放射線治療においても放射線治療医とカンファレンスで情報を共有し、病変および放射線照射の範囲を相談し強度変調放射線療法(IMRT)を施行しています。
頭頸部がん診療に導入された比較的新しい治療であるロボット手術の資格を松本(文)医師と大峡医師が有し積極的に同治療に取り組んでおります。また、近年新しく開発され日本に導入された光免疫療法治療の資格も有しております。手術や放射線照射を行っても残念ながら再発をきたしてしまった困難な症例に対して最後の砦として行っています。
顔面と脳や咽頭と食道などの境界領域の進行病変に対してはそれぞれ脳神経外科、食道胃外科と協力し診療科間の境界に位置するような病変にも連携良く治療を行っています。頭頸部癌は食道癌と同時に発生する(重複癌)ことも少なくなく、そのような場合には消化器内科による内視鏡切除などを併用して低侵襲に治療を行っています。
今後の展開
以前より順天堂医院では積極的に頭頸部がん診療を行ってきていましたが、増加する症例への対応や東京都に限らず日本全国およびアジアを中心とした海外の患者さんにも広く対応してくことにいたしました。海外、特にアジア圏から日本医療は注目されており、今後は積極的にインバウンドの症例にも対応していく予定です。そこでがんセンターを設立することにより、より多くの患者さんに順天堂医院で安心して治療が受けられることを周知し、我々日本人医師による繊細かつ丁寧な手術を幅広く展開していきます。
また、今後は薬物療法の専門医を招聘しより頭頸部内科治療にも力をいれていきます。医師に限らず嚥下認定看護師や化学療法認定看護師、リハビリテーションスタッフなどのより高度な知識・技能を有するスタッフを配置し体制をより充実させていきます。
豊富な症例をもとに大学として基礎医学との共同による病態の解明や新規治療法の開発研究など頭頸部がん研究の発展を目指したいと思っています。今後、頭頸部がん診療を志す若い医師を全国から集い、日本の頭頸部がん診療の発展に寄与したいと考えています。
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写真左から、助教 松本 吉史、先任准教授 大峡 慎一、主任教授 松本 文彦