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安心・安全なデータ連携を実現するプライバシー強化技術の社会実装促進に向けた提言を発表

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株式会社日本総合研究所
 株式会社日本総合研究所(本社:東京都品川区、代表取締役社長:谷崎勝教、以下「日本総研」)は、安心・安全なデータ連携と利活用を支援するプライバシー強化技術(Privacy Enhancing Technologies:PETs)(注1)の普及に向けた提言(以下「本提言」)をとりまとめましたので発表します。本提言は、一般社団法人データ社会推進協議会(以下「DSA」)が主催し、日本総研が開催協力した「PETsが実現する安心・安全なデータ連携~AI社会におけるPETsの本格始動に向けて~」(以下「イベント」)で議論されたPETsの社会実装に関する課題に基づき、事業者が協調領域として今後求められるアクションの要諦を整理したものです。

■背景
 AIの進展に伴い、膨大なデータを連携・利活用して価値を創出することが日本のデータ戦略の要となっています。しかし、取り扱うデータが多いほど情報漏えいのリスクは増大し、プライバシー侵害への恐れや企業のデータ囲い込み意識などからも、日本社会におけるデータ連携は十分に進んでいないのが現状です。
 こうした中、個人情報保護法の「いわゆる3年ごと見直し」の議論では、AI開発や統計作成等を対象に、個人データの第三者提供に対する本人同意の規制を緩和する方針が示され、企業においてはこれらのデータを適切に取り扱うためのガバナンス強化の必要性が指摘されています。そこで、個人データを秘匿し、個人の権利利益を侵害することなく必要な処理結果だけを共有することができるPETsへの期待が急速に高まっています。PETsは、データの保護・秘匿だけでなく、データ利活用における漏えいなどのリスクを低減することにより、組織間でのデータ連携に資する技術として注目されています。企業秘密に該当するデータについても開示することなく互いに有益な知見を導出できるため、企業間の連携促進やサプライチェーン全体の最適化などにも有用です。
 一方で、企業がPETsを導入することによる制度的インセンティブや、その技術に対する理解が十分に浸透していないために、多くは実証にとどまり、本格的なサービスモデルが登場していないことが課題となっています。加えて、グローバルでの関心の高まりやビッグテックなどの本格参入により、これまでPETsの基礎技術で優位とされてきた日本の相対的な競争力の低下も懸念されています。
 日本総研は、かねてより個人データ利活用とプライバシー保護の両立を目指し、実証や技術レポートを通じて、PETsの技術評価や普及促進に取り組んでいます。これらの活動の一環として開催協力したイベントでは、産官学民の事業者・有識者がPETsに関する事例紹介や技術の類型、ユースケースごとの実装課題について議論しました(注2)。

■本提言の内容
 PETsの本格的な社会実装に向けて、事業者が協調領域として官民連携で行うべきアプローチについて、以下4つの提言をとりまとめました。

 ◆提言1.:導入時の指針の策定(技術、運用、国際標準との整合や調整)
  PETsの社会実装に向けた喫緊の課題は、導入に際して技術の安全性や運用の拠り所となる指針が無いことです。標準化機関による技術単位の標準や、プライバシー保護当局や国際機関による分類やガイドラインは発行されているものの、企業や研究者などが納得して運用できる指針の策定は不可欠です。そのためには、適合性評価や業界の共同規制によるルール形成のアプローチ、適切な運用を消費者が評価する仕組みについても検討していく必要があります。また、国外とのデータ流通や安全保障が関連する領域へのPETsの適用も想定し、国際標準化の動向をキャッチアップしながら、官民連携で標準化活動へ関与していくことも必要です。

 ◆提言2.:制度的課題とガバナンスにおける位置づけの整理
  データ利活用に向けた個人情報保護法の見直しやその他政策の議論によって、個人の権利利益を十分に保護した上でデータ連携・利活用を進める考え方が示されました。PETsはこれらのデータの適正な組織間連携のためのガバナンスを実現し、個人データの利活用と保護の両立に資する最も有効な仕組みのひとつと考えられます。個人情報保護法の「いわゆる3年ごと見直し」の今後の検討や、AIやデータ利活用に向けた制度の検討においても、セキュリティ対策技術としてのPETsの位置づけを明確にすることが求められます。その過程では、技術面の都合にとどまらず、ユースケースを通じた整理、消費者やエンドユーザーなどの意見を集約することも重要です。

 ◆提言3.:ステークホルダーとのコミュニケーションの促進
  PETsの有効性やPETsが可能とするデータ連携、またそれにより解決される課題について、広く生活者に理解されることが重要です。そのために、暗号化などの技術の理解を促すことや、安全性や事業者の取り組みが明確に伝わる工夫をすること、さらに、生活者の疑問や懸念に対して事業者が組織的に対応する仕組みなども必要です。また、企業においても、データやプライバシーの保護部門だけではなく、経営層や、事業の現場などあらゆる層へ理解を促す取り組みに加えて、提言1.における指針のブランディングや普及のための効果的かつ継続的な対応も求められます。

 ◆提言4.:これまでデータ連携が進まなかった領域における事例創出
  PETsの価値はプライバシー保護だけではなく、企業秘密などの機密性の高いデータであっても相互に秘匿したまま共有することで、組織や業界をつなぎ、データ流通や価値提供を可能とすることにもあります。そのため、金融などのデータ連携が困難とされていた領域でユースケースを創出することによって、その本質的な価値を社会に示すことが重要であると考えます。また、国の重要な社会課題を対象としたEBPMなどにおいて、行政が率先して事例の創出に取り組み安全性や成果を示すこと、またサンドボックス環境の整備などによって民間事業者の参入の後押しをすることも重要です。

■今後について
 本提言に基づき、日本総研は、DSAをはじめとした関連するステークホルダーと連携しながら、PETsの社会実装の促進に向けて優先すべきアクション、実施体制、タイムスケジュールなどの検討を行ってまいります。
 特に、金融領域において取り組みを加速する方針です。金融領域は、金融犯罪対策や金融データを活用した地域活性化など、業界と異業種とのデータ連携が期待されている一方で、取り扱うデータの守秘性の高さから限定的な取り組みにとどまっています。PETsの活用を前提に業界横断によるデータ連携の仕組みを構築し、利用価値の高いデータを社会に提供していく予定です。

(注1)PETs(プライバシー強化技術)とは、プライバシー保護を実現するための技術等を包括する概念です。代表する技術として、連合学習や秘密計算、合成データなどがあります。これらの技術によって、個人情報や企業秘密といった機密性の高いデータを安全に利活用することが可能です。データ分析・AIモデル学習まで一貫してデータを暗号化したまま実行する技術・データを開示せずに組織間で協調してAIモデルを学習する技術などがあります。

(注2)詳細は下記のイベント開催レポートでご覧いただけます。
「【開催レポート】PETsが実現する安心・安全なデータ連携 ~AI社会におけるPETsの本格始動に向けて~」(一般社団法人データ社会推進協議会Webサイト/2025年5月19日)
https://data-society-alliance.org/event-report/pets20250324/

                                            以上

■本件に関するお問い合わせ先
【報道関係者様】 広報部       金井   電話:080-3437-9449
【一般のお客様】 創発戦略センター  若目田  電話:080-9671-3570

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