おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

配信サービス上の“AI生成楽曲”を見分けるツール「Spot-if-AI」 95%の精度で判定

 さまざまな音楽を手軽に楽しめるサブスクリプション型配信サービス。その多くは、再生シェアに応じて権利者へ収益が分配される仕組みを採用していますが、中にはこうした収益構造を利用し、生成AIで出力された「楽曲」を配信していると思われるケースも。

 そんな楽曲を「見分けられる」ツールが開発されました。

  • ■ Spotifyの配信URLを入力→95%の精度で「AI生成楽曲」か判定

     「Spot-if-AI」と名付けられたこのサービスは、AIを用いた創造性の拡張や未知の音楽探求に取り組む企業、Qosmo(コズモ)社が開発。サイトの入力欄にSpotifyの配信楽曲URLを入力すると、その楽曲が「Suno」や「Udio」などの楽曲生成AIによって生成されたものかどうか判定します。

    配信サービス上の「AI生成楽曲」を見分けるツール「Spot-if-AI」 95%の高精度で判定

     気になる判定精度は95%と高精度。何気なく聴いている楽曲が、実はAIによって生成されたものだった……というケースにも出くわしそう。知りたいような、知りたくないような……怖いもの見たさと好奇心がムクムクと沸いてきます。

     ちなみに記者が普段聴いている楽曲を恐る恐る入力してみたところ、99.9%の確率で「人間が作ったもの」という判定でした。

    人間が作成した楽曲であると判定された例

     AI生成による楽曲である確率が高いものは、「Likely AI Generated」と赤い文字で表示されます。

    AIが生成した楽曲と判定された例(画像協力:株式会社Qosmo)

     Qosmo社では、具体的な使い方として、カフェなどの店内で流れている楽曲を「Shazam」などのハミング解析ツールで解析し、取得した Spotify配信リンクを入力する、という方法を紹介しています。

    ■ AI音源の大量アップロード問題

     Qosmoの開発者であるボクダン・テレアガ氏は、AI技術によって生成した楽曲をSpotifyにアップロードできるサービス「Boomy」の存在を知り、音楽配信プラットフォームでの問題を意識。これが、今回の「Spot-if-AI」開発につながっているといいます。

     Spotifyは、再生数のシェアに応じて収益を権利保有者に分配するモデルを採用しており、そこからアーティストや作曲家に利益が還元されます。本来はクリエイターを支援するための仕組みですが、近年では、AIで自動生成された楽曲が大量にアップロードされ、大量再生によって収益分配の枠を押し広げるようなケースも見られるようになってきました。

     ここで大事なのは、「AIによって楽曲を生成することそのものが問題視されているわけではない」ということ。

     楽曲を不正に再生することで利益を得るというケースはこれまでにも取り沙汰されてきました。それが、生成AIの登場により、アンフェアなかたちで加速し、本来正規のクリエイターへ分配されるべき利益が回っていないのではないか、というところに今回の問題の本質があります。

     2023年5月、Spotifyは「Boomy」によって生成、配信された数万曲の楽曲を削除したと発表。同時に、これらは不正再生が検知されたものが対象であり、AI生成楽曲であることそのものが理由ではないと強調しています。

     ボクダン氏は開発にあたり、Spotifyにおける問題点を指摘した音楽ジャーナリストのリズ・ペリー(Liz Pelly)氏の著書「Mood Machine: The Rise of Spotify and the Costs of the Perfect Playlist(ムード・マシン:Spotifyの台頭と“完璧なプレイリスト”の代償)」にも触発されたとのこと。

     今回、Spotifyの楽曲にスポットを当てたのは「世界最大の音楽配信プラットフォームであること」「同著によって注目が集まったこと」が主な理由であり、「すべての音楽配信プラットフォームに共通する問題」だとしています。

    ■ 「人間特有の音色」や「生成AI特有のノイズパターン」を検出して判定

     ボクダン氏いわく、「Spot-if-AI」でAI生成楽曲と人間による楽曲を見分ける技術は、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究者、Rahman氏らが発表した論文に基づいているとのこと。

     具体的には、人間が作成した楽曲に含まれる音色やリズムの変化や、特定のAIモデルによって生成された楽曲に含まれるノイズを見て判定しているのだそう。このノイズは人間の耳で聞こえるものや、そうでないものもあるといいます。

     「特定のAIが生成するノイズパターンは、それぞれのAIモデルに特有な『電子透かし』とも考えることができます」とボクダン氏。

     もっとも、これらのノイズパターンはモデルのアップデートによって変化する可能性があるため、生成モデルがアップデートされるのにあわせて、検出の仕組みもアップデートしていく必要があるということです。

     「Spot-if-AI」は、現在Qosmo社のWEBサイトで公開されているほか、Chromeのエクステンション形式でも公開されており、誰でも気軽に試すことが可能です。大量の楽曲を判定したい際には外部のシステムと連携させる仕組み(API)も用意されているといい、使用したい際には同社に問い合わせをしてほしい、とのことです。

     また現在、AI生成楽曲の検出をより簡単にするツールも開発中だそう。さまざまな音を楽しむ手段が増えることは興味深い反面、魂を注いで音楽を作り上げているクリエイターがリスペクトされ、きちんと利益が分配されることを願ってやみません。

    <取材協力>
    株式会社Qosmo
    Spot-if-AI

    (天谷窓大)

    あわせて読みたい関連記事
  • 生成AI「Grok」を巡りXが安全対策を強化 編集部が体験した監視の実態
    インターネット, 社会・物議

    生成AI「Grok」を巡りXが安全対策を強化 編集部が体験した監視の実態

  • サイゲームスがAI専門子会社「Cygames AI Studio」設立 クリエイターの創造性拡張を狙う
    ゲーム, ニュース・話題

    サイゲームスがAI専門子会社「Cygames AI Studio」設立 クリエイ…

  • ChatGPTが「専属の健康アドバイザー」に 医療記録やアプリと連携する新機能「ChatGPT Health」発表
    企業・サービス, 経済

    ChatGPTが「専属の健康アドバイザー」に 医療記録やアプリと連携する新機能「…

  • クマ出没マップ 「FASTBEAR」
    インターネット, サービス・テクノロジー

    AI集約のクマ出没マップ「FASTBEAR」公開 全国の出没情報をまとめて可視化…

  • 声優とAIの共存を模索 81プロデュースとイレブンラボが業務提携、オリジナルの声を守り多言語展開へ
    アニメ/マンガ, 声優

    声優とAIの共存を模索 81プロデュースとイレブンラボが業務提携、オリジナルの声…

  • 民放連、アニメ作品の“そっくり映像”出回り懸念 生成AIに声明
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    民放連、アニメ作品の“そっくり映像”出回り懸念 生成AIに声明

  • マクドナルド「にんげんっていいな」パロディ巡り勘違い?権利表記に「生成AIかと」
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    マクドナルド「にんげんっていいな」パロディ巡り勘違い?権利表記に「生成AIかと」…

  • ウィキペディアのページビュー
    インターネット, サービス・テクノロジー

    AI時代でウィキペディア苦境 人間の閲覧数8%減、財団が警鐘

  • ChatGPTが“全年齢対応AI”を卒業? アルトマン氏が語った「成人向けエロティカ解禁」方針
    インターネット, サービス・テクノロジー

    ChatGPTが“全年齢対応AI”を卒業? アルトマン氏が語った「成人向けエロテ…

  • 甘い囁きが筒抜けに……AI“彼女”アプリで個人データ漏洩 40万人分の会話・画像が外部公開状態に
    インターネット, 社会・物議

    甘い囁きが筒抜けに……AI“彼女”アプリで個人データ漏洩 40万人分の会話・画像…

  • 天谷窓大フリーライター

    記事一覧

    得意分野はエンタメ、メディア、フード業界。「焼き芋アンバサダー」としてフードフェスのプロデュースも手掛けるほか、熱波師、フリー素材モデルとしても活動。X @amayan

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • ティーバッグ使用時の悩みを解決「二番煎じ待機スタンド」 デザインを学ぶ大学院生が製作
    インターネット, おもしろ

    ティーバッグ使用時の悩みを解決「二番煎じ待機スタンド」 デザインを学ぶ大学院生が…

  • 藤田ニコル、パチンコ業界のクイーンに就任! 日工組が新プロジェクトで「確変」を宣言
    イベント・キャンペーン, 経済

    藤田ニコル、パチンコ業界のクイーンに就任! 日工組が新プロジェクトで「確変」を宣…

  • 運営者の終活で老舗CGIサイトが終了へ 1995年開設「CGI RESCUE」、2026年3月に幕
    インターネット, サービス・テクノロジー

    運営者の終活で老舗CGIサイトが終了へ 1995年開設「CGI RESCUE」、…

  • 「酒々井の諸事情」は1.8リットル入り(税込3520円)が3000本、720ミリリットル入り(税込1760円)が1万5000本の数量限定販売
    商品・物販, 経済

    醸造ミスから生まれた奇跡の酒 「甲子 酒々井の諸事情」12月中旬より数量限定発売…

  • 誤表記
    アニメ/マンガ, ニュース・話題

    もちづきさん、カロリーを低く表記し謝罪 読者に“チェック”呼びかけ

  • 違和感満載のサイケな銭湯でほっこり入浴 蒲田で開催「脳汁銭湯」体験レポート
    イベント・キャンペーン, 経済

    違和感満載のサイケな銭湯でほっこり入浴 蒲田で開催「脳汁銭湯」体験レポート

  • トピックス

    1. 九州の2大巨頭が夢のコラボ 「ブラックモンブランマンハッタン」食べてみた

      九州の2大巨頭が夢のコラボ 「ブラックモンブランマンハッタン」食べてみた

      九州で育った方なら、誰もが知る2つのソウルフード、竹下製菓のアイス「ブラックモンブラン」と、リョーユ…
    2. ニキータ・ビア氏の投稿

      X、API改定しリプライ浄化 報酬目当ての投稿アプリを出禁

      SNS「X」が、ここ最近リプライ欄を埋め尽くしていた「意味不明な“ヨイショ”投稿」に、ついにメスを入…
    3. 覚悟して食べた昆虫食 セミ・ゴキブリ・カブトムシの中で一番おいしかったのは?

      覚悟して食べた昆虫食 セミ・ゴキブリ・カブトムシの中で一番おいしかったのは?

      東京・吉祥寺を歩いていたところ、思わず二度見してしまう自動販売機に出会いました。売られていたのはジュ…

    編集部おすすめ

    1. 生成AI「Grok」を巡りXが安全対策を強化 編集部が体験した監視の実態

      生成AI「Grok」を巡りXが安全対策を強化 編集部が体験した監視の実態

      昨年12月末、画像編集機能を搭載したことで物議をかもした、X(旧Twitter)の生成AI「Grok」。そのGrokをめぐり、Xの公式安全対…
    2. ねるねるねるねアイスバー

      テーレッテレー♪ねるねるねるねがアイスに変身 “あたりつき”40周年記念商品を発売

      クラシエ株式会社(フーズカンパニー)は、発売から40周年を迎えるロングセラー菓子「ねるねるねるね」を記念し、「ねるねるねるねアイスバー」を2…
    3. 福岡市、生活保護をめぐるSNS情報を否定 投稿者の開示請求へ

      福岡市、生活保護をめぐるSNS情報を否定 投稿者の開示請求へ

      福岡市は1月13日、SNS上で拡散されている「福岡市で生活保護を断られた母子3人が亡くなった」とする動画や投稿について、「事実ではありません…
    4. クレーンゲーム機「クラウン602」

      タイトー、幻のクレーンゲーム機を全国指名手配 有力情報に賞金10万円

      ゲームセンターの片隅に、あるいは閉店した商店の倉庫に、ひっそりと眠っているかもしれません……。タイトーが今、全国に向けて“指名手配”している…
    5. ぐるなび、個人情報流出を否定 SNS投稿巡り調査結果公表

      ぐるなび、個人情報流出を否定 SNS投稿巡り調査結果公表

      飲食店情報サイト「ぐるなび」を運営する株式会社ぐるなびは1月8日、同社の個人情報流出を巡るSNS上の投稿について、公式サイト上で「調査の結果…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト